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やっぱり「3」が好き。具智元、サンウルブズの試合がない時は拓大のゲームで

ラグビーリパブリック(ラグビーマガジン) 6月6日(月)6時42分配信

 文句なしの強さだった。6月5日、東京・法大多摩グラウンドでの法大戦。拓大の3番を背負った副将の具智元が、得意のスクラムで魅せる。試合の1本目で、概ね勝負を決めた。

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 身長184センチ、体重122キロの巨躯は、どうにか工夫を凝らす相手のパックを何度も崩壊させる。

 当の本人は「マイボールでは相手を5メートル押す意識ができたので良かったけど、相手ボールでターンオーバーを奪えなかった。相手が真っ直ぐ組ませないようにしてきたところを超えて、真っ直ぐ押し込めれば…」と反省しきりだ。もっとも、相手陣営の感触は違う。法大の中井健人は、最後尾のFBの位置にいながら最前列の「圧を感じた」という。

 結局、拓大は26-38と敗れた。前半30分頃には敵陣ゴール前左で何度もスクラムを押し込みながら、味方選手が落球してしまう場面があった。関東大学春季大会グループBでの戦績を1勝3敗とした。それでも遠藤隆夫監督は、具の存在感にただただ驚いた。

「凄くなってますよ。フィールドプレーができるようになった。スクラムでも余裕が出てきた。以前は(押し込んだ直後に)自滅して崩れていたこともありましたが、そういうことがなくなった。高いレベルで揉まれたら、うまくなるんだな、と」

 元韓国代表PRの父・東春氏の英才教育を受けた具は、「日本の方が韓国よりラグビー人気が高い」という家庭の方針から日本でのプレーを選択。全国大会とは無縁だった大分の日本文理大附属高時代にその名を知らしめた。拓大入り後は当時のマルク・ダルマゾ スクラムコーチに見込まれ、日本代表の練習に参加した。

 そして今季は、国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズへ加入する。大学での単位取得が順調だったこともあり、「高いレベルで揉まれる」チャンスをつかんだのだ。

 4月8日の第7節で後半30分から途中出場。公式戦デビューを果たした。南アフリカの強豪ストーマーズに19-46と敗れるも、同リーグ初の韓国人選手という称号を勝ち取った。

 日本代表の堀江翔太キャプテンらキャリア豊富なメンバーと時をともにするなかで、競技理解を深めた。

「スクラムの後、どこへポジショニングするのがいいのか。いままでは(接点付近に)寄ってばかりだったけど、いまではライン(スクラムがあった地点にできた攻撃陣形)に残って、2、3次でもらうようにした」

 スクラムの後の「フィールドプレー」で、省エネしつつ効果的にボールをもらえるようになったのだ。さらには…。

「(周りの選手が)練習中に水をたくさん飲んでいた。自分もそうしたら、去年よりいいコンディションで試合をできるようになりました」

 国際舞台で身を削る合間に、国内所属先のゲームに出場。そのタフな選択の背景を、本人は「3番で試合をしたかったから」と語る。

 そう。サンウルブズでは本職と違う左PRとして、故障者の穴埋めを任されていた。イングランドのニューカッスル・ファルコンズでプレーした日本代表の右PR、畠山健介は、左右のPRの感触の差異を「東京と大阪(の風土や文化)くらい違う」と表現していた。

 元ニュージーランド代表HOのマーク・ハメット ヘッドコーチは、今回が初来日だ。ライバルとの「経験」の差を覆そうにも、「経験」が浅いと思われている具は、練習でも右PRに入りづらい状況下にある。日本代表経験者の浅原拓真、垣永真之介が、3番を争っている。

 5月の長期ツアーでは、ボーダーライン上の選手ならではの辛酸もなめた。

 シンガポール・ナショナルスタジアムでストーマーズと再戦し17-17と引き分けた第12節では、ベンチに入りながら出番を与えられなかった。

 しかもその直後には、帰国した。日本代表の左PRである稲垣啓太が怪我から復帰したためだった。

 サンウルブズがブリスベン・サンコープスタジアムでレッズとの第13節を25-35で落とした翌日の22日、具は春季大会の早大戦に出ていた(東京・早大上井草グラウンド/●19-24)。

 さらに状況は変わる。第14節を前にサンウルブズへの再合流を命じられ、キャンベラのGIOスタジアムで最後の8分間だけプレーした。ブランビーズに5-66で大敗した。

「ブランビーズ戦(での自身のプレー)は、最初に出たストーマーズ戦の時より良くなってきていました。それでも、経験が薄いので難しい。外国人は内組みで、いなすような感じ(対面の選手が真っ直ぐ組み合わないように工夫を凝らす)。対応するのが、大変です」

 6月のツアーを回る日本代表では、バックアップメンバーに回った。

 正規組には畠山とサンウルブズの垣永が並び、バックアップでは他に浅原がいる。故障者が出て具がメンバー入りするのは、きっと左PRとしてだろう。念願のテストマッチ(国際間の真剣勝負)デビューを目指すなか、複雑な思いもなくはない。

 それでも…。

「シンガポールでは試合にも出れなかったので、ちょっと、寂しいという感じはしました。でも、早大戦では3番が組めたので、それはいい経験でした。いまは1番でやっていることが多いですが、もし3番で練習をするチャンスがあったらアピールして、試合に出られるように…」

 腐らず、真っ直ぐ押す。

(文:向 風見也)

最終更新:6月6日(月)6時42分

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