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保育園建設に近隣住民が「家屋の資産価値が下がる」と反対、どう考えるべき?

弁護士ドットコム 6月9日(木)10時25分配信

保育園に入りたくても入れない「待機児童」の問題がクローズアップされる中、待機児童解消のために保育園を増設しようとしても、近隣住民の反対で中止や延期に追い込まれるという事態が生じている。

弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、家の裏で「保育園の遊戯棟」を増設工事中だという女性から、「保育園が建設される事による家屋の資産下落は3~5割と聞き その事で何か手立てはないものか」という相談が寄せられている。

保育園増設を進めたい親や行政の事情と、建設に反対する住民の事情との折り合いをどうつければいいのだろうか。保育の問題に詳しい大井琢弁護士に意見を聞いた。

●住民が受ける影響が「受忍限度」と言えるかがカギ

「保育園の建設に反対する住民の事情はさまざまですが、報道などをみると、(1)騒音の問題、(2)周辺道路の混雑の問題、(3)子どもの安全の問題、そして今回の相談のような(4)資産価値下落の問題などがあるようです。

これらの問題はいずれも、保育園の建設に限らず、周辺にできる施設によって住民が受ける影響が、『受忍限度』(我慢すべき限度)といえるかどうかの問題です」

大井弁護士はこのように述べる。

「先ほど述べた(1)から(4)までの問題は、保育園を建設する側、あるいは保育園を利用する側の利益と、住民の利益とを比較した上で、保育園の建設によって住民が受ける影響が『受忍限度』を超えるようであれば、保育園の建設を認めるべきでない、あるいは、(1)から(4)までの問題を解消、軽減するような措置がとられるべきである、ということになります。

それぞれの問題を見ていくと、(1)騒音の問題、(2)周辺道路の混雑の問題、(3)子どもの安全の問題は、解消もしくは軽減するような対策がもともとあります。

例えば、(1)騒音の問題については、保育園を建設するにあたって、騒音を『受忍限度』内に軽減する措置を採ることができるはずです。また、(2)周辺道路の混雑の問題や、(3)子どもの安全の問題などは、園内に十分な駐車場やお迎えスペースを設けたり、保育園の周辺道路の歩道を整備するなどの措置をとることができるでしょう。

もちろん、これらの措置にはお金がかかります。しかし、少なくとも認可保育所については、認可保育所が市区町村に代わって、保育の実施義務を果たしているのです。したがって、これらの措置を市区町村が責任をもって果たすか、これらの措置を採らせるために必要十分なお金を認可保育所に交付するべきなのです」

●保育園ができると家の資産価値は下がる?

保育園ができることによる「家の資産価値下落」については、どのように考えられるのだろうか。

「保育園がゴミ処理場のような迷惑施設であって、建設されたから直ちに資産価値が下落する、とは、必ずしも言えないように思われます。もちろん、先ほど述べた(1)から(3)までの問題について、『受忍限度』を超えるような保育園であれば、迷惑施設と言われても仕方がないかもしれません。

しかし、『受忍限度』内であれば、そうは言えず、保育園が建設されたからといって、ただちに資産価値が下落するとは言えないでしょう。むしろ、子育て世代にとっては、家の近くに保育園があることはメリットであり、その意味で資産価値が高まるとも考えられるのではないでしょうか」



【取材協力弁護士】
大井 琢(おおい・たく)弁護士
そよかぜ法律事務所(沖縄弁護士会)弁護士、沖縄弁護士会貧困問題対策委員会委員長。保育を中心とした0~5歳児への早期支援によって子どもの貧困を解消できるとの信念のもと、保育や待機児童などの問題に取り組んでいる。
事務所名:そよかぜ法律事務所

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:6月9日(木)10時25分

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