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米西海岸の薄板市況暴騰、通商措置で深刻な調達難

鉄鋼新聞 6月3日(金)6時0分配信

 米国西海岸で薄板類の鋼材市況が暴騰している。相次ぐアンチダンピング(反不当廉売=AD)措置で輸入鋼材の流入が激減し、域内ミルの生産も追いついていない。現地の流通企業は深刻な調達難に陥っており、熱延コイルではメトリックトン当たり700ドルでの取引も出始めている。

 「こんな短期間で100ドル、200ドルと値が吊り上がるのは初めてだ」。
 カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のカーソンに本拠を置くパシフィック・トール・プロセッシングのオーナー、トニー・カマスタ社長は嘆く。「一体、顧客へどう説明すればいいのか。何よりも、鋼材をどこからも手当てできない」。
 米国と一言で言っても、カリフォルニアをはじめとした西海岸は独特の市場だ。東にロッキー山脈がそびえ、物流費がかさむためアルセロール・ミッタルUSAやUSスチールといった地場大手の鋼材がもともと入りにくい。
 地場ミルも限られる。西海岸で薄板を造るのは、JFEスチールと伯ヴァーレが折半出資するカリフォルニア・スチール(CSI)のほか、同州にある米韓合弁のUSSポスコ・インダストリーズ(UPI)、ワシントン州にあるNSブルースコープ・コーテッドプロダクツの米事業の一つ、スチールスケープの3社しかない。
 こうした特殊性もあって、昔から米西海岸は太平洋を渡ってアジアから輸入鋼材を大量に買い付ける市場だった。
 この輸入材マーケットに異変をもたらしたのは、米ミルによるAD措置だった。ADは国全体で適用されるため、西海岸のような輸入材への依存度が高い市場でも容赦ない。昨年からホットや冷延、表面処理鋼板で始まったAD調査では、ことごとく「クロ」が仮決定され、これらのソースは締め出された。
 特にホットでもAD措置が発動したことで、UPIやスチールスケープといった冷延以降を造るリローラーは原板の調達難に陥っている。熱延ミルを持つCSIは半製品・スラブを買い付けるためホットADの影響はないものの、スラブ自体が世界的に品薄で、生産がタイトなJFEからの調達も難しい。結果、西海岸の地場ミルは生産量が落ち込み、表面処理鋼板は1千ドルという値が付くまで物がないという状態だ。
 西海岸のディストリビューターは、鋼材を求めて世界各地を巡っている。かつて大阪で暮らした経験がある加州ターザーナのエッサールマン・スチールを率いるジム・エッサールマン氏もその1人。調達ソースの開拓に向け日本も訪れ「とにかく物がない。何とか鋼材を手当てしたい」と話す。
 ソースとなり得るのはAD措置の影響がない国。表面処理鋼板AD調査で0%の税率に設定された台湾や、AD措置のないベトナムのリローラーには引き合いが殺到している。米国のAD措置は、海外市場でいびつな構図を生み出している。(黒澤 広之)

最終更新:6月3日(金)6時0分

鉄鋼新聞