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『レゴ スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の世界(6)  “マルチビルド”はたいへんな挑戦だった

ファミ通.com 6月10日(金)18時31分配信

文・取材・撮影:編集部 古屋陽一

●『スター・ウォーズ』というIPに関われて、こんな喜びはない
 ワーナー ブラザース ジャパンより、2016年10月13日発売予定のプレイステーション4、プレイステーション3、プレイステーション Vita、Wii U、ニンテンドー3DS用ソフト『レゴ スター・ウォーズ/フォースの覚醒』。開発者へのインタビューを締めくくる形で、レゴ・チーム・リード スティーブン・ベイト氏と、レゴ・インテグレーション担当のマーティン・パーマー氏へのインタビューをお届けする。

[『レゴ スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の世界]
(1)“真の”『スター・ウォーズ』体験の実現を目指して“レゴ ゲーム”はここまで進化する
(2)本作は『スター・ウォーズ』史上最高のゲームになる! TT Gamesのキーパーソンも大きな手応え
(3)“これぞ『スター・ウォーズ』の世界だ!”という想い出を可能な限り再現している
(4)「リアルな動きがキャラクターに生命を吹き込む」
(5)「レゴを引き立てるために、背景はリアルにする」

――本作におけるおふたりの役割を教えてください。

マーティン 僕の部署は、“レゴ ゲーム”に出てくるすべてに関与しています。レゴにはふたつのカテゴリーがあって、ビークルやアイテムはスティーブンのところで担当しています。それとは別に、レゴの構築があります。レゴの構築というのは、“レゴ ゲーム”に出てくるインタラクト(相互に作用する)できるもので、壊すのか、組み立てるのか、アニメーション化するのか……といったことに関わっており、いわば“レゴ ゲーム”のプレイメカニズムですね。

――本作でとくに注力したポイントは?

マーティン “マルチビルド”ですね。“マルチビルド”を導入したのは、本作が初めてなんです。“マルチビルド”では、プレイヤーには複数のオプションがあり、同じブロックの山を使って、一旦壊した後で、そのパーツを使って組み立て直すことができたりします。毎回同じものを組み立てるのではなくて、何を組み立てたいか選択の中から自由に決められるんです。“マルチビルド”は、レゴ構築部分のプロジェクトでもっとも力を入れたところです。

スティーブン ビークル部の観点で言うと、もっとも注力しているのは、“レゴ ゲーム”に出てくるすべてのビークルを、子どもが実際に組み立てられるようにするということでした。『スター・ウォーズ』のIPはとにかく膨大で、購入して実際に組み立てられるセットはすでにたくさん出ているのですが、一方で、レゴでサポートしていないものもあります。その場合は、レゴのガイドラインに沿って、僕たちが設計することになるんですよ。一例を挙げると、“マイクロファイター”ですね。本作では、“マイクロファイター”と呼ばれるかわいいミニチュアの乗り物が登場するのですが、オリジナルのビークルのエッセンスをもとに、もっとも小さいパーツを使用して、作り上げているんですね。しかも、子どもが組み立てられるようなものにしなければならない。もちろん、私たちが設計したものはすべてレゴ社に送って、問題がないものかどうか承認してもらっています。

――ゲーム中のデザインが実際よりも先にできるということで、TT Gamesで先にデザインを作り上げて、実際に組み立てられるような形にしてから、レゴ社に承認をもらうというプロセスを踏んでいるのですね?

マーティン それを説明するには、開発のプロセスを説明するのがわかりやすいかもしれませんね。まずは、デザイナーがレベルデザインを持って私たちの部署にやってきます。「レベルはこんなふうになって、こことここにレゴがあって、レゴはこんなことができなければならない」というふうに説明してくれるんですね。私たちの部署に来るときに、彼らはすでに詳細を想い描いていて、「レゴ プレイヤーにさらに刺激的な体験を提供する」といったことを提案するわけです。私たちは、それを実現させる責任があるだけでなく、見た目もカッコイイものにしなければならないんです。レゴというのは、想像力がすべてなので、想定していなかったような何かを与えなければならない。とにかく設計しなければならないわけです。大概、僕とスティーブンの部署がいちから設計することになりますね。

――“マルチビルド”は、これまでやろうとしていて、今回初めて実装することができたとのことですが、何がきっかけになって、本作で実現できたのですか?

マーティン 理由はいくつかありますが、プラットフォームに限界があることが一因でした。 “マルチビルド”を実装するには、かなりの数のレゴブロックが必要なので、なかなか難しいことだったんです。それからさらに、クリエイティブなチャレンジもありました。私たちがレゴを使って組み立てるものすべては、機能があるだけではなくて、見た目もかわいくなければなりません。“マルチビルド”だと、それは3倍難しくなるんですね。ブロックの山がひとつあるとすると、それを使って“オプションA”、“オプションB”、“オプションC”の3つが組み立てられるわけですが、同じブロックを使わなければならないわけです。出来上がったものは見た目は違って見えるけれども、同じブロックを使わないといけないんです。

――複雑なことになりそうですね。

マーティン いかにクリエイティブな難しさがあるか、わかっていただけるのではないかと。以上が、これまで挑戦しなかった理由のひとつです。一方で、今回あえて実装したのは、“マルチビルド”が『レゴ スター・ウォーズ』にぴったりだった、ということもあります。SFの構造やビデオゲームのスタイルが、“マルチビルド”に適していたんですね。だからいまこそが、ちょうどいいタイミングだったというわけです。

――レゴをデザインするという見地から、難度が高かったビークルやアイテムなどありましたら、教えてください。

スティーブン 見た目がシンプルなものが、じつはいちばん難しいんです。こちらの“マイクロファイター”を見てください。これらは皆とても小さいものですが、小さいものを作るほうが、ぜんぜん難しいんです。大きなものを作るときには、使えるピースはたくさんあるのですが、小さいものを作るとなると、もっとも小さなピースに頼らねばならず……ということで、限界があって難しいんです。ミレニアム・ファルコンやレイの乗るスピーダー、レジスタンス・トランスポートなど、小さくとてもかわいくて、瞬時にどのビークルかということがわかります。デザインするのは非常に難しいのですが、もっとも楽しくもありますね。

――お気に入りのビークルやアイテムは?

スティーブン 僕の個人的なお気に入りは、ずっとミレニアム・ファルコンでした。それ自体がキャラクターですよね。誰もが知っていて、見た目もとても美しい。だから、僕が本作に携わり始めたときに、まず3バージョンのミレニアム・ファルコンを作りました。キャラクターが動き回れるように、1:1の究極のスケールも作ったんですよ。僕にとってこの仕事ができるのはとてもうれしいことです。巨大なミレニアム・ファルコンを作ったときは、映画と同等のカラースキーム(色彩計画)にしなければならなかったので、かなりの仕事量になりました。これを作るには相当な時間がかかりましたよ。苦労した分、僕がいちばん気に入っているものでもありますね。

――素朴な疑問なのですが、なぜひとつのゲームに3つのミレニアム・ファルコンを作る必要があるのですか?

スティーブン 1:1のスケールは、映画同様に、キャラクターが実際に動きまわる際に使用するものです。ところがここまで大きなビークルをフライトレベルで使用すると、あまりにも大き過ぎてしまう。そこで、フライトのためのスケールを使うんです。

マーティン 僕のお気に入りは、スター・デストロイヤーですね。悪役の宇宙船ですが。『スター・ウォーズ』1作目のオープニングシーンに出てきて、帝国軍の権力を見せつける象徴的なものでした。あのレゴのデザインの形がとてもキレイで、気に入っています。どのスケールでも、あの形を作るのは難しいんです。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でも、砂漠で撃沈されたスター・デストロイヤーの横をレイが通っていくというシーンがあります。そのシーンはゲームにも出てきますが、僕にとっては特別に思い入れのある瞬間です。

――開発に入って、最初は映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の情報が開示されなかったとのことですが、ご苦労はありませんでしたか?

マーティン かなり初期の段階では、情報がほとんどありませんでしたね。ただし、徐々にわかっていきました。幸い、ルーカスフィルムとの関係はとても良好なので、密接に仕事をしています。最終的に映画を観たときに、「しまった、すべて違っていた!」ということは、まったくありませんでした。どちらかというと、仕事に戻るのが待ちきれない思いでいっぱいでした。映画のクオリティーがとても高かったので、ゲームのクオリティーも高いものにしたいと思ったんですね。まあ、問題はTT Gamesのスタジオはクリスマス休業期間だったので、仕事場に戻ることができずに、自宅に帰るしかなかったことですが(笑)。あれは悲しかった(笑)。頭の中でしか、考えることができなかったから。

――実際に観た映画は、期待通りの内容だったのですね。

スティーブン 僕にとっては思っていた以上でした。僕は、映画が公開になってすぐに観に行ったんです。ひとりで、朝7時50分の回に行ったので、朝ご飯はポップコーンとコーヒーでした(笑)。3Dシアターのど真ん中に座り、周りには僕のほかに10人ほどいましたね。とにかく最高でした。終わってからクルマで会場を後にしたのですが、とてもインスパイアされたのを覚えています。とてもすばらしいストーリーで、僕たちはいかにそのストーリーに近いものを作ったんだろうと思いました。マーティンと同じく、仕事場に戻るのが待ちきれなかったですね。映画は、ストーリーやキャラクターがすばらしいと思いました。とくにキャラクターには惚れ込みました。BB-8はすごかったです。僕は、インゲームのBB-8のモデルを担当したのですが、アツくなるものですね。僕たちがずっとがんばってきたものをついに映画で観られるというのは、まさにハイライトとなりました。(マーティンに向かって)あれは最高の体験だったよね。

――本作で、とくにお気に入りのキャラクターは?

マーティン 僕たちは、ふたりとも同じキャラクターを選ぶと思います(笑)。

スティーブン そうだね。

マーティン BB-8しかいないね。

スティーブン そう、BB-8だね。

――理由は?

マーティン 映画の中で、フィンが、「ポーはもう戻ってこないよ」と言うシーンがあるんですね。BB-8の主人であるポーのジャケットをフィンが着ていて、ポーが戻ることはないと告げるんです。そうすると、BB-8がうなだれるんです。あれには、やられたと思いました。BB-8には感情があるんです。僕たちもBB-8はとてもうまく造形していると思います。愛さずにはいられない。だから、僕らのお気に入りなんです。

スティーブン 僕たちが“レゴ ゲーム”を作るようになって10年になりますが、声を使わずに動作だけで感情を表現するキャラクターは極めて稀です。BB-8は、言葉を使わずに、動作だけで感情を表現しています。フィンがBB-8を説得してレジスタンスがどこに潜んでいるか情報を得ようとするシーンでは、親指を立て、BB-8が例のものを取り出します。ああいうシーンがあることで、キャラクターに惚れ込んでしまうんです。インゲームのモデルは僕が担当したので、僕のモデルという気持ちになります。僕はモデルを担当しただけなので、もちろん僕のモデルではないのですが、絆が生まれる。実際に映画を観たときは、想像していた以上にいいと感じました。愛すべきキャラクターですね。

――『レゴ スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に関わってどうでしたか?

マーティン 夢が叶った思いです。僕は、2005年に『レゴ スター・ウォーズ』に携わったのですが、『スター・ウォーズ』関連作品は、手掛ける度に、特別な感情を沸き立たせてくれます。最新作は、僕がもっとも気に入っている『スター・ウォーズ』の作品なんです。僕の表情からもわかってもらえると思うのですが、これは僕にとって一大事なんです(笑)。そして、スタジオにとっても一大事です。誰もが同じ思いなのではないかと。そんな『スター・ウォーズ』ゲームの一員になれたのは、うれしい限りです。

スティーブン 本当に夢が叶ったような思いです。僕にとっての頂点ですね。10年前、最初のゲームが制作された当時、僕はまだこのスタジオに勤務していませんでした。当時5歳だった息子のためにゲームを買ったのですが、僕が虜になりました。とにかく、Traveller's Tale社(TT Gamesの前身)で働きたいと思ったんです。だから、この会社で働くことができて、しかも『スター・ウォーズ』のゲームの仕事に携われるなんて、最高です。これこそが、僕がずっとやりたかったことだったんです。僕たちが作るゲームやこういう素材を見てもらうと、どれだけ情熱的で惚れ込んでいるかということがわかってもらえるのではないでしょうか。このブランドに全身全霊を込めていますよ。

最終更新:6月11日(土)0時47分

ファミ通.com

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。