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心地よい地域社会は、「共感」から生まれる-まちづくりをもっと楽しくする新案「共感コミュニティ」とは

ZUU online 6月8日(水)18時40分配信

■はじめに

東京の多摩地域では、人々の共感に基づくゆるやかなつながりを活動のベースにした「共感コミュニティ」が、ここ数年目立って増加している。

共感コミュニティの成り立ちには、現代の地域社会に不可欠な要素が内包されており、様々な共感コミュニティが生まれることは、地域社会にとって有益だと考える。

■多摩地域の共感コミュニティ

◆共感コミュニティの実例

「国立本店」(国立市)は、本とまちをテーマにしたコミュニティスペースである。週5日概ね午後1時から6時まで開店しており、誰でも入店することができる。運営するのは、「ほんとまち編集室」という35人からなるグループで、メンバーが一人ずつ概ね月1回必ず店番をする。

コミュニティスペースの使い方は店番に委ねられているが、好き勝手なことをしていいわけではなく、店番として、入店した人とのコミュニケーションが求められている。

店内には「ほんの団地」と呼ばれる本棚があり、希望するメンバーは40室ある本棚の一つに入居できる。「ほんの団地」は、本を通じたコミュニケーションの場として備えてあるもので、定期的にテーマを決めて、入居者各自が、入店した人に見てもらいたい本を並べている。手に取った本を通じて、入店した人同士の交流が生まれることを期待している。

本とまちをテーマに人々がつながる仕組みを用意しているのだ。

家賃や光熱費など、運営に掛かる経費は、メンバーの参加費で賄われており、参加費は一人月4,000円である。毎年メンバーを新規に募集しており、現在は4期目だ。第4期メンバーの募集には28人の新規応募があったという。月々数千円を支払ってまで、月1回店番を行おうとする人が、毎年それだけいるのである。

「ほんとまち編集室」の活動には、店番以外に、本の出版、フリーペーパーの発行などがある。メンバーは自分の興味・関心に応じて、これらの企画を提案し、企画に応じてメンバーから関心のある参加者を募る。

メンバーの中にライターや編集、デザイナーを仕事としている人がいることから本を制作できる環境が整っており、それらの完成度は非常に高い。

このように「ほんとまち編集室」は、基本的に「本とまち」に少しでもかかわりがあることであれば、メンバーがしたいことを全面的に受け入れている。そして、様々な背景を持ったメンバーがかかわって企画を煮詰めていき、メンバーの専門的スキルでしっかりとしたアウトプットを作りだしている。

つまり「ほんとまち編集室」には、メンバー個々の興味・関心を受け止め、実行するゆるやかな関係があるのだ。

◆共感コミュニティの特徴

共感コミュニティの代表事例として「国立本店」を紹介したが、同様な事例に「Chika-ba(ちかば)」(国立市)(*1)、「西国図書室」(国分寺市)(*2)、「西調布一番街つくるまちプロジェクト」(調布市)(*3)、「キョテン107」(日野市)(*4)などがあり、次のような特徴を共通して持っている。

それらの活動は、いずれも個人的な興味・関心事に基づく自発的なものであり、それに共感する者同士のゆるやかなつながりを形成していて、かつそのつながりは外に開かれている。さらに、参加者が楽しげで、前向きという点も共通している。

◆共感コミュニティの3要素

また、これらの事例はいずれも、次の3つの要素を備えている。人々がつながるきっかけを提示する「共感の種」、誰でも入ることができる「開かれた場所」、人と人のゆるやかなつながりを生む仕掛けとしての「つながる仕組み」である。

共感コミュニティの成立には、この3つの要素が欠かせないことがわかる。

■共感コミュニティを育む意義

◆共感コミュニティが地域社会によい効果を与える理由

以上のような共感コミュニティが増えていくことは、次の理由から地域社会によい効果をもたらすと考える。

(1)分かち合いの関係が心地よい地域社会をもたらす

共感コミュニティの参加者は、人とのつながりに価値を見出し、外に開かれた活動によって、同様の人を引き付ける力を持っている。

共感を基につながることは、自分の好きなことが人のためにもなる、人のためにすることが自分のためにもなるという、分かち合いの関係をつくることと考えられる。これがなくても普通に生活できるが、あれば心地よいものだ。共感コミュニティが増えることは、分かち合いの関係を生みだし、暮らしていて心地よい地域社会をもたらすと言えよう。

(2)つぶやきを受け止め合う関係が、地域課題を共有しやすい環境を育む

共感コミュニティには、誰かのつぶやきを受け止め合う関係がある。こんなことができたらいいなという一人のつぶやきを周りの人が受け止め、どうしたらいいかと一緒に語り合い、プロジェクト化して実行する。

こんなこととは、個人的な興味・関心事で、行政が期待する課題解決型の活動ではない。しかし、課題解決型の活動も、日頃から個人的な興味・関心事で発せられるつぶやきを受け止め合う関係がなければ始まることは難しい。

なぜなら、課題解決型の活動が始まるためには、地域課題を住民同士で共有することが必要であり、地域課題を共有するためには、共有しやすい関係がないと難しいからだ。

こうしたつぶやきを受け止め合う関係は今、地域社会に最も求められていることであり、それがあることは地域社会を運営していく上で重要なことではないだろうか。

つぶやきを受け止め合う関係を備えた共感コミュニティが地域社会に増えることは、地域課題を共有しやすい環境を育むことにつながるのである。

(3)地域への眼差しが地域の価値を高めることに貢献する

共感コミュニティの参加者は、自分が暮らす地域に関心がある人が多い。地域の魅力を掘り下げる視点、それを形にするスキルを持った人が、地域に眼を向け、地域の素材を抽出し、それを編集することで地域の魅力を普段と違った角度から浮かび上がらせている。

地域の素材を使って楽しみ、それを受け止める人とも楽しみを共有し、地域への共感の輪を広げようとしている。

共感コミュニティが増えることは、このような地域への眼差しによって、地域の素材を活用し、地域の価値を高めることに大きく貢献するだろう。

◆地域社会で共感コミュニティを育むことへの期待

筆者は、地域社会がより一層共感コミュニティに眼を向けるとともに、共感によるつながりが生まれやすい状況を意識的に用意すべきではないかと考えている。例えば、共感コミュニティの成立に欠かせない3つの要素を導入することである。

同時に行政も、共感コミュニティへのかかわり方や、共感コミュニティを育むための公共施設のあり方などについて検討していく必要があるだろう。

■おわりに

筆者は、これまで課題解決型のまちづくり活動に、関係者としてあるいは専門家として関わる中で、その限界感や閉塞感を感じることが多かった。しかし、共感コミュニティにはそうした状況を変えていく可能性を感じている。

今後さらに共感コミュニティを育む具体方策まで掘り下げていきたい。

(*1)ものづくりコミュニティの工房。会員が工房を利用する際は工房長となって工房を取り仕切る工房長制が特徴的。
(*2)自宅を日曜日だけ図書室として開く取り組み。自分の本を預ける際に「本籍証」にメッセージ記し、返却する際は「旅の記録」に感想などを記す、「本が旅する」と称する貸し借りの仕組みが特徴的。
(*3)商店街のテナントへ、外に開かれた4室のアトリエを設け、入居者の活動によって、日中商店街に訪れる人を増やそうとする活動。人と積極的に関わる中で作品作りを行おうとする人が入居している。
(*4)商店街にあるコミュニティスペース。ここで行われる様々なイベントに共感した人がつながり、新たな共感コミュニティを再生産している。以上、各事例の詳細は基礎研レポート2016.03.31「まちづくりレポート|多摩に広がる共感コミュニティ」http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=52606?site=nli 参照。

塩澤誠一郎(しおざわ せいいちろう)
ニッセイ基礎研究所 社会研究部 准主任研究員

最終更新:6月8日(水)18時40分

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