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音のない世界の“音楽“ ろう者の奏でる生を描いた58分の無音映画

BuzzFeed Japan 6月4日(土)12時0分配信

音のない世界、つまり、聾の世界に「音楽」はあるのか。

その映画には、最初から最後まで音がない。58分間の静寂。しかし、テーマは「音楽」だ。映像を見ているうちに、何かが聞こえる。

映画の名前は「LISTEN リッスン」。

陽光が反射する海をバックに踊る男性。空にゆっくりと手を伸ばし、何かに触れるように指を動かす女性。15人のろう者は、無音に生きる。予告編には、こう記されている。

「歌わずにはいられない。私たちは、それを、なんと名付ければ良いのだろう」
これが、監督した2人のろう者が映画に込めた問いだ。【BuzzFeed Japan / 籏智広太】

音がないのに、音楽を感じる

国内外で活躍する舞踏家から劇団員、そして普通の夫婦まで。それぞれが生き、踊り、音を奏でる姿を、淡々と捉えている。

音はないのに、気がつくと体が動いてしまうような。まるで、心の中にある「音楽」を呼び起こされるような。そんな感覚を覚える、不思議な作品だ。

ろう者の中にある「音楽のようなもの」

共同監督の牧原依里さん(29)と雫境(DAKEI)さん(46)はともに、産まれながらにしてのろう者だ。

「もともとは、音のある世界の音楽を音のない世界、ろう者の”音楽”に変えて、伝えたかったんです。翻訳ですね。しかし、なかなか難しかった。ろう者には、音楽そのものが存在しないと思われていたから」

「それでも、ろう者たちの中は”音楽のようなもの”がある。音のない世界の”音楽”がある。ろう者の手の動きは意思伝達にこなれているからこそ、言語の域を超え、”音楽”を築き上げていけるんです」

「そのような、今まで認識されていなかったものを撮影したのが、この映画です。メッセージは“ろう者の奏でる、それは何なのか”という問いなんです」
BuzzFeed Newsの取材にそう語る牧原さんは、この映画のことを「無音でありながら画面から”音楽”が湧き出てくる」と表現する。

2人に会ったのは、配給元である渋谷の映画館・アップリンクの一室。私は手話を話すことができないため、互いのパソコンを通じ、Facebookメッセンジャーで取材した。

質問を投げかけると、二人は手話で言葉を交わし、相談をする。そして、一言一言を確かめるかのように丁寧にキーボードをタイプし、答えてくれた。

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最終更新:6月4日(土)17時3分

BuzzFeed Japan