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<上海だより>庶民の味はウスターソース 「上海辣醤油」こそ上海の味?

THE PAGE 6/5(日) 11:00配信

 中国には実に多種多様な調味料がありますが、どのような調味料を思い浮かべるでしょうか。実は、上海で最も定番と言われている調味料の一つが「辣醤油」と呼ばれているもので、実は伝統的な中華調味料ではなく、元はイギリスから渡ってきたウスターソースであることはあまり知られていません。

 そもそも、ウスターソースは19世紀初頭にイギリスはウスターの主婦が偶然作り出したソースにその起源があるとされています。その後、1830年代にイギリスのサンズ卿が植民地のインドから持ち帰ったソースを基に商品化し、世界初のソース会社・リーペリン社が創設されました。

 上海にウスターソースが伝わったのは、イギリスやフランスが統治していた19世紀末から20世紀初頭頃で、西洋レストランで出されていたトンカツやボルシチなどにこのウスターソースが使われていたそうです。現在上海で多く流通している上海辣醤油は名前通り、粘度の低いウスターソースをベースに結構強めの酸味と辛味でアレンジされています。

 上海名物の料理には上海蟹、小籠包、豚の角煮、などなどいろいろありますが、トンカツも代表的な上海名物の一つです。日本のトンカツとは異なり、薄く叩いた豚肉をカラッと揚げたもので、主食というよりはサイドディッシュやおやつに近い感覚で食されます。現地では「炸猪排」という名で親しまれており、上海人としてはこのトンカツに上海辣醤油をかけて食すことが「上海」の味、なのだそうです。

 ちなみに、日本でのウスターソースの歴史も、上海とほぼ同時期の19世紀後半、明治時代にさかのぼります。今でこそ、トンカツソースや中濃ソース、そしてウスターソースなど多様なソースがありますが、この3種は全て「ウスターソース類」に該当します。区別としては、それぞれの粘度の違いによって名称が決められます。現在の日本では各地域によって親しまれているソースの種類が異なるようですが、20世紀初頭に流通していた「ソース」とは基本的に粘度の低い狭義のウスターソースだったようで、現在の地域ごとの好みの違いは戦後に家庭の食卓が洋風化されるにつれて形成された文化のようです。

 インドからイギリス、そして中国や日本(日本の場合はアメリカからの影響も強い)へと、アジアとヨーロッパを往来したソースの歴史も、味と同様に深みのあるものです。また、中国には香醋や甜麺醤、豆板醤など多種多様な調味料がある中で、歴史も浅く西洋から伝わったウスターソースが現在の上海で親しまれているというのは、19世紀から長崎や横浜のように国際的であった上海だからこその歴史を感じます。

最終更新:6/5(日) 11:00

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