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中川一政のお宝92点、東京のコレクター寄贈 白山の記念美術館

北國新聞社 6月3日(金)2時44分配信

 白山市松任中川一政記念美術館に、東京のコレクターから洋画家中川一政(1893~1991年)が装丁を手掛けた単行本や、表紙絵を描いた雑誌、著書など資料92点が寄贈された。一度にこれほど多くの寄贈は初めてで、ほとんどが同館の未所蔵品という。油絵の制作過程を解説した雑誌「油繪實習帖(あぶらえじっしゅうちょう)」(アトリエ社、1951年刊)など「レア物」(同館関係者)もあり、同館は資料を整理しながら順次公開する。

 資料を寄贈したコレクターは東京都台東区の田邊穰(たなべゆずる)さん(89)。小学生の頃に新聞小説の一政作の挿絵を見てファンになり、都職員だった20代前半から古書店などで収集を始めた。定年後はコレクションの一部を神奈川県の真鶴町立中川一政美術館に随時寄贈していたが、同館からの紹介で、今回初めて白山市松任中川一政記念美術館に贈った。

 寄贈された資料は、武者小路実篤の単行本「西郷隆盛」(大日本雄辯會講談社、38年刊)や、雑誌「創作 第28巻第1號」(創作社、40年刊)、山本健吉の「句歌歳時記 夏」(新潮社、86年刊)などで、最も古い資料は29(昭和4)年刊の「原阿佐緒抒情(じょじょう)歌集」(平凡社)となっている。

 雑誌「油繪實習帖」では、油絵「マジョリカの壺(つぼ)」の制作過程を木炭デッサンから単色画を経て2枚の完成図に至るまでの、計4枚の絵を載せ、「使用色はカドミウム・エロー、オーレオリン…」「左から光をうけているからこの線は極めて鋭い」など、絵の具や描き方を独自の視点で解説している。同館によると、一政が油絵の描き方を指南するものは珍しいという。

 油繪實習帖をめぐっては、題材になったマジョリカの壺を同館が所蔵しており、他の資料に先行し、壺とともに常設展示を始めた。同館は「一政は同時に2枚の絵を描き、気に入った方を出展することがあった。当時58歳だった一政の人となりも垣間見える」としている。

 一方、田邊さんは「白山市の美術館がマジョリカの壺の実物を所蔵しているとは知らなかった」と驚いており、「また古本市などで掘り出し物が見つかれば、寄贈したい」と話した。

北國新聞社

最終更新:6月3日(金)3時13分

北國新聞社