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秦 基博 いい歌と音があれば心は満たされることを証明した『青の光景』ツアーファイナル/レポート

エキサイトミュージック 6月8日(水)23時0分配信

 
■秦 基博/【HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2016 ―青の光景―】ライブレポート
2016.06.04(SAT) at 東京国際フォーラム ホールA
(※画像6点)

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10周年を記念した初のアリーナツアー開催発表にファン歓喜

2006年のメジャーデビュー以来、印象的な歌声と良質のメロディに心象風景を巧みに乗せて、多くの音楽ファンを魅了している秦 基博。昨年12月にリリースされた約3年ぶりとなる5thアルバム『青の光景』のチャートアクションが、キャリア最高位を記録するなど絶好調をキープしている。アルバムを携えて3月から始まったツアーのファイナルとして、東京国際フォーラム2デイズ公演を行った。

暗がりの中、バンドメンバーとともにステージに現れた秦。「嘘」の青ざめたような、少し物憂げなエレキギターのアルペジオに導かれるように、静かにライブの幕は上がった。嘘というワードを繰り返し歌いながら、その1つ1つがまるで違う意味を帯びて聴こえるこの曲の、冷たさと相反する親密さがなんとも秦らしい世界観だ。続く「ダイアローグ・モノローグ」では、少し歪んだように聞こえる声色を用いて青春の甘苦さをややあっけらかんと歌う。わずか2曲にして、会場は秦 基博ワールドに包まれたのを感じた。

「今日はツアーファイナルにようこそいらっしゃいました! それにしても、天井が高いですね……。それだけです(笑)。アルバム『青の光景』のツアーですが、いろんな曲を交えて皆さんと楽しみたいです」

そう呼びかけると、エレキからアコギに持ち替えて「花咲きポプラ」を演奏し、続いて「ROUTES」の軽快なストロークを奏で始めた。待ち構えていたオーディエンスは客席から立ち上がり、手拍子を打ち鳴らし始めた。タフで骨太なバンドサウンドを従えて、<飼い慣らせ 不安を/はみ出せばいいんだ>と吠える秦。力強いメッセージは大勢の背中を押しただろう。


かと思えば、ピアノのイントロが鳴っただけで歓声があがった「鱗(うろこ)」のようなウォームで少し内省的なナンバーでは、語りかけるように歌うなど、表情を次々と変えてゆく秦の歌声にどんどん引き込まれていくのを感じた。

少し乱暴な言い方をすれば、秦の歌声は美しくも奥深いカオスのようなものかもしれない。ナイーヴで傷つきやすい少年性から雄々しさや猛々しさ、優しさ、そして冷酷さまでを自在に操り、ごちゃ混ぜにして秦 基博という歌声にしてしまう。ピュアで繊細でありながら、ひび割れたようなザラついた感覚に一度ハマったら、その混沌の渦から抜け出すことは至難のワザだろう。

たった一人でギターをつま弾く弾き語りコーナーでは、秦の歌声マジックがさらに威力を発揮。「美しい穢れ」では、狂おしいほどの思いを時折ため息まじりに歌い会場をうっとりとさせた。大正時代の流行歌をカヴァーした「恋はやさし野辺の花よ」は鳥肌もののファルセットを交え、温かみと透明感いっぱいに歌い上げた。ピアノとウッドベースも加わった「休日」では、重厚で温厚なサウンドとやさしい歌声で夢の世界へと誘ってくれた。

一方、バンドを再び迎えた「Fast Life」ではアーシーなパーカッションやジャジーなピアノ、南国を思わせる湿度の高いムーディーなバンドサウンドと呼応するように、性急なギターや巧みなフェイクを披露し、観客から大歓声が沸き起こった。


その熱い余韻に浸る間もなく、「ディープブルー」ではまるで深海へと潜るような重厚なサウンドと賛美歌のような清らかなボーカルで観客を圧倒。ストリングスを従えた「水彩の月」では俯いたように歌う声と言葉によって、男の切なさが胸に染み入るようだった。

個性のまるで違う楽曲を歌と演奏、そしてシアトリカルな映像で魅せつける。ちなみにこの日の映像は、国内外で評価の高い映像作家で、秦とはこれまでに何度も作品をコラボしている島田大介によるもの。「青」の持つ透明感から暗さ、温度感までも見事に楽曲とリンクさせて魅せていた。そもそも映像イメージがわきやすい秦の楽曲世界と相まって、とても音楽が立体的なものに感じられた。

そんな素晴らしい音世界で客を魅了しながら、MCとなると……(笑)。言おうとしたことを噛んだりするのは序の口で、言葉に詰まると客席から「ドンマイ」と慰めとも取れる合いの手が次々に飛んでくる。「初めて見に来てくれた人もいると思いますが、思いの外彫りが深い(顔立ちなの)でびっくりしたでしょう(笑)。彫りの深さで言えば、草刈正雄か秦 基博か、です」と言い出し、爆笑(もしくは失笑)に。美しい楽曲との壮大なギャップもまた、萌えるポイントだったりするのだが。

「ファイナル、最後まで楽しみましょう」の呼びかけで、怒涛の後半へ。疾走感溢れるアップチューン「デイドリーマー」の勢いに追いつこうと、観客も再びシートから飛び上がって応戦していた。ヒリヒリとした緊張感に耳を奪われる「Q & A」では、吠えるように歌い激情を吐き出した秦。「1、2、3、4」とカウントを取って歌い始めた陽気なナンバー「グッバイ・アイザック」。続く「あそぶおとな」では、ラララで会場が大合唱に包まれた。


「大きな声を出した後は、体を動かしましょう」と言って、振り付けのレクチャーを自ら行った「スミレ」。実はこの曲は秦が「みんなと楽しめる曲が欲しいと思って振り付けをつけようと思った」のだそう。「でも、なぜか結果的に僕が踊ることになりました(苦笑)。でも僕でも踊れたので皆さんも踊れるはず。Shall we dance?」

すみれ色の衣装とヘッドドレスを身にまとった「スミレちゃんダンサーズ」もステージに現れ、みんなで歌い踊っていくうちに、誰もが自然と笑顔になり温かな空気に包まれた。「見てて気持ちが悪いくらい振りが揃ってました(笑)」と、あまり素直ではない褒め言葉もまた照れ屋の秦らしい。

「ギターを持ってから、ずっと歌って弾いてきました。自分自身が投影されるのがシンガーソングライターですが、聴いてくれる人の歌にもなってほしいと願いながら歌っています」


そう語った後にアコギをつま弾きながら歌い始めたのは「ひまわりの約束」。秦のソングライターとしての才能とボーカリストとしての魅力を素直に具現化した、温かでエバーグリーンなこの曲は、確かに多くの人にとって自分の歌になったにちがいない。会場に来ていた子供達が、真剣な表情でこの曲に聴き入り、体を揺らしていた姿がとても印象的だった。

本編の最後、「Sally」を歌う直前に秦が語った言葉も心に響いた。

「自分の中にあるものを言葉にするのは難しい。だから『青の光景』を作る時に、イメージを少しずつ重ねて、(音楽という)形にしていきました。音楽っていいなと思うのは、いつもの景色が音楽があることでちょっと違って見えること。自分の作品もそうであってほしいと思いながら作りました。僕の音楽に触れて今日という1日が少し変わっていけば嬉しいです」

旅立ちを思い起こさせる曲は、必ずや聴き手をどこかへと連れて行ってくれただろう。


絶え間ないアンコールの声に誘われて、青いグラデーションのツアーTシャツ姿で再登壇した秦。星を散りばめたような幻想的な照明の中で「聖なる夜の贈り物」を歌うと、客先からは温かな手拍子が起きたのだが、歌い終えた秦は「クリスマスの歌を作るとこうなるんだなってことがわかりました」と苦笑い。けれど、個人的には季節外れのクリスマスも悪くない。いや、全然悪くない。……などと思っていたら、ここで不意に重大発表が!

この秋、11月に10周年を迎える秦が、初めてとなるアリーナツアーを敢行することが大きくスクリーンに映し出されると、観客は次々に歓喜の声をあげたのは言うまでもない。

オールラストで、再会を誓うように弾き語りによる「僕らをつなぐもの」を歌い、深々と頭を下げてからステージを後にした。いい歌と音があれば、心は満たされる。それを改めて秦 基博というシンガーソングライターに教えてもらったような気がした夜だった。
(取材・文/橘川有子)

≪セットリスト≫
1. 嘘
2. ダイアローグ・モノローグ
3. 花咲きポプラ
4. ROUTES
5. 鱗(うろこ)
6. 美しい穢れ
7. 恋はやさし野辺の花よ
8. 休日
9. Fast Life
10. ディーププルー
11. 水彩の月
12. デイドリーマー
13. Q & A
14. グッバイ・アイザック
15. あそぶおとな
16. スミレ
17. ひまわりの約束
18. Sally
<Encore>
1. 聖なる夜の贈り物
2. トラノコ
3. 僕らをつなぐもの

≪リリース情報≫
Album
『青の光景』
2015.12.16リリース

【初回生産限定盤】CD+DVD
AUCL-192~193 / ¥4,167(税抜)
【通常盤】CD
AUCL-194 / ¥3,000(税抜)

[収録曲]
1. 嘘
2. デイドリーマー
3. ひまわりの約束
4. ROUTES
5. 美しい穢れ
6. Q & A
7. ディープブルー
8. ダイアローグ・モノローグ
9. あそぶおとな
10. Fast Life
11. 聖なる夜の贈り物
12. 水彩の月
13. Sally
<DVD> ※初回生産限定盤のみ収録
Behind of“青の光景”~interview, recording & live~
「Q & A」from 世界遺産劇場 -縄文あおもり三内丸山遺跡-
「ひまわりの約束」from 世界遺産劇場 -縄文あおもり三内丸山遺跡-
「言ノ葉―Makoto Shinkai / Director's Cut」MUSIC VIDEO

≪ライブ情報≫
【秦 基博 10th Anniversaryアリーナツアー】
2016年11月1日(火)横浜アリーナ
2016年11月4日(金)5日(土)大阪城ホール
and more …
※詳細は近日発表

【F.A.D YOKOHAMA 20th Anniversary 秦 基博 SPECIAL LIVE ~WELCOME BACK TO YOUR F.A.D~】
日程:2016年6月20日(月)F.A.D YOKOHAMA
出演:秦 基博、皆川真人(key)、松室政哉(オープニングアクト)

【熊本地震復興チャリティーコンサート】
2016年6月22日(水)NHKホール
出演:ひめ風(南こうせつ・伊勢正三)、さだまさし、秦 基博、他

【J-WAVE LIVE SUMMER JAM 2016】
2016年8月20日国立代々木競技場第一体育館
出演:スガシカオ、Superfly、秦 基博、他

【Augusta Camp 2016 ~produced by 秦 基博~】
2016年9月17日(土)富士急ハイランド コニファーフォレスト
出演:秦 基博、杏子、山崎まさよし、岡本定義(COIL)、あらきゆうこ、元ちとせ、スキマスイッチ、長澤知之、さかいゆう、浜端ヨウヘイ、竹原ピストル、松室政哉、他

最終更新:6月9日(木)22時45分

エキサイトミュージック