ここから本文です

「富山型」で農業振興 県JA中央会の伊藤次期会長

北日本新聞 6月7日(火)0時11分配信

 県JA中央会の次期会長に内定した現副会長の伊藤孝邦氏(67)=立山町高原、JAアルプス組合長=が6日、富山市の県農協会館で会見し、今後の組織運営の展望を語った。稲作の低コスト化と園芸作物の生産拡大を柱に、水田をフル活用する「富山型農業」の推進を掲げ、「農業者の所得アップへ最大限の努力をしたい」と決意を述べた。

 コメの消費減や価格の低迷といった旧来の課題に、環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意と農協改革という新たな状況が加わり「環境は厳しさを増している。JAの自己改革と経営基盤の強化が欠かせない」と強調した。農地の集約や低コスト技術の普及で稲作の生産性を高めるとともに、県と連携して取り組んでいる園芸作物の「1億円産地づくり」事業を加速させるとした。

 4月に施行された改正農協法に基づき、中央会は2019年9月までに監査、指導権限がない連合会へ移行しなければならない。「時間はない」と危機感を示し、新たに検討委員会を設置して課題を整理する考えを示した。導入が先送りされてきた会長の定年制についても、検討委員会で議論を進めるとした。

 任期は現会長の穴田甚朗氏の残任期間が満了となる来年6月末まで。報道陣から「穴田氏の路線を引き継ぐのか」と問われ、「現場を混乱させないことが第一。基本的な路線は受け継ぎつつ、目まぐるしく変わる情勢に臨機応変に対応することで、組織をさらに良くしたい」と語った。

 会見に先立ち、県内16JAの組合長会議と、新川、富山、高岡、砺波の4地区の代表による役員推薦会議があり、伊藤氏の次期会長内定を承認した。30日の総会に会長候補者として推薦する。

■難局を前に危機感

 穴田会長の任期途中での辞任表明に端を発した県JA中央会の次期会長選考は、副会長の伊藤氏以外に名乗りを上げる候補がおらず、立候補制になってから初めて無投票で決着した。単位農協の協調を重んじた「穴田路線」への信任であると同時に、TPPや農協改革といったかつてない難局を前に、県内JAが一丸とならなければならないという危機感の表れとも言える。

 バトンを託された伊藤氏には、険しい道が待ち受ける。国は18年産米から生産調整(減反)を廃止する方針で、県内でもコメだけに頼らない農業への転換が急務になっている。各JAは新たな戦略づくりを進めており、中央会は効果的な支援で取り組みを後押ししなければならない。

 減反の廃止で需給が崩れれば、米価の下落に拍車が掛かることは避けられない。“縛り”が無くなって各産地の足並みが乱れることのないよう、米どころ富山の代表としての発言力が求められる。

 その一方で、19年9月を期限とする連合会への移行に向けて、単位農協への監査権限など中央会の「力」を自ら削いでいく作業も進めなければならない。組織の在り方を根本から見直すことになり、重い責任が伴う。

 険しい道の先に「希望が持てる農業」を描けるか。そのためには、現場の声にしっかりと耳を傾けることが欠かせない。豊富な実務経験を持つ伊藤氏の手腕が試される。(政治部・浜田泰輔)

北日本新聞社

最終更新:6月7日(火)0時11分

北日本新聞