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酒小売業の倒産、休廃業・解散ともに増加

東京商工リサーチ 6月8日(水)13時30分配信

 2015年(1-12月)の「酒小売業」の倒産は44件(前年36件)、負債総額は50億2,800万円(同27億7,500万円)で、件数、負債ともに前年を上回った。2015年4月、福井地裁に負債14億7,700万円(保証債務含む)を抱えて破産を申請した三田村酒店(TSR企業コード:014213109、個人企業、福井県)は、関連会社で日本酒製造を手がける寿喜娘酒造(有)(TSR企業コード:600096378、法人番号:6210002012099、福井県)の倒産に連鎖したが、こうした大型倒産が負債を押し上げた。
 一方、2016年1-5月の倒産は10件(同29件)、負債合計は3億7,800万円(同32億3,500万円)で、件数、負債ともに前年を下回り、落ち着いて推移している。
 こうした中、5月27日に酒類の過剰な安売りを規制する改正酒税法が成立した。免許制度が存在する酒小売業では1998年以降、需給調整規制を段階的に緩和し、ディスカウント店や量販店、スーパーなどの新規参入を促してきた。だが、今回の酒税法の改正は、一連の規制緩和に歯止めをかけるもので消費者に支持された安売り商法で成長してきた企業に大きな影響を与えることが想定される。倒産が小康状態にある酒小売業界に一石を投じる可能性もあり、しばらく動向から目を離せない。

 2015年(1-12月)の酒小売業の倒産は44件、負債総額は50億2,800万円で、件数、負債ともに前年を上回った。また、休廃業・解散は倒産の約4倍、163件に達し、2012年から4年連続で増加している。事業承継の難しさの背景には、業界の先行きへの不安も無視できない。
 国内人口の減少や高齢化の進行、若者の酒離れなどで、国税庁によると酒類販売数量は1994年度の964万2,000キロリットルをピークに右肩下がりで推移し、2014年度は833万1,000キロリットルまで減少している。この間、政府は2003年に「酒類小売業者の経営改善などに関する緊急措置法」を制定し、酒小売業者の転廃業を支援してきた。酒類小売免許場の業態別構成比率は、一般酒販店が1995年度の78.8%から2013年度は31.3%、コンビニエンスストアが11.8%から32.6%と、酒類を購入する場所はこの20年で大きく様変わりした。
 需給調整規制の緩和や消費者のライフスタイルの変化に対応してきた酒小売業者だが、2016年5月の改正酒税法により、再び変革を迫られる可能性が出てきた。法改正で小売店は仕入価格を下回るような不当廉売が発覚した場合、罰金や酒類販売免許の取り消しの可能性もある。これは需給調整規制の緩和後に急成長したディスカウント店や量販店への影響が大きいだろう。
 2016年4月に負債1億3,400万円を抱え、東京地裁から破産開始決定を受けたマックコーポレーション(株)(TSR企業コード:310322391、法人番号: 4030001007789、さいたま市)は、店頭小売や業販で業容を拡大し、1990年頃には売上高は約40億円を計上した。しかし、デフレの進行や競合などで利益が落ち込み、店舗閉鎖などのリストラ策で対応したが経営は改善しなかった。
 冒頭の三田村酒店、マックコーポレーションは「街の小さな酒屋さん」ではない。倒産を負債額別にみると、2014年3件だった負債1億円以上の倒産は2015年は8件に増えている。苦境に陥っているのは小・零細規模の小売店だけではないことがわかる。
 2016年(1-5月)の酒小売業の倒産は10件にとどまり、負債合計も3億7,800万円(前年同期比88.3%減)と大幅に減少している。だが、今回の酒税法改正で経営規模の大きいディスカウント店や量販店の安売り商法に逆風が吹くことになる。これまで豊富な商品構成と安売り商品に目を向けていた消費者が今後、どう動くか流動的だ。酒類販売店は消費者ニーズを把握せず、集客力を高める努力もしないまま法改正に胡坐をかいていては、消費者からそっぽを向かれる可能性が高いことを認識すべきだろう。

東京商工リサーチ

最終更新:6月8日(水)13時30分

東京商工リサーチ