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ダークな『アナ雪』?! 白雪姫はいなくても見応え十分な『スノーホワイト/氷の王国』

dmenu映画 6月4日(土)15時0分配信

ハリウッド映画の新ジャンルとして人気を集めている古典のリメイクやスピンオフ。特に注目されているのが、グリム童話などのおとぎ話をダークファンタジーアクション化した作品だ。

『スノーホワイト/氷の王国』も、そんな作品のひとつ。白雪姫=スノーホワイトが、自ら剣をとって邪悪な継母と戦う2012年の映画『スノーホワイト』のスピンオフで、白雪姫の継母ラヴェンナ女王と、その妹で”氷の女王”と呼ばれるフレイヤの物語。前作で大活躍した白雪姫は出てこない。姉妹、氷といわれると、大ヒットした某ミュージカルアニメーションを想像するが、こちらは実写で、よりダーク&ビターな大人の味わいになっている。

「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」で有名な“魔法の鏡”を手に入れたラヴェンナ女王は、その美貌と魔力で周囲の王国を征服していった。ラヴェンナの妹のフレイヤは、姉想いの心優しい女性。しかし、婚約者のいる家臣との間に子を宿し、彼の裏切りでその子を失うと、悲しみのあまり氷の魔法を操る冷酷な女王になってしまう。フレイヤは各地からさらってきた子どもたちで軍隊を作り、北方に強力な王国を築く。そして、ラヴェンナがスノーホワイトに倒されたことを知ると、スノーホワイトのもとから“魔法の鏡”を奪い、鏡に閉じ込められたラヴェンナを復活させてしまう。

童話の主役は多くは優しく美しいお姫さまだが、新ジャンル映画に出てくる姫たちは、強くて怖くて美しい。今やこの3つは女っぷりを高める魅力の要素。これらを備えた3人のヒロインの愛、生き方が興味深い。

邪悪な女王ラヴェンナは、ゴージャスな美魔女。自己愛が最強で、男たちの愛と欲望を利用。自分がこの世で一番美しい存在であるためなら、手段を選ばない。愛は人を弱くすると思っている。

氷の女王フレイヤは、気品あふれるクールビューティ。かつては一途な愛に生きていたが、その愛を失った反動で愛を信じないようになる。そして愛のない世界、愛によって傷つくことのない世界を作ろうとする。

戦士サラは、ワイルド&セクシー。幼い頃にさらわれてフレイヤの王国の女兵士となるが、愛を禁じられた王国で共に育ったエリックと情熱的に愛し合う。しかしこのことがフレイヤに見つかってしまい、愛を心の奥深くに封印する。

それぞれのキャラクターを補完する見ごたえのある衣裳は、『シカゴ』(02)『SAYURI』(05)『アリス・イン・ワンダーランド』(10)のコリーン・アトウッドが手掛けている。シャーリーズ・セロン演じるラヴェンナが着る金の羽飾りのマントや、指にはめた黒いかぎ爪のようなアクセサリーは悪役の貫録十分。エミリー・ブラント演じるフレイヤは、シルバーやブルーグレイを基調としたドレスやヘアアクセサリーが白鳥のように優雅。サラ役のジェシカ・チャスティンは、黒い羽飾りがついたボンテージ風の衣裳で脚線美を披露。

三人三様の生き方は、やがて愛をテーマとした直接対決へと向かう。自分が信じるものを証明するため、美しいヒロインたちが命がけで臨む戦いはなかなか見応えがある。しかし見どころは邪悪な姉妹とサラたちの戦いだけにとどまらない。映画のラスト近くで明かされる、高慢で自信たっぷりのラヴェンナが本当に求めていたもの。そこにはフレイヤの子がなぜ殺されたのかという秘密も隠されており、人間の果てない欲望について考えさせられる。

ビジュアルよし、アクションよし、そしてより深い物語性。”ちょい足し”どころか要素”盛り盛り”のこの映画を見れば、自分の人生になにが欠け、なにが必要なのか、見極めることもできそうだ。

『スノーホワイト/氷の王国』
監督: セドリック・ニコラス=トロイヤン
TOHOシネマズ日劇 ほか全国公開中
配給: 東宝東和
(C) Universal Pictures

文=熊坂多恵/Avanti Press

最終更新:6月4日(土)15時0分

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