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EU離脱国民投票 雨なら離脱が優位か

ニュースソクラ 6月2日(木)14時30分配信

経済的損失予想でも、政界やビジネス界に増える離脱賛同派

 6月23日に英国ではEUを離脱するか否かを問う国民投票が行われる。米国のオバマ大統領がわざわざ英国で「英米の特別な関係は、英国が欧州の一員としてEUに加盟しているからこそ」との趣旨で公式発言するほど、世界中で若し英国が離脱したら政治的、経済的に大混乱が起きると懸念が拡大している。

 日本では「英国がEU離脱を図った場合、経済面では何一つメリットがない。スコットランド独立の投票で見せたように最後はバランス感覚を働かせてEU残留という結果になろう」との見方が主流である。離脱となれば円高、日本株安は必至であろう。そういう筆者もそうであったが、先日来日した残留派の英国人の旧友が「いや、情勢は五分と五分、どちらに転ぶか分からない」と危機感を抱いていたので驚いた。

 周知のように英国でEU離脱を叫ぶ人達のもっとも大きな要因は東欧などからの移民問題である。ポーランド、ハンガリーなどからの移民は概して優秀で、英国人の働き口を奪い取ってしまう、母国に残してきた子女に自分達の税金から児童手当まで払うのはけしからん、などの世論が醸成されてきた。

 キャメロン首相はEUとの交渉で、「社会保障給付を4年間制限する緊急停止措置を導入」するという労働の移動自由と社会保障の取り扱いを自国民と差別することを禁止しているEU協定の例外を認めさせた。それでも英国の一般国民の怒りは収まっておらず、概してキャメロン首相のEU交渉は本質とは関係ない些細なことに留まっている、と不評のようだ。

 このほか、EUを離脱する経済的デメリットは数多くあげられる。まず貿易面では英国のEUとの貿易シェアは約5割を占めており、離脱してしまえば、関税障壁、非関税障壁を含めた貿易コストの大幅上昇を招く、あるいはそれを回避しようとすれば改めて二国間協定を各国と締結するなどの膨大な交渉を必要とする。金融市場では英国に対する不動産・債券投資など、海外からの投資が流出して英ポンド市場が急落して、債券価格の暴落(金利の上昇)につながる恐れが強い。このため、英国内の消費、投資活動も先行き不透明感が強まり抑制される公算が強い。

 英国政府では「今後二年間でGDPは3%低下、不動産価格も10%下落」と試算しているが、IMF,イングランド銀行もほぼ同じようなネガティブな見通しを出している。一方でEU基本条約の定めるところではEU離脱の意思表明をすれば、2年間かけて離脱協定をEU・英国間で定めることとなっている。おそらく、この二年を待たずにシティーに拠点を有する邦銀も含めた金融機関ではEU域内にどこでも拠点を出せる「パスポート」を失うのでフランクフルトやパリに拠点を移転させる先が出てくるものとみられる。

 最近の特徴はこのような経済的な損失が論じられているにもかかわらず、政界やビジネス界で離脱に賛同する向きが増えていることだ。元々、今般の国民投票は保守党内の離脱派を封じ込めるためのキャメロン首相の大きな賭けであった。保守党内の離脱賛成派(下院)は現職330議員のうち、百名を超えるとみられる。キャメロンとオックスフォード大学同期の盟友であったジョンソン議員(ロンドン市長)らがこれに加わった。金融界でも、最近におけるEUの金融規制強化がシティーにも持ち込まれ、金融取引税が賦課されることに反対して離脱を唱える向きが以前少数派ながら増加を示している。

 EU離脱論者の最も大きなバックボーンは「選挙の洗礼を受けていないブラッセルの官僚どもが栄えある大英帝国に指示をしてくるのは僭越だ」という国家主権重視からくる反感である。前出の英国の友人の言葉に従えば「離脱派の主張は、経済的デメリットが大きいなど頭(head)で考える内容ではなく、英国人の矜持という心(heart)の問題だから厄介なのだ」ということになる。

 彼がもう一つ見逃せない要因として挙げていたのは6月23日投票当日の天候だ。なぜなら「離脱派は確固たる信念を持っているので大雨になろうと投票所に向かう一方で、残留派は経済的にまずいことになりそうだという政府、イングランド銀行などのキャンペーンが効いていて、かつ大英帝国の栄光とは無縁の若手が中心なので天候悪化となれば投票に行かない」ためだそうだ。いずれにしても、我々日本人が考えるより離脱派の力は強そうだ。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:6月2日(木)14時30分

ニュースソクラ