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【コラム】SUPER BEAVERの新作『27』を聴いた。これが「日本語ロック」の底力だ!

RO69(アールオーロック) 6月2日(木)7時0分配信

若いロックファンには信じられないことかも知れないけれど、その昔「ロックに日本語の歌詞は乗るのか」という議論が長いこと繰り返されていた。僕が生まれる1974年よりも以前からあった話題らしいので、そのときの議論の温度感とか、詳細ないきさつを知っているわけではない。ただ、僕がロックにのめりこむようになる1980年代後半にも、しばしばその話題に触れることはあった。無数の表現者たちの試行錯誤があって、日本語ロックは全体が底上げされ進化して、今ではほとんどそのことを口にする人はいない。不可能だと言われていたことが、当たり前に出来ること/やるべきことになってしまったのだ。すごいことだと思う。

日本語の歌詞がズバズバと鋭く切り込み、それがロックサウンドの推進力と化しているSUPER BEAVERの表現に触れると、もはや「乗る/乗らない」ではなく、彼らにとって日本語の歌詞はロックに必要不可欠な一要素なのだということが分かる。彼らのニューアルバム『27』では全曲の作詞作曲を柳沢亮太が手がけ(連続リリースの発端となったシングル曲“ことば”の歌詞のみ、渋谷龍太と共作)、バンドとしてがっちりと言葉を共有している。結成10周年イヤーを締めくくるワンマンでは、紆余曲折のキャリアを経て充実の現在地を迎えていることがひしひしと伝わってきて、新作『27』は素晴らしい作品になるだろうな、と思えた。

“秘密”ミュージックビデオはこちら。
http://www.youtube.com/watch?v=Op8I0e2uq0Y

バンド一丸の熱いコーラスから始まるアルバム曲“秘密”のミュージックビデオでは、相変わらず言葉と、そしてロックサウンドと、全力で取っ組み合いながら転げてゆくSUPER BEAVERの姿が浮かび上がってくる。ただ、本作ではその言葉やサウンドの前のめり感だけではなくて、衝動の輪郭を捉え、ロックの手綱を握って巧みにコントロールしながら、伝えたいことを余すことなく伝えようとする一面も見られることが興味深い。憂いたシティポップ風の“まっしろ”は、大人びたSUPER BEAVERの新しいエモーションの形と言えるだろう。美しく、しなやかに鍛え込まれたロックアルバムだ。

先頃29歳の誕生日を迎えた渋谷は、幼少期の彼とステージ上の彼の写真を並べ、深い感謝の思いをツイートしていた。『27』発売日である2016年6月1日(水)には、ドラマー・藤原広明のアーティスト名に“28才”が加わるだろう。そして2016年6月16日(木)の千葉LOOKからはいよいよ、長い新作ツアーが始まる。言葉を疑っては鍛え、ロックと格闘し、転がってゆくSUPER BEAVERが残す轍は、成長し続けるバンドの証明そのものとなってゆく。それは、日本語ロックが長い歴史の中で掴み取ってきた成果とも、重なって見えるはずだ。(小池宏和)

RO69(アールオーロック)

最終更新:6月2日(木)7時0分

RO69(アールオーロック)