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「ノール!」の大合唱の中、ジョコビッチが4度目の決勝で初制覇 [全仏テニス]

THE TENNIS DAILY 6月6日(月)15時3分配信

 フランス・パリで開催された全仏オープン(5月22日~6月5日)の最終日、男子シングルス決勝で、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が第2シードのアンディ・マレー(イギリス)を3-6 6-1 6-2 6-4で破り、大会初の栄冠に輝いた。また、史上8人目となる生涯グランドスラムを達成。両者の対戦成績はこれでジョコビッチの24勝10敗となった。 

ジョコビッチが赤土に描いたハートの意味 [全仏オープン]

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 スタンドはこれまでと少し様子が違っていた。試合が始まる前から「ノール!ノール!」の大合唱。セルビアの旗があちらこちらにはためいている。

 過去3回この決勝で敗れているジョコビッチ。圧倒的な強者ゆえか、いつもヒール役だった。ところが、3度も決勝で敗れるという試練に耐え、ふたたびこの舞台に戻ってきたジョコビッチを、今日こそは勝たせるのだという気迫のようなものがセンターコートに充満していた。

「観客との絆を感じている」というジョコビッチが、開始早々いきなりラブゲームでブレーク。しかしそこから4ゲームを連取されると、3-6でセットを落とした。ジョコビッチが「急に緊張し始めた」せいだけではないだろう。前哨戦のローマ大会でジョコビッチを破って優勝しているマレーも当然、確かな戦術を持って臨んでいた。

「世界最強のプレーヤーにポイントを支配させてはいけない」
 多少リスクを負っても一本早く攻め込むマレーに、ジョコビッチは押されていた。しかし修正は的確だった。深く強いショットでマレーを徐々に後方へ押しやり、ラリーをコントロールし始める。

 第2セット以降は6-1 6-2 6-4 。しかしスコアほど簡単ではなかった。2ブレークに成功した第4セットでさえ…。5-2で迎えたサービスゲーム。ジョコビッチはバックハンドのダウン・ザ・ラインをきれいに決めて1ポイント目を奪ったものの、そこからマレーが4ポイント連取でブレーク。4ポイントのうち1つはジョコビッチのダブルフォールトだったが、あとの3ポイントはすべマレーのウィナーだった。

 悲願の勝利を目前にした重圧と言えばわかりやすいが、ジョコビッチはそれを否定した。
「5-2になったときは、なぜだか笑えてきたんだ。プレッシャーはあまり感じていなかった。本当だよ。むしろ、ちょっと気が緩みすぎたのかもしれない」

 それを見透かすように、マレーがすさまじい守備力でジョコビッチからミスを引き出す。マレーが第9ゲームをキープし、第10ゲームでジョコビッチの2度目のサービング・フォー・ザ・チャンピオンシップ。1ポイント目はマレー。次はジョコビッチのドロップショットに追いついたマレーのバックハンドがネットのコードにはじかれた。この日の2人の「ギリギリ」のショットの応酬を象徴するようなキーポイントだった。

 その後、40-15でジョコビッチがマッチポイントを握るが、一度はマレーがデュースに追いつき、ジョコビッチのアドバンテージで3本目のマッチポイント、百戦錬磨のジョコビッチもこのときの息詰まるラリーの最中、不思議な体験をしたという。

「肉体から魂が抜け出して、自分の体を外から見ているようだった」
 そんな極限状態を聞けば、待ち焦がれた勝利の瞬間に、いつものような雄叫びもなく放心していた理由が解ける。

 男子では史上8人目の生涯グランドスラム達成とともに、昨年のウィンブルドンからグランドスラム4大会連続制覇。これは1969年に年間グランドスラムを達成したロッド・レーバー(オーストラリア)以来の偉業だ。

 敗れたマレーは観客に語りかけた。
「今日ここに来てくれたみなさんは、それを見られて本当に幸運でしたね。僕は逆の立場で最悪だけど、一役を担えたことは誇りです」
 記憶に残るウィニングシーンには必ず誇り高い敗者がいる。

 今にも降り出しそうだった空からいつの間にか雲が散り、この1週間ほとんど現れなかった陽射しが、2人の美しいライバルと、激しくも温かい観客たちを包んでいた。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)

最終更新:6月6日(月)15時3分

THE TENNIS DAILY

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。