ここから本文です

68%のゼネコンが増収増益で好調を持続(2016年3月期)

東京商工リサーチ 6月7日(火)14時59分配信

 主要上場ゼネコン60社の2016年3月期決算の連結売上高合計は、14兆9,414億2,800万円(前期比4.0%増)で5期連続の増収となった。また、本業の儲けを示す連結営業利益合計は、9,474億5,100万円(同75.6%増)で、3期連続で増益となった。増収は44社(構成比73.3%)、増益は50社(同83.3%)で、増収増益は41社(同68.3%)だった。
 なお、連結純利益合計は6,190億3,900万円(前期比66.8%増)で4期連続で増益となった。
 好決算の要因は、受注環境や工事利益率の改善が大きい。2011年3月の東日本大震災以降、建設市場は人件費や資材高騰が続いたが、2016年3月期は不採算工事も一巡した。さらに官公庁をはじめ発注者が施工技術者不足に伴う労務単価の上昇を織り込んだ発注を増やし、鋼材や石油など資材価格の落ち着きもあり工事利益率が改善した。
 2017年3月期の通期の業績見通しは、都内を中心に再開発工事がピークを迎えることや東京五輪関連工事が本格化する一方、施工技術者の不足から労務費の高騰を見込んでおり、利益は弱含みの予想が多い。
※本調査は、3月期を本決算とする主要上場ゼネコンの2016年3月期の決算短信から、連結売上高、連結営業利益、連結当期純利益、および単体ベースの土木・建築別売上高、完成工事利益に基づく完成工事利益率、単体ベースの受注高および官民別受注状況を調査、分析した。利益は原則として営業利益とした。
※対象は主要上場ゼネコン60社で、完成工事利益率は完成工事利益が比較可能な55社、土木・建築別売上高は内訳が比較可能な56社、官・民別受注高は内訳が比較可能な35社を対象とした。

連結売上高 73%が増収
 主要上場ゼネコン60社の2016年3月期の連結売上高合計は14兆9,414億2,800万円(前期比4.0%増)だった。増収は44社(構成比73.3%)、減収は16社(同26.6%)で、前期と比べ増収が9社(同15.0%)増えた。
 増収率トップは、前期比27.2%増の(株)巴コーポレーション(TSR企業コード:291099653、法人番号:9010001034839)。立体構造物、橋梁、鉄塔等を扱う鉄構建設事業が前期を大きく上回り、関連不動産事業の売上も好調だったことが増収に寄与した。
 増収率20%以上は3社(構成比5.0%)、10%以上20%未満の増収は10社(同16.6%)だった。
 連結売上高は、(株)大林組(TSR企業コード:570032172、法人番号:7010401088742)が3期連続でトップ。次いで鹿島建設(株)(TSR企業コード:290030145、法人番号:8010401006744、前期2位)、清水建設(株)(TSR企業コード:290077591、法人番号:1010401013565、同4位)、大成建設(株)(TSR企業コード:291065651、法人番号:4011101011880、同3位)で、3位と4位が入れ替わった。
 スーパーゼネコン4社と、(株)長谷工コーポレーション(TSR企業コード:291058086、法人番号:7010401024061)以下は依然として大きな開きがある。

連結営業利益・純利益 純利益合計は前期比66%増
 60社の連結営業利益は、合計9,474億5,100万円(前期比75.6%増)で、3期連続で増益となった。2013年3月期(1,862億5,000万円)と比較すると約5倍増と大幅な増収を果たした。
 60社すべてが営業黒字を計上し、50社(構成比83.3%)が増益、減益は10社(同16.6%)にとどまった。増収増益は41社(同68.3%)、減収減益は7社(同11.6%)で、前期より 増収増益は7社増え、減収減益は2社増えた。
 連結当期純利益は、合計6,190億3,900万円(前期比66.8%増)で、4期連続で増益となった。2012年3月期(484億800万円)と比べると約13倍増と大幅な増益を実現している。
 60社すべてが当期純利益で黒字を計上したが、このうち45社(構成比75.0%)が最終増益、15社(同25.0%)が最終減益だった。増収で最終増益は35社(同58.3%)、減収で最終減益は6社(同10.0%)だった。
 ゼネコン各社は市場拡大を背景に利益重視の受注を徹底しており、さらに労務費や資材価格が落ち着いてきたことで採算性が大きく改善した。
 連結当期純利益ランキングは、大成建設が前期比約2倍増の770億4,500万円で1位(前期1位)。2位は同4.7倍で723億2,300万円の鹿島建設(同6位)、3位は同2.2倍の大林組が634億3,700万円(同3位)、4位は同1.7倍で593億2,200万円の清水建設(同6位)。

完成工事総利益率(単体ベース) 3.8ポイント改善し10.6%
 単体決算で完成工事総利益額の内訳が判明した55社の完成工事総利益率(完成工事利益÷完成工事高)は10.6%で、前年度6.8%から3.8ポイント改善した。
 東日本大震災以降、人件費や資材が高騰し採算悪化に悩まされてきた建設業界だったが、2016年3月期は不採算工事も一巡し、官公庁をはじめ発注者が労働者不足に伴い労務単価を引き上げるなどの対応をしたほか、鋼材や石油など資材価格が落ち着いたこともあって改善した。完成工事総利益率は2014年3月期が5.9%だったが、2016年3月期は10.6%とほぼ2倍増に改善した。
 完成工事総利益率が最も高かったのは、ライト工業(株)(TSR企業コード:291002404、法人番号:7010001008811)の20.1%(前期18.5%)。次いで、(株)テノックス(TSR企業コード:290626730、法人番号:010401018815)の17.3%(同13.2%)、日特建設(株)(TSR企業コード:291151353、法人番号:7010001053304)の16.3%(同16.0%)など、土木工事を主体とする企業が目立った。

部門別の単体売上高 建築、土木工事とも増収率は前年度並みの4%台
 60社の単体決算で、完成工事高の内訳が「建築」と「土木」に分類可能な56社を集計した。建築工事の完工高は、合計7兆3,418億3,300万円(前期比4.0%増)だった。土木工事の完工高は、合計4兆1,795億5,500万円(同4.8%増)で、建築、土木ともに増収率は4%台だった。
 2016年3月期は、東日本大震災の復興工事、アベノミクスによる公共事業の発注増、首都圏を中心とする大規模再開発やインフラ整備などで、建築、土木ともに好調に推移した。だた、施工技術者の不足から工事原価が上昇したことで選別受注の傾向が強まり、建築、土木工事以外(その他)の完工高は前期より減少した。

単体受注高 増加、減少数が拮抗
 60社の2016年3月期の受注高合計は、12兆8,146億600万円(前期比3.7%減)だった。受注高は前期よりマイナスとなったが、前々期(2014年3月期)との比較では4.4%の増加だった。前期より受注高が増加したのは30社(構成比50.0%)、減少は30社(同50.0%)だった。

単体受注の官民工事別 公共工事18%減、民間工事6%増
 受注高累計のうち、公共工事と民間工事の内訳が判明した35社の受注金額は、公共工事が2兆7,901億900万円(前期比18.1%減)、民間工事6兆9,526億2,700万円(同6.0%増)だった。
 公共工事は前期に22.6%増の伸びを示したが、東日本大震災の復興工事がピークを過ぎたことや利益率の高い民間工事の増加などもあって、民間工事が増加する結果となった。

2017年3月期の連結通期業績予想 53%の企業が増収予想、27%が純利益増益予想
 2017年3月期の業績予想が判明した58社について通期の連結業績予想を集計したところ、売上高は合計14兆8,546億1,000万円で前期比1.0%増の予想だった。当期純利益は合計5,634億8,000万円で前期比54.0%増の予想となった。
 58社のうち、増収予想は31社(構成比53.4%)で、当期純利益の増益予想は16社(同27.5%)、同減益予想は42社(同72.4%)だった。都内の再開発工事がピークを迎えることや東京オリンピック関連工事も本格化することで施工技術者不足が強まり、労務費高騰など利益の圧迫が見込まれ、増益予想が少なかった。

東京商工リサーチ

最終更新:6月7日(火)14時59分

東京商工リサーチ