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南アルプスから海外へ。富士電機の“スマート工場”はなぜ説得力があるのか

ニュースイッチ 6月8日(水)8時40分配信

熱利用の名手、まず自社工場でトレーニング

 富士電機の山梨製作所(山梨県南アルプス市)は2011年の東日本大震災後の計画停電を経験し、最新鋭のスマートファクトリーに生まれ変わった。導入したガス発電機1基と自社製の燃料電池4台が、半導体製造に必要な電力全量を供給している。安定操業のためにエネルギーを自給自足に切り替えた。

「熱利用がポイント」。産業インフラ事業本部組立技術部の白井英登技術第一課長はこう強調する。ガス発電機と燃料電池の稼働で生じる排熱を回収し、稼働に熱が必要な吸収式冷凍機に送って冷水製造に使っている。もともと吸収式冷凍機には、ボイラから熱を供給していた。排熱利用でボイラの燃料使用を抑えた。

 排熱を使うタイミングは、工場エネルギー管理システム(FEMS)が決める。生産に必要なエネルギー需要をFEMSが予測し、エネルギー使用が最小になるように各機器に指示を出す。

 外気温などのデータも蓄積し、「徐々にビッグデータ(大量データ)化しながら、予測精度を高めている」(白井課長)という。人工知能(AI)がFEMSに組み込まれているのだ。山梨製作所はクリーンルーム設備の更新と排熱利用によって、10年度比35%の省エネ化を達成した。

 同社は13年度、生産形態の違う山梨製作所、東京、川崎、三重の国内4工場をモデル工場に選定してスマートファクトリー化に着手した。山梨製作所の知見は、同じ半導体を製造する松本工場への導入が始まった。ほかの3工場の成果も水平展開がされている。

 社内のモデルとするだけはない。山梨製作所は営業員が顧客に見学してもらう“ショーケース”となっている。東京工場(東京都日野市)のビルで実践した空調の制御技術は、外販している。

 海外展開も始まっている。ソフト面からのアプローチが国内との違いだ。エネルギーに精通する人材が少ない工場に対し、まずは省エネ診断によって電力と熱の無駄をあぶり出す。次にクラウド環境で利用できるFEMSを導入してもらい、常時の計測を始める。そしてFEMSが捉えたデータを根拠に、設備更新の効果を約束する。

 設備投資で終わりではない。日本からの遠隔監視によって現地従業員に助言を続け、自らの運用改善で省エネができる能力を身につけてもらう。「省エネの主治医になる」(白井課長)のが基本スタンスだ。

 日系企業が進出するタイの工業団地をターゲットとしており、15年度は数件の受注があったという。工場を一つずつスマートファクトリー化し、いずれ工業団地全体をスマート化してビジネスを拡大させていく。

<解説>
 社内で実力を証明してから売り出すのと、特に試すことなく「これはいいですよ」と売るのでは、説得力が違う。営業マンとしても、自社で使ってもいないエネルギーマネジメントシステムを他社に薦める気にはなれない。流行のIoTも同じである。

最終更新:6月8日(水)8時40分

ニュースイッチ