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ネット難民、少年院…孤立の子5年支援 NPO男性「必要なのは愛」

埼玉新聞 6月9日(木)10時30分配信

 家族や社会から孤立した子どもたちの自立を支える県東部のNPO法人「子どもの家足立」。創設した竹中ゆきはるさん(45)=仮名=は、自らが少年院に入った経験を語り、子どもたちに寄り添う。子どもの家の創設から5年を迎え、11日に埼玉県草加市でイベントを開く。

■教官との出会い

 中学2年のとき、知人の連帯保証人だった父親が借金を背負った。

 「社会人の兄から“俺たちがお金出してやるから高校、大学に行け”と言われた。自分のせいで兄たちに迷惑を掛けると分かった」

 複雑な思いが竹中さんを暴力へと駆り立てた。生徒会長から暴走族総長へ。3度の傷害事件を起こし逮捕、少年院に送致された。

 東北少年院で電気科指導員の教官と出会った。院内で電気の勉強に関心があった竹中さんを支えた。出院後も連絡を取り、電気の知識や資格の取得について細かい指導を受けた。出院後、1級電気施工管理技士、第1種電気工事士などの資格を取得した。学業にも精を出した。大検に合格、東京理科大に入学した。

 家庭の事情で大学は中退したが、電気工事会社を起こし独立した。保護観察や少年院を出院した子どもの自立を支援する「協力雇用主」に登録、保護司になった。2011年、NPO法人「子どもの家足立」を設立。自宅の一部を改築し住居を提供、寝食を共にしながら子どもたちの成長を見守った。同時に職業訓練指導員、低圧電気特別教育インストラクターなど電気工事の分野で指導するための資格を次々と取得。子どもたちの指導に力を入れる。

■根底に「戦争」

 子どもを支える根底にあるものは何か。「戦争だ」という。

 「もちろん少年時代の経験がある。ただそれだけではない。深いところで戦争遺児だった父と母への思いがある」。戦後の貧しさを生きた真面目な父と母の背中を見て育った。父は借金を負った。自らかみしめた暴力への依存、貧しさへの不安、損なわれる家族の結び付き、今の子どもたちを取り巻く環境と戦争を重ね合わせる。

 更生施設だけではない。家出やネット難民など孤立した子どもを受け入れてきた。

 「うちに来る子どもたちの中には、Tシャツとズボン、下着だけの子もいる。腹に肉を隠したりする子もいる。食欲が収まると先生、先生ってずっと話し掛けてくる。本当に必要なのは心や愛だったり、ぬくもりだったり」

 子どもの家の創設から5年、支援に向けた模索が続く。子どもたちの自立に向け、手に職を付けさせたい。一時は10人の子どもたちと昼夜を共にしたが、規模を小さくした。竹中さん自身も岐路に立つ。

 「子どもたちが資格を取れる中間施設のような学校をつくりたい。発展的縮小だと言われ、そう考えている」と語った。



 5周年のイベント「足立等と近隣地域の社会を明るくする集会」は11日午後1時、草加市高砂のアコスホールで開催。東北少年院で竹中さんを指導した恩師、埼玉弁護士会元会長の大倉浩弁護士を講師に招く。講演会無料。竹中さんは「子育てに悩んでいる親にぜひ来てほしい。未来を見詰めてみんなで考えよう」と呼び掛ける。問い合わせ・申し込みは子どもの家(電話050・7541・5776)へ。

最終更新:6月9日(木)10時30分

埼玉新聞