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アグネス、「子供を兵士にしないで」とスーダン民兵司令官に要請

ニュースソクラ 6月8日(水)11時50分配信

アグネスのなぜいま(3) 3ヵ月後に全員解放される

 近年、特にアフリカと中東の紛争地で、子供兵士の姿が目立ちます。ISIS(イスラム国)が子ども達を集めて訓練している映像を公開、人々に大きな衝撃を与えました。

 ナイジェリアのボコハラムが女子を拉致して、自爆テロの仕掛け人として使っている事も、度々報道されています。私は日本ユニセフ協会大使として、子供が兵士として使われている国々を何度も訪ねました。

 昨年4月に視察した南スーダンは、今でも内戦がつづいています。ここでも子ども達が兵士として使われていました。

 いくつもの武装勢力が存在する南スダーン。私は同国の中部地区で内戦の激しいピボ地域で一番の勢力を保っているコブラ派の本拠地を訪ねました。ヘリコプターで近くまで行き、デコボコ道を1時間。たどり着いたのはユニセフが作ったリハビリセンター(囚われた時のトラウマを癒したり、職業訓練など社会復帰のための施設)です。

 実はユニセフは、コブラ派の司令官と交渉を続け、3000人の子供兵士のうち1300人を、段階的に解放する約束を取りつけていました。それで、すでに解放された子ども兵士のためのリバビリセンターを作ったのです。

 そこには6歳から18歳の子供達600人余りがいました。大きな木の下の青空学級で、子供たちは歌を歌い、遊んでいました。「こんなに遊んでていいの」と一日に何回も確認する子供たち。彼らは遊ぶことを忘れかけていたのです。

 私の訪問の前日に解放された10代の子供たちは「親は殺されてしまった。どうやって生活して行けばいいか分らない」「解放されたのはとても嬉しいけど、食べていけない」と将来に対する不安を隠せない様子でした。

 今、ユニセフは、子供たちの親戚を探して村に戻す活動や、職業訓練を始めています。しかし成果が上るのはまだ先のことです。

 私は解放されていない子供たちの事が心配で、コブラ派の司令官デビッドヤウヤウさんに面会を申し入れました。運良く許可が下りて、街はずれにあるコブラ派の本部に向かいました。

 平屋の本部は、武装した大勢の軍人たちに守られていました。暗い部屋の中で、長老達に囲まれ、デスクのいちばん後ろに座っている大男がデビッド司令官でした。私は声の震えを抑え、笑顔を作って、司令官と交渉を始めました。

 「子供は兵士にしてはいけないですよね」と話しました。
 「その通りです」と、思いがけない答えが返ってきました。
 「子供は愛する家族と暮らし、学校に行くべきです」と司令官。
 「では、なぜ子供を兵士にしたのですか?」と聞いきました。
 「わざとではない、親を亡くした子供達が軍に付いてきたのです」と司令官。
 「では残されている子どもたち全員を解放してください」そう迫ると、司令官は戸惑いながら、「ユニセフには感謝している。今までは子供を解放したくてもできなかった。今はユニセフが受け皿を作ってくれたので、できるようになった」と言った後、話題を変えて、はっきりした返事をしてくれませんでした。

 その時、急に周りが慌ただしくなり、軍人たちが出入りし始めました。

 「もう帰りましょう」と、ユニセフの現地スタッフにうながされながらも、私は「ぜひ、検討してください。私たちは責任を持って子供たちのリハビリをします。お願いします」とダメ押しをしました。

 司令官は立ち上がり、握手しながら私の目をジーと見ました。私は無言で、精一杯、子供たちを助けたい気持ちを込めて、その目を見つめ返しました。

 その時は、どこまで司令官を説得できたのか、まったく自信がありませんでした。

 それから3ヶ月。

 「コブラ派の子供兵士全員が解放された!」と、現地のユニセフから知らせが届きました!その時の喜びは言葉になりません。

 南スーダンだけでなく、一昨年訪ねた中央アフリカでも、コンゴでも、子供たちは戦争の道具として使われています。その内、解放されるのはほんの一部で、今でも生き地獄のような生活を強いられている子供たちが大勢いるのです。

 世界中に30万人いると言われている子供兵士。政府軍、反政府軍、武装勢力、テロ組織、世界のあらゆる軍隊の49%が未成年の兵士を使っているのです。国連はこのような人権侵害を非難していますが、現実は厳しいものです。

 一人でも多くの子供を戦争の悪夢から救いたい。そのために、今日もユニセフの仲間は色々な国で軍隊を説得しています。いつになったら戦争がなくなるのか?いつになったら全ての子供兵士が解放されるのか?

 まだまだ先は見えないけれど、地道にひたすら活動を続けるのみです。

■Agnes M Chan(教育学博士)
1955年香港生まれ。本名金子陳美齢。72年日本で歌手デビューしトップアイドルに。上智大学を経て、トロント大学(社会児童心理学)を卒業。94年米スタンフォード大学教育学博士号取得。98年日本ユニセフ協会大使。2016年ユニセフ・アジア親善大使も兼務。

Agnes M Chan (教育学博士)

最終更新:6月8日(水)11時50分

ニュースソクラ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。