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アイフォーンも採用へ。有機EL生産のカギに握る装置メーカーはどう動く

ニュースイッチ 6月2日(木)13時22分配信

キヤノントッキCEOに聞く。現状の熱狂を次の成長につなげられるか

 キヤノントッキ(新潟県見附市)の動向が注視されている。その理由は、同社が有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレー製造に欠かせない真空蒸着機を量産レベルで手がけているためだ。同機を量産できるのは、ほぼ唯一とされる。有機ELパネルメーカーが続々と参入し、設備投資が活況を呈する中、津上晃寿会長兼最高経営責任者(CEO)に、成長市場への対応や戦略を聞いた。

 ―市場をどう見ていますか。
 「2016年はパネルメーカーの投資が始まって1年目であり、伸びるのはこれからだろう。米アップルのスマートフォンへの有機EL採用見通しをきっかけに投資が活発化しているが、中国スマホメーカーも採用に向けて活気づいてきた。少なくとも3年は伸びていく」

 ―逼迫(ひっぱく)する需給への対応は。
 「自社の人員増強と協力会社での生産能力増強、キヤノンなどグループのリソースの活用により、16年の能力は前年比2倍以上にする。この先も需要が続くようであれば、量産機を手がける平塚事業所(神奈川県平塚市)の生産ライン増設も視野に入れる。体制が整えば新規顧客開拓も進めたい」

 ―キヤノントッキの真空蒸着機の強みを教えてください。
 「FA(工場自動化)技術と真空技術の両方を持つ点だ。基板は大型化が進み、製造ラインは100メートル以上の長さにもなる。我々の装置はその中でも真空を保ち、1週間以上の連続稼働が可能だ。加えて真空内でも5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下という高精細なアライメント(位置決め)精度を出せる。ガラス基板に加えてフレキシブル基板にも対応した自動搬送技術など、複数の機械を組み合わせ、真空中で駆動させるノウハウを持っている」

 ―今後は競合の参入と競争激化が予測されます。対策は。
 「競争は厳しくなるだろう。さらなるアライメントの高精細化と、基板の大型化への対応、搬送技術の向上、蒸着源の改良で製品力を高めていく」

 ―印刷方式の有機EL製造への対応は。
 「今は量産レベルではないが、技術が進化すれば事業化されるだろう。我々も当然、可能性を模索している。資本提携も視野に入れ、全く新しい技術が登場した際に対応できるよう準備している」

 ―一方、収益の大部分を占める有機EL関連事業は、変動性も大きいです。
 「安定的に1―2割程度は他分野で稼ぎたい。今は電子部品向けのスパッタや蒸着装置に力を入れている。開発中の装置もあり、ラインアップ拡充で取り込みを強化する」

【解説】
 今回の増産対応は、既存顧客分がメーンだと見られる。新規顧客獲得はもう少し先になりそうだ。また技術面で競合の追い上げは、すでに始まっている。キヤノントッキには足元の増産対応と、競合に対抗するだけの技術進化を同時に進めるかじ取りが必要だ。“有機ELフィーバー”を乗りこなす冷静さが求められる。

 ラインなど生産設備の増強ではなく、とりあえずは人員や生産委託先での増産対応という点に、有機EL市場の見通しに対する慎重さが透けて見える。とはいえパネルメーカーの設備投資が活発な状況は当面続くだろう。津上会長は「市場動向を注視して拡大投資に対応したい」と話すが、有機EL市場に参入したがっている装置メーカーは多く、すでに開発を手がける競合他社もキャッチアップしてきている。機会損失にもつながりかねない追加の増産投資時期の見極めが、当面の課題になりそうだ。
(聞き手=政年佐貴恵)

最終更新:6月2日(木)13時22分

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