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年金改革ウォッチ 2016年6月号~ポイント解説:消費税率引上げ再延期の影響

ZUU online 6月7日(火)20時0分配信

■先月までの動き

年金数理部会では、公的年金各制度の平成26年度財政状況について報告が行われました。

◆社会保障審議会 年金数理部会

5月20日(第69回)テーマ 平成26年度財政状況(国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済制度)、その他
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000124843.html (配布資料)

◆社会保障審議会 年金数理部会

5月30日(第70回)テーマ 平成26年度財政状況(厚生年金保険、国民年金(基礎年金))、その他
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000125840.html (配布資料)

■ポイント解説:消費税率引上げ再延期の影響

6月1日、安倍首相が消費税率引上げの再延期を表明しました。本稿では、この再延期が公的年金に与える影響について、あまり触れられていない現在審議中の法案への影響も含めて確認します。

◆過去の改正への影響: 無年金・低年金対策がさらに先送りに

消費税率の引上げは、2012年に「社会保障・税一体改革」の一環として国会で成立しました。その際、公的年金制度についてもいくつかの改正が成立しましたが、追加的な公費(国庫負担)が必要となる改正の開始時期は、確定した日付ではなく、消費税率の引上げ時期という変動可能性がある形で規定されました。消費税率の8%から10%への引上げに連動して実施される改正は、受給資格期間の短縮と低所得年金受給者への福祉的な給付の2つです。

前者は、公的年金を受給するために最低限必要な加入期間を、現在の25年から10年に短縮するものです。過去の加入歴にも遡及適用されるので、加入期間が25年未満で現在は公的年金を受給していない無年金の人でも、実施後は加入期間が10年以上あれば加入期間に比例した年金額を受給できます(10年加入の場合は年19.5万円、20年加入だと年39万円)。この改正で約17万人が無年金者でなくなる見込みです。

後者は、住民税が家族全員非課税で、かつ前年所得が老齢基礎年金の満額(約78万円)以下などの人(約790万人)を対象とした改正です。支給額は、保険料を納めた月数などに応じて決まります。

一体改革時には、特例的な給付水準の廃止(給付水準の引下げ)と、これらの無年金・低年金対策をセットで実施すると説明されていましたが、実際には給付水準の引下げだけが先行している状況です。今回の消費税率引上げ再延期で、無年金・低年金対策がさらに先送りされることになります。

◆今後の改正への影響:マクロ経済スライド未実施分の繰越適用に実施可能性。今後の国会審議に要注目

消費税率の引上げは物価に影響し、その結果、翌年度の年金額改定に影響します。年金額改定には前年(暦年)の物価上昇率が影響する仕組みなので、2019年10月に消費税率が引上げられれば、2020年度の年金額改定に3か月(10~12月)分、2021年度の改定に残る9か月が影響します。

現在審議中の法案が成立すれば、デフレ時や低インフレ時にマクロ経済スライドが効かなかった分(未実施分)が累積されて、高インフレ時にまとめて精算適用されます(政府資料では「キャリーオーバー」と呼称)(*1)。

この仕組みは2018年度の未実施分から累積され始め、早ければ2019年度から精算適用されます。近年は物価上昇率が低いため、法案が成立しても実際には精算適用が実施されないという見方もありました。しかし、今回の2019年10月への消費税率引上げ再延期によって、消費税率の引上げの影響が出る2020年度や2021年度の年金額改定で精算適用が実施される可能性が高まりました。

今回の年金改正法案は2017年4月の消費税率引上げを念頭に作成されたため、消費税率引上げに伴う精算適用は想定されていませんでしたが、今回の再延期で「消費税率引上げで物価が上がる中、年金額は据え置き」となる可能性が出てきました。将来世代を重視して予定通り精算適用するのか、当面の受給者を重視して精算適用の時期をずらすのか、今後の国会での議論が注目されます。

(*1)詳細は、拙稿「公的年金額の据え置きは、年金財政にとって二重の痛手-年金額改定ルールと年金財政への影響の再確認」『基礎研レポート』2016-02-22 http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=52631?site=nli 参照。

中嶋邦夫
ニッセイ基礎研究所 年金総合リサーチセンター

最終更新:6月7日(火)20時0分

ZUU online

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