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東芝、再生は横浜から。「スマートシティ」の技術発信次々と

ニュースイッチ 6月2日(木)8時40分配信

2020年の発送電分離にらみ、仮想発電所を先取り

 エネルギーを効率的に使うスマートコミュニティー(次世代社会インフラ)は技術実証が終わり、事業化が始まった。現在は、普及に向けてギアを上げていく段階だ。豊富な技術を持つ重電や電機メーカー、エネルギー会社がアクセル役となる。各社が参画した先進的な実証事業や実用化されたスマートコミュニティーを検証し、普及への道筋と課題を確認する。

 経済産業省は2010―14年度、国内4地域でスマートコミュニティー実証事業を展開した。その一つ、横浜市の事業には市と34社が参加し、家庭用エネルギー管理システム(HEMS)4230台、電気自動車(EV)2300台が導入された。大都市を舞台とした大規模実証で新しい技術が検証され、次々と実用化された。

 HEMSは参加各社が製品化した。全体の電力を監視した東芝の地域エネルギー管理システム(CEMS)は、新電力の管理システムとして商用化された。また、東芝は複数の蓄電池を制御した経験を生かし、東北電力から出力4万キロワットの巨大蓄電池システムを受注した。東北電は再生可能エネルギーの変動を吸収するスマートグリッド(次世代電力網)を構築できた。

 横浜の事業をとりまとめた東芝ソリューション&サービス事業部の島岡厚一参事は「途中で(11年に)東日本大震災が発生し、ピークカットなどの新しい社会ニーズに対応する技術も検証できた」と成果を語る。


 中でも電力不足解消のために緊急性が高まったのが、ビルや家庭、工場に節電に協力してもらうデマンドレスポンス(DR、需要応答)だ。横浜では業務中のビルや家庭に節電を要請する大規模なDR実証が展開された。17年からDRで削減できた電力量を売買する「ネガワット取引市場」が国主導で立ち上がる。実証で得た知見が、新たな電力市場の創設に生かされた。

 また、節電を要請する通信規格「オープンADR2・0b」、スマートメーター(通信機能付き電力量計)が計測した情報の収集方法「Bルート」など、業界標準の確立にも貢献した。

 東芝は電力システム改革を先取りした先進的なスマートコミュニティー実証を統括した。ただし「ビジネスをどう回すかが課題」(島岡参事)と認識する。横浜の例をひな型とし、スマートコミュニティーを導入して地域にサービスを提供しようにも、企業単独で採算を確保できるとは限らない。

 現時点では「地区ごとの目的にあった機器・サービスを導入する」(同)と話す。地域全域を対象とせず、地区ごとにエネルギー管理システムや蓄電池、DRを導入する事業展開が想定される。点から攻め、いくつかの点をつないでスマートコミュニティーに発展させる方法が現実的かもれない。

<解説>
 振り返ってみると横浜実証の成果は多かった。記事にない部分でも、太陽光と蓄電池を制御するHEMS、電機自動車(EV)用充電器のデマンドレスポンス(DR)などなど。そして仮想発電所(VPP)など。実証スタート時は、VPPという言葉もなかった。そう考えると横浜の実証は、2020年の発送電分離後、出現するかもしれないVPPを先取りしている。

最終更新:6月2日(木)8時40分

ニュースイッチ