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舛添氏会見「責任追及をかわす『第三者』にやられっぱなし」國廣弁護士が分析

弁護士ドットコム 6月8日(水)10時27分配信

政治資金の私的流用などの疑惑をめぐり、東京都の舛添要一知事が6月6日に記者会見で発表した「第三者」の弁護士による調査報告。舛添氏から依頼を受けた元検事の佐々木善三弁護士らがまとめ、ホテル宿泊費や美術品購入などの支出を「不適切」と認定しながらも「違法性はない」と結論づけた。

企業が不祥事を起こした場合、外部の専門家からなる「第三者委員会」を設置することがあるが、今回、舛添氏の言う「第三者」による調査報告をどう評価すればいいのだろうか。さまざまな第三者委員会の活動について評価してきた「第三者委員会格付け委員会」の副委員長をつとめる國廣正弁護士に聞いた。

●「第三者」というだけでは意味をなさない

ーー舛添氏の疑惑をめぐる調査報告や記者会見をどう見ましたか?

「第三者」という言葉のマジックに、マスコミがうまくのせられてしまったと思いました。つまり、「第三者」と「第三者委員会」を混同して、舛添氏側がつくった枠組みにうまく引きずり込まれたということです。

舛添氏が、これまで何十回も「第三者の調査」という言葉を繰り返し、あたかも「第三者委員会」が設置されるようなイメージが生まれていたからでしょう。しかし、実際には「第三者委員会」ではなく、単なる「第三者」でした。

ーー「第三者」と「第三者委員会」はどう違うのでしょうか?

「第三者」とは、自分やその代理人・弁護人以外の人のことです。そもそも、代理人や弁護人にならなければ「第三者」ですから、佐々木弁護士でも「第三者」になります。実質的にはほとんど意味をなしません。

一方で、企業不祥事における「第三者委員会」は、社長がメンバーを選任しますが、社長のためではなく、株主や従業員、消費者など、すべてのステークホルダー(利害関係者)のためのものです。つまり、ステークホルダーが依頼者ですから、社長にとって不利なことも報告書に書いていきます。

そして一番大きな違いは、第三者委員会が「第三者<事実調査>委員会」であることです。第三者委員会は、ステークホルダーの目線に立って、企業不祥事を起こした人の動機を含めて、その不祥事の実態を徹底的に究明していきます。それによって、その不祥事の「真のすがた」を明らかにします。

●都民が知りたい「ファクト」を明らかにすべきだった

ーー今回の「第三者」の調査は「法的責任」の判定がメインでした

本来の第三者委員会は、法的責任を判定しません。「法的責任があるかどうか」は、そこから先の話だからです。今回の報告書には、一部に「道義的」な評価がありましたが、ほとんどが「法的責任」の判定です。つまり、調査対象がまったくちがうのです。

佐々木弁護士も切れ者だから、マスコミがそのあたりを誤解していることがわかっていた。だから、記者会見でも「第三者委員会ではない」と指摘していたのです。

それにもかかわらず、記者たちは「調査は十分だったのか?」といった質問に終始しました。そもそも、政治資金規正法は「ザル法」なので、「違法性がある」という結論になるわけがない。まったく土俵(=調査対象)が違うわけですから、佐々木弁護士にやられっぱなしだったわけです。

ーー今回はどういう調査をすべきだったのでしょうか?

真の意味での第三者委員会で調査すべきだったと思います。さきほど、企業のステークホルダーは株主や従業員だといいましたが、都知事のステークホルダーは都民です。都民が知りたいファクト、知るべきファクトを都民目線から調査して、明らかにすべきだったと思います。

ーー都民が知りたい「ファクト」とは?

都民が知りたいのは、舛添氏に都知事としての「資質があるのか?」ということです。そのための判断材料です。

たとえば、「舛添知事がどんな意図で漫画を経費にしたのか?」「そのときどんな気持ちだったのか?」「家族との宿泊費を経費にすることをどう考えるのか?」「恥ずかしいと思っているのか?そうでないのか?」など、舛添氏の真意、つまり彼の言葉で語られるものです。

ーーしかし、舛添氏は<自分の言葉>で語りませんでした。

自分の言葉で語らず、すべて「第三者」にまかせるなら、都民目線の調査にすべきでした。しかし、「第三者」といいながらも「第三者委員会」でなく、「第三者法律委員会」というべき組織をつくって逃げ切ろうとしたわけです。

●責任追及の矛先をかわした「優れものの弁護団」

ーー今回の「第三者」の弁護士たちについてどう評価しますか?

優秀な「刑事弁護人」という印象です。しかも、「第三者」のイメージができあがっているから、元検事という権威も重なり、佐々木弁護士から強くいわれると、誰も反論できませんでした。

そして、マスコミの思い込みを利用して「違法ではない」という路線を打ち出しつつ、一部に「不適切」という判定をすることで、マスコミに若干のサービスをしながら、舛添氏の説明責任に対する矛先をかわすという「優れものの弁護団」といえます。

ーーマスコミはどう批判すべきだったのか?

まず、「第三者」と「第三者委員会」の区別がつかないまま、舛添氏を叩こうとしても仕方がなかったと思います。スポーツにたとえるなら、向こうは相撲をやっているのに、マスコミはボクシングをやろうとしている状況でした。そういうときに、「相撲のやり方が悪い」と言っても仕方がありません。

だから、弁護士に対しては「あなたが調査したのは、法的判断なので、われわれが求めていたのと全然違う」と片付ければよかったんです。そして、舛添氏に対しては「あなたが選んだ第三者は、都民が知りたいことを調べる人じゃなかった」と追及すべきだったでしょうね。

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:6月8日(水)10時27分

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