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進化し続ける「トイレ」の汚れ対策、最新事情を紹介

SUUMOジャーナル 6月3日(金)7時0分配信

洋式トイレになじんだ子どもが、小学校にある和式トイレの使い方に戸惑う時代。たった半世紀で日本のトイレ事情は大幅に変化している。特に2000年辺りからの技術革新は著しく、近い将来「トイレを掃除? なぜ?」と子どもに聞かれる時代が来てもおかしくないかも……。そんな予感すら感じさせるトイレの最新事情を見てみよう。

■「個室」として扱われるようになったトイレ

用を足す場所であり、時代劇などで見られるように、かつては母屋と離して置かれていた、トイレ。それが今や雑誌や漫画を読んだり、スマホをいじったり、一人でゆったりくつろげる「個室」になってきている。

なぜトイレは個室のように扱われるようになったのか。1つはしゃがむ和式から座る洋式へと変わっていったことが大きい。座ることで姿勢がラクになり、長居ができるようになった。なかなか個室を持ちにくい日本の住宅事情において、座って一人きりになれる洋式トイレは、長居をしやすい場所として利用されるようになっていった。

洋式トイレが普及し始めたのは、公団住宅で採用され始めた1960年ごろ。さらに1980年ごろからTOTOの「おしりだって、洗ってほしい」のCMで温水洗浄便座の認知が高まったことも追い風となり、一気に普及していく。2008年には洋式トイレ保有率は約90%に達し、2016年3月には温水洗浄便座の一般家庭への普及率も80%を超えた(洋式トイレ保有率は総務省統計局の「平成20年住宅・土地統計調査」より、温水洗浄便座の普及率は内閣府 消費動向調査の「主要耐久消費財等の普及率(二人以上の世帯)(平成28年(2016年)3月現在)」より)。

■「トイレのキレイ化」は2000年辺りから飛躍的に進化

長居を可能にするには「キレイ化」技術の進化も欠かせない。特に2000年辺りからの汚れに対する技術革新は著しいものがある。例えばTOTOは1999年に、便器に汚れがつきにくいセフィオンテクトという技術を開発。さらに2011年には除菌作用のある電解除菌水などを使って、目に見えない汚れや菌を分解・除菌する技術(きれい除菌水)も開発された。

【画像1】TOTO「ネオレスト」。本文中の「セフィオンテクト」のほか、24時間汚れやにおいを取り除くよう「きれい除菌水」をミスト状に便器に吹きかけるなどの機能が、適宜自動で作動する「きれいサイクル」を備えている(写真提供/TOTO)

【画像2】「きれい除菌水」とは水道水からつくられる除菌成分を含む水。これを自動的にミスト状に吹きかけることで便器の見えない汚れを分解し、除菌する。時間がたつと水に戻るので環境にもやさしい(写真提供/TOTO)

パナソニックも2006年に、食器用中性洗剤からつくる泡を使って便器の汚れを落とすという機能を備えたトイレを発表(アラウーノ)。2014年には便器内に泡のクッションをつくることで小便のハネを抑え、便器のフチの形状を工夫することで床に垂れない・漏れないように改良が図られた。

【画像3】パナソニック「アラウーノ」。小便のハネを抑える泡のクッションは、汚れを落とす際にも使う食器用中性洗剤を使用。また長時間の使用でも疲れにくいように便座形状が改良されるなどしている(写真提供/パナソニック)

【画像4】小便の飛び跳ねを抑える「泡クッション」。便器が上がると自動的に水位が下がり泡が生成され、泡で受け止めることでハネを抑える(写真提供/パナソニック)

■100年たっても汚れのリングが付かない!?

LIXILは1999年に汚れが付きにくく落ちやすいコーティング技術(プロガード)の開発。その後も研究を続け、2016年に「アクアセラミック」という衛生陶器を開発した。これは陶器が本来もつ硬さや抗菌性能を保ちながら、(1)水が汚れの下に入り込み、水の力で汚れを浮かして汚れを洗い流しやすくするほか、(2)水アカがリング状にこびりつくことを、簡単な掃除だけで防ぐことができる。

同社は「アクアセラミック」について、日常の簡単な手入れだけで新品時の輝きが100年以上続くことが期待できる画期的な技術としており、「汚物」「水アカ」「キズ汚れ」「細菌汚れ」というトイレの4つの汚れすべてに応えることができる、世界初(※)の衛生陶器とのことだ。
※2016年2月23日現在 LIXIL調べ

(2)についてはもう少し説明がいるだろう。汚れのリングがこびりつくのは、掃除をさぼったからと思われがちだが、実はこのリング、陶器製のトイレで水道水を使っていれば、ついて当たり前のものなのだ。

なぜなら水道水に含まれるシリカと呼ばれる成分がトイレの陶器表面で化学反応を起こすことで、いわゆる水アカとして陶器表面に固着するからだ。これがトイレを使用する度に重なっていき、その隙間に汚れやホコリ、細菌などが入りこみ、全体として黄ばみや黒ずみとして見えるというわけだ。

【画像5】水アカのこびりつきは、浴室の鏡などでも同様に起こる。水アカが鏡にこびりつくと白く汚れてくすんで見えるが、シリカは色が透明に近く、トイレは陶器表面が白いためシリカが固着していても分かりにくい(写真提供/LIXIL)

ちなみに市販の汚れのリング用洗剤は、黄ばみや黒ずみを漂白、つまり白くすることが目的で、シリカ自体はブラシでゴシゴシと力を入れて落とさなければならない。何しろシリカがトイレ陶器表面で化学結合しているので、そう簡単には落ちないからだ。この化学反応を起こさない陶器製トイレが、衛生陶器「アクアセラミック」なのだ。

先述のように水道水にはシリカなどさまざまなミネラル成分(マグネシウムやカルシウム等)が含まれており、洗浄水を流すたびにトイレに広まる。それらを放置しておくと汚れとして見えてくるので、アクアセラミックのトイレでも簡単な掃除は必要だ。

【画像6】LIXIL「サティス」。アクアセラミックの採用により汚れにくいほか、エアカーテンのようににおい漏れを遮断したり、小便の跳ね返りを防ぐ泡クッションなどの新機能も搭載(写真提供/LIXIL)

【画像7】汚れがスルッと落ちて、水アカもこびりつかない衛生陶器「アクアセラミック」。左の従来陶器トイレと比べるとその差は一目瞭然。普通の掃除をするだけで100年間このツルツルが保たれるという(写真提供/LIXIL)

■「キレイ」「脱臭」「節水」、トイレの進化はどこに向かう?

その他にも2000年以降のトイレは汚れが落ちやすい水流をつくる洗浄方法や、便器と便座の隙間の掃除のしやすさ、脱臭機能など、「キレイ」「清潔」「におわない」技術が飛躍的に進歩を遂げている。

また「キレイ化」技術によって汚れが落ちやすくなったこともあり、少量の水でも汚れを流せるようになった。例えばTOTOのトイレを例に挙げると、90年代には大1回を流すのに13L必要だったが、最新型の「ネオレスト」では3.8Lと、実に1/3以下の水で流せるようになっている。

「トイレのキレイ化」技術は今後も各社が競うように開発が進むだろう。いずれは「トイレ掃除? そういえば100年前はしてたみたいだね……」なんて時代がやってくるかもしれない。

●参考
・LIXIL トイレ アクアセラミック
・TOTO トイレ ネオレスト
・Panasonic トイレ アラウーノ

籠島康弘

最終更新:6月3日(金)7時0分

SUUMOジャーナル