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離婚による「年金分割」 別れる前に調べておきたいコト

ZUU online 6月8日(水)17時10分配信

2016年1月1日に総務省から発表された「2015年の人口動態統計の年間推計」によると、昨年1年間の離婚件数は約22万5000組。件数としては2002年以降減少傾向にあるものの、依然として高い数字を維持し続けている。単純に1年の日数で割ると、1日に616組が離婚している計算になる。そして離婚が増えると同時に、「離婚による貧困」も増えているのが現状だ。

離婚すると、それまで培ってきた財産は「夫婦共有の成果」と見なされ、分割されることは良く知られている。その一方で、公的保障である「年金」が分割されることは、あまり知られていない。ここでは、「離婚による貧困」を引き起こさない為にも、年金分割の制度を紹介したい。

■年金分割…婚姻期間中の厚生年金を当事者間で分割できる 

離婚をした場合、条件を満たしていれば、婚姻期間中の厚生年金を当事者間で分割することができる。「自分の給与から引かれていたものに、なぜ配偶者に分割しなければならないのか」と、分割「される」立場からすれば、納得できない人も少なくないだろう。ただ、繰り返しにはなるが、婚姻期間中の年金はほかの財産と同様、「夫婦共同で蓄えた資産」とみなされ、それを受け取る権利は双方にあるということになる。

間違えてはいけないのは、夫から妻に分割するという制度ではなく、「どちらか厚生年金額が多い方から少ない方へ分ける」制度である。現代の日本では、夫の厚生年金額の方が多いケースが圧倒的ではあるが、共働きで妻の厚生年金額の方が多かった場合は、当然妻から夫へ年金分割が行われる。その概要を説明しよう。

1.合意分割制度

2007年につくられた制度で、婚姻期間中の厚生年金を当事者間で分割できる制度。分割割合等は、当事者間での話し合いを行って決めるが、合意がまとまらない場合は、夫または妻どちらか一方からの求めによって裁判所に申立て、分ける割合を定めてもらうことも可能。分ける割合は、最大で1/2である。

分割するための条件は、
・婚姻期間中の厚生年金の記録があること
・双方の合意、または裁判手続きにより分ける割合を定めたこと。
・請求期限(原則、離婚などをした日の翌日から2年以内)を経過していないこと。

2.3号分割制度

2008年5月1日以後に離婚をした場合で、国民年金の第3号被保険者(つまり配偶者の扶養に入っていた)期間があるとき、その期間の厚生年金は、当事者間で1/2ずつに分割することができる制度。どちらか一方の求めによって分割が可能だ。3号分割制度の場合は、合意の必要はなく、手続きを行えば必ず1/2に分割される。

分割するための条件
・婚姻期間中に2008年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者
・請求期限(原則、離婚などをした日の翌日から2年以内)を経過していないこと。

■注意点として、分割できるのは「厚生年金」のみ

2008年当時、「今後の離婚時は年金は半分」とセンセーショナルに報じられた向きもあるが、いくつかの条件があるので注意したい。また年金が分割できるのなら、老後の心配はいらない!と胸を撫で下ろすには少し早いかもしれない。なぜなら、全ての年金が年金分割の対象になるわけではないからだ。

対象になるのは「厚生年金」のみ。国民年金、厚生年金基金、確定拠出年金などは含まれない。当然個人で掛けていた個人年金も対象外だ。つまり、個人事業主等、配偶者が厚生年金に加入していない場合は分割される年金は残念ながらゼロである。この点は注意したい。

しかし、2008年以前の離婚の場合、「年金分割」の制度すらなく、厚生年金も実質分割が不可能だったことを考えると、扶養に入り家庭で配偶者を支えていた側の立場も尊重されるようになってきたことは、大きな転換点として受け止められる。

■第3号分割制度は「事実婚」でも利用できる

合意分割制度とは異なり、第3号分割制度では「事実婚」でも請求が可能だ。婚姻はしていなくても、扶養に入り相手を支えていた場合は当然権利があるとみなされる。

この場合、戸籍上の婚姻関係にないため、扶養に入っていたという証明ができる書類、そしてその関係を解消したとわかる書類(自身の名前で加入した年金書類、同住所からの転出記録など)を提出する必要がある。

■離婚前に「自分がいくらもらえるか」を調べよう

離婚を検討している場合、離婚手続きを行う前にまず「年金分割のための情報提供請求書」を年金機構に提出しよう。この書類を請求することにより、将来自分がもらえる見込み年金額が確認できる。離婚後に行うと、書類請求をしたことが相手に通知されてしまうため、分割前にトラブルになりかねない。そのため離婚手続き前に行っておくのが望ましい。

年金を分割し「分ける側」の場合も、どの程度分けることになるのかを把握することによって、離婚後の生活設計を立てやすくなるだろう。

■離婚のネガティブイメージは変わってゆく

日本では根強かった、世間の目への恐れや離婚に対するネガティブイメージ。しかし、時代の流れとともにそれは変化し、「合わないなら離婚もあり」「無理に夫(妻)と一緒にいる方が、子供にも良くない」という考えを持つ人が増えてきている。

苦しまず自分らしく生きるために、離婚という選択をすることは決して間違いではないはずだ。そして離婚後貧困に陥らないために、年金をはじめとする社会保障等を味方につけて上手に活用することが、当事者同士、そして子供がいる場合は子供にとっても望ましい結果につながるのではないだろうか。

工藤 崇 FP事務所MYS(マイス)代表
1982年北海道生まれ。北海学園大学法学部卒業後上京し、資格試験予備校、不動産会社、建築会社を経てFP事務所MYS(マイス)設立、代表に就任。雑誌寄稿、WEBコラムを中心とした執筆活動、個人コンサルを幅広く手掛ける。ファイナンシャルプランナー(AFP)。

最終更新:6月8日(水)17時10分

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