ここから本文です

IoTとアートを横断し、新たな表現を生む no new folk studio『Orphe』

SENSORS 6月7日(火)19時57分配信

きゅんくんとのコラボや、イベント「テクノうどん」でのパフォーマンスなど、これまでも何度かSENSORS.jp内で紹介してきた光るスマートフットウェア『Orphe』が5月21日から9月25日まで、石川県の金沢21世紀美術館にて展示されている。いちIoTスタートアップの製品としてさまざまなクリエイターを巻き込んできたOrpheが、美術館というアートの最前線を司る場に収蔵されるに至った経緯とは。またIoTだからこそ生まれるアート表現とは一体どんなものなのか。製作者でno new folk studio CEOの菊川裕也氏にお話を伺った。

IoTスタートアップのプロダクトが、美術館に展示されるということ

スマートフットウェア『Orphe』は内部に加速度・角速度・地磁気の計9軸のセンサーを仕込み、履く人の動きに合わせてLEDの光り方が変わったり、靴が描いた軌跡を動きのデータとしてアプリケーションに送ることで動きに応じた音を鳴らすことができる。元はクラウドファンディングサイト「indiegogo」に掲載されたのち目標到達金額を達成、現在一般販売に向けて準備を進めている。そんな中で現代アートや先端の芸術表現を広く収蔵する金沢21世紀美術館で期間限定の展示を行うこととなった。

--今回の美術館での『Orphe』の展示について、どのような経緯があったのでしょうか。

菊川:
クラウドファンディングをしていた際に、21世紀美術館のキュレーターの方の目に留めていただき、今回はそれが達成できるタイミングでお声掛けいただいて、デザインギャラリーでの展示と、美術館のミュージアムショップでのOrphe本体の販売の両方を行うことになりました。 Orpheを履いたダンサーが、1世紀美術館の館内でダンスパフォーマンスをして、その動きをOrpheが記録したものを、ダンサーのいない空間でOrpheが映像に合わせて光ることで再現するというメディアアート的なインスタレーション展示になっています。
もう一つの特徴としてはそのようにアートとして展示されていた光る靴を、ほんの10数メートル離れた場所で実際に買うことができるということがあります。美術館で有名な画家の絵を見た後に、それがプリントされているクリアファイルやポストカードを買うことはあると思うのですが、実物をそのまま買うことはなかなかない。大量生産を前提としているIoTスタートアップならではの面白さだと思います。


--美術館のキュレーターの人から見たときに、Orpheのどのような部分がアートとして認められたのでしょうか

菊川:
もともと僕たちが作る『Orphe』は、光る靴ということはもちろん、ダンスをすることで音楽を奏でることができる楽器というコンセプトで製作していました。いまダンスと聞いて一番最初に思い浮かべる光景といえば、音楽に合わせて体を動かし、その動きの精緻さやダイナミックさに見ている側が感動するというような、音楽が前提にある光景だと思います。
しかしOrpheはその逆。体を動かすことで音楽を奏でることができる。いわばダンスと音楽の主従関係を逆転させる試みを達成する手段として、早い段階からアート的な考えに基づいて制作していたんです。それはCEOである僕やメンバーがもともと芸術とテクノロジーの関係性を考える芸術工学を大学で学んでいたということがありましたが、そのことはno new folk studioとして前面に押し出してアピールしていたわけではなかったので、今回アートの領域の方から見出していただいて、お声掛けいただいたのはとても嬉しかったですね。

ただ、そういった音楽とダンスの関係性を更新する試みというのは、これまでもいくつもあって、僕たちもそういったものがたくさんあるということは大学で学ぶ中で知っていました。しかし、今回21世紀美術館の展示スペースをお借りしてアートとして展示させていただくにあたり、キュレーターの方から「Orpheを取り巻く現象がアートとして面白い」と言われたことが印象的でした。それは、メディアアートとして生まれた作品でありながら、大量生産を目指し多くの人の手に渡るつもりで作っているということ。そしてそのなかの手段として、これまでのお金の価値観を大きく変容させた仕組みであるクラウドファンディングを用いていたということ。また製作者である僕たちがno new folk studioというスタートアップとしてゼロからOrpheを作るために集まった人間であったということ。そしてOrpheが光る靴でありながら楽器であるがゆえに、きゅんくんや今回の展示のダンサーである浅沼さんなどジャンルを超えた様々なクリエイターを巻き込んでいるということなど、とにかく一言では言い表せない色々な潮流の結節点としてOrpheがあることが今回の展示に結びついたのかもしれません。

1/2ページ

最終更新:6月8日(水)14時2分

SENSORS