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【コラム】あなたが思っている以上にABEDONはすごい! 最新作『Feel Cyber』に見るその哲学

RO69(アールオーロック) 6月7日(火)19時10分配信

2016年6月3日にリリースされたABEDONのアルバム『Feel Cyber』が実にいい。その前の『ファンキーモンキーダンディー』から続く、ABEDON/八熊慎一/奥田民生/木内健/斎藤有太というラインナップから生まれるバンド感も最高だが、さらにその前の阿部義晴→ABEDON改名後初アルバム『BLACK AND WHITE』の時点から、ABEDONのアルバムが名盤でなかったことなどない。

ソロワークにおいてのみならず、それこそ“WAO!”“SAMURAI 5”のようなポップナンバーから“HELLO”“デジタルスープ”“We are All Right”といった後期ビートルズ的な美メロ曲群に至るまで、再始動後のユニコーンにおいてもABEDONのソングライティングが大きな軸になっていることはご存知の通りだ。「聴き手のリテラシーにかかわらず、品性とポップ感を誰にでも十分に届けることのできる王道の名曲を作ること」、「その楽曲の中に、自分が培ってきた経験も努力のすべてを懸けた珠玉のマジックとミステリーを盛り込むこと」、「王道の名曲を作ることに対して迷いもてらいもなく向き合うこと」においては、日本の音楽シーンにおいても屈指の才気を発揮しているひとりだと思う。

そしてもちろん、そんなABEDONの名曲主義は今作『Feel Cyber』にも脈打っている。快活なパワーポップサウンドに突き抜けた開放感を与えている“Feel Cyber”のでっかいメロディ。ラフ&ワイルドなリフが躍るアメリカンロックなテイストに、濃密なセンチメントとロマンを重ね合わせた“R&R Shower”。シンプルで穏やかなアンサンブルがどこかサイケデリックな質感を帯びた白昼夢感を立ち昇らせる“海から”……ボイスチェンジャーを駆使してリラックスしたバンド感を振り撒く“寝る”に象徴されるような、「決して自分をすごく見せない」ウィットと遊び心ゆえに、彼の「すごさ」にフォーカスされることは(その途方もないクリエイティビティと比べて)驚くほど少ないが、その楽曲とメロには間違いなく、他のソングライターとは一線を画した豊潤な輝きが備わっている。その「自分のすごさをアピールしない」作曲哲学を、ABEDONは『BLACK AND WHITE』のリリース時に、『ROCKIN'ON JAPAN』のインタビューで以下のように話してくれた。


「作ってる時はね、闘ってるんですよ。でも、曲を作ってる時はあんまり人と会わないし、人と会う時はもうできちゃってるんで、まったく闘ってる雰囲気がないというか(笑)。できあがっちゃったら、聴いた人のものなので。手塩にかけて育てた娘がいるとして、その子が嫁に行く時に『うちの娘はここが得意でこういう子でいいもの食べさせてきたんで、どうか可愛がってください』って言う親がいますか? そういう親に限って、娘はとんでもなかったりするじゃないですか(笑)」

「出ちゃうんだよね、育ちって。冗談抜きで、日々の生活ってミュージシャンにとってものすごく大事なんですよ。何を見て、どういう考えをしてるかって、出ちゃうんだよね、曲に。『この曲は嘘だ』とか、見る人が見ればわかる。それがわからないで騙される人がいるから、真面目にやってるミュージシャンが困るわけよ。それを見定められるリスナーを育てていくことで、自ずといろんなことがうまく回る気がするんですよね」
(『ROCKIN'ON JAPAN』2014年4月号より)


そしてもうひとつ。ABEDONの楽曲はいつだって強烈な「バンド感」に裏打ちされている。バンド編成で作られた『ファンキーモンキーダンディー』『Feel Cyber』はもちろん、全パートをひとりで演奏した「完全ひとりバンド状態」の『BLACK AND WHITE』でも、彼は独自の方法で各パートのタイム感をずらすことによって「バンド感」を作り出し、バンドというフォーマットならではのグルーヴを実現している。「バンド」という場だからこそカラフルに体現される、ABEDONの「ソロアーティスト」としての肉体性と創造性――『Feel Cyber』には、そんな彼の本質が高純度で結晶している。(高橋智樹)

RO69(アールオーロック)

最終更新:6月7日(火)19時10分

RO69(アールオーロック)

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。