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亭主の小遣いを減らす前にすべきこと 支出の見直しは順序が大切

THE PAGE 6/12(日) 10:00配信

 老後に向けた資産づくりを考える上において、支出の無駄を見直すことか欠かせません。もちろん老後資産づくり以前の問題として現在の生活を考えた場合でも支出の見直しをおこなうことは生活を少しでも楽にする上で重要なことは言うまでもありません。

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 問題はそのやり方、中でもどういうものから見直していくかという順序が極めて大切です。一般的に言われているのは「固定費」を見直すべきだということです。これは間違いありません。企業活動の中でも固定費をいかに削減するかということが収益の増大に結びつくように家計においても固定費を削減することは効果が大きいといえます。

亭主の小遣いを削ってはいけない

 ただ、やっかいなのは、固定費はなかなかわかりにくいということです。例えば家計の見直しということでいつも真っ先にやり玉に挙げられるのは「亭主の小遣い」です。確かにこれは“固定費”です。しかもわかりやすい。ところが亭主の小遣いを削ることが果たしてどれくらい家計の改善に役立つかは疑問です。なぜなら一般的に夫は家計に最大のキャッシュフローをもたらす存在であることが多いからです。そういう「存在」の働くモチベーションを下げることは一時的にわずかな支出の削減にはなっても中長期的な収入拡大にはつながらない可能性があります。

 一般的に支出の見直しとなると、固定費か変動費かではなく思いつきやすいものから実行していくという傾向があります。すなわち、(1)日常生活費→(2)教育費→(3)住宅ローン→(4)保険、といった順番に見直していく人が多いようです。ところが支出削減の効果を考えると実はこの順番は全く逆なのです。

最も効果が高いのは保険とローンの見直し

 家計の支出で最も削減効果があるのは、保険とローンです。日本の一世帯当たりの生命保険料支払い額は年間で38万5000円だそうです(※生命保険文化センター調べ)。1カ月にすると約3万2000円になります。生命保険が必要と思われるのは一家の働き手が1人しかいなくて子どもが小さい場合です。そんな場合に、公的年金の遺族年金や、サラリーマンであれば会社の弔慰金なども調べた上で、当面の生活に困らない金額に該当する分だけ、保険を購入すればいいのです。にもかかわらず“貯蓄感覚”で、決して有利とはいえない保険に入り続けるぐらいなら、その分をやめて貯蓄に回したほうがずっと賢明です。

 このようにひとつひとつ考えると、かなり無駄な保険にたくさん入っている事実に気づかされます。同じようにローンも昨今のような超低金利であれば、シミュレーションをし、借り換えに伴う諸経費と金利負担の差などを考慮した上で効果があるのであれば実行すべきでしょう。保険とローンという大きな2大固定費を見直すことでかなり家計改善になると思います。

 ただ、亭主の小遣いや家中の電気をこまめに消して回るといった具体的でわかりやすい方法に比べると、保険やローンは仕組みをよく調べた上で数字できちんとシミュレーションする必要がありますからかなり面倒です。同じようなことが企業でも起こっています。

 企業においても景気が悪くなって企業業績が悪化すると、まず実行されるのは3Kといわれる「交通費」「交際費」「広告宣伝費」の削減です。「タクシーは使うな!」「宴会は一切禁止!」「広告はすべて取りやめ!」、これらは非常にわかりやすいです。でも実際に企業業績にとって経費削減で本当に効果があるのは1.製造原価の低減と2.業務プロセスの効率化です。ところが、これらは論理的に考えていかなければなかなか実行は困難です。そこでどうしてもわかりやすい3Kからまず実行ということになるのです。

 固定費の削減についてもすぐに人員削減、リストラということを考えがちですが、雇用慣行の異なるアメリカと違って日本の場合、入社してから一人前になるまでに会社がかけたコストを考えると単純に人を切ってしまうというのは決して好ましいことではありません。また、採用を極端に減らすということも行われますが、年代別に断層が生じることの弊害は私自身、サラリーマン時代にいやというほど味わってきました。そういった安易な人減らし策の前に上記1.と2.にあるような経費削減策をしっかり考えることが優先されるべきでしょう。

 また「コピーは裏紙を使うこと」だの「昼休みは部屋の蛍光灯は消せ」だの、挙句は「トイレットペーパーを2重ではなく1重にしろ」などという失笑を禁じ得ないような対策が出てきます。これらは「こんなに経費削減に取り組んでいるのだ」という心理的効果はあるかもしれませんが、実効的な効果はほとんどありません。

 亭主の小遣い削減策は、「家計の危機」という緊張感を持たせるには一定の効果があるかもしれませんが、実効性はあまりないと考えるべきでしょう。支出の削減は見直す順序が大切ということなのです。

(経済コラムニスト・大江英樹)
日本証券アナリスト協会検定会員、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行動経済学会会員。著書に『定年楽園』『その損の9割は避けれる』(三笠書房)『老後貧乏は避けられる』(文化出版局)、最新刊に『はじめての確定拠出年金投資』(東洋経済新報社、6月10日発行)がある。

最終更新:6/12(日) 20:28

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