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『ディスオナード2』開発スタジオツアーリポート前編! クリエイティブディレクターが語る新しいステルスアクションの姿

ファミ通.com 6月10日(金)22時1分配信

文・取材:編集部 コンタカオ

●『ディスオナード』が世界に与えた衝撃
 ベセスダ・ソフトワークスよりプレイステーション4・Xbox One向けに発売予定の、『ディスオナード2』。2012年に発売された前作の『ディスオナード』は、一人称視点のステルスアクションという斬新なゲーム性で、アクションゲームに新たな文脈を生み出した。それだけでなく、“Game of the Year”を筆頭に、英国アカデミー賞ゲーム部門で“ベストゲーム賞”を受賞するなど、高い評価を獲得した。超常能力とガジェットの組み合わせが生み出す幅広いプレイスタイルと、幾通りものルートが存在する高い自由度。唯一無二のゲームシステムが、世界中のファンを熱狂させたのである。
 そして、2015年。世界最大規模のゲーム見本市“Electronic Entertainment Expo”の開催前に行われたプライベートカンファレンス“Bethesda's E3 Showcase”にて、待望の続編となる『ディスオナード2』が、電撃発表された。そこで明らかになったのは、『ディスオナード』の主人公・コルヴォに加えて、新たにエミリーが主人公として登場することだった。会場で流されたトレーラーに映るその姿に、ファンは少なからず衝撃を受けた。前作をプレイした人ならご存じの通り、エミリーはコルヴォが守った女帝の娘というキーパーソンだが、その姿は美しく成長した女性だったからだ。
 本作は、前作から15年後の世界が舞台となっている正統派の続編である。なぜ、新たな女王として帝国に君臨していたはずのエミリーが、アサシンとなって戦うのか? 独自のステルスアクションは、どのように進化しているのか? 新たに生まれ変わる『ディスオナード』をこの目で確かめるべく、記者は世界中のメディアが招かれたスタジオツアーに参加することにした。取材の舞台は、フランスのリヨンだ。


 フランス第2の都市であり、世界遺産である旧市街を擁するリヨン。その中心部に流れる川のほとりに、『ディスオナード2』の開発を手掛けるArkane Studiosはある。さっそくスタジオの玄関をくぐると、クリエイティブディレクターのハーヴェイ・スミス氏が出迎えてくれた。氏こそ本作の鍵を握る人物で、『ディスオナード』以前にも数々の作品に携わってきたクリエイターだ。“クレイジー・アート・イマジニスト”を自負する氏より、新たな『ディスオナード2』の概要をうかがったので、資料とともに紹介していこう。

●新たな主人公・エミリーとコルヴォ
 『ディスオナード』がなぜ高い評価を獲得したのか。その理由のひとつに、「開発すら考えもしなかったプレイを、プレイヤー自身が作り出した」ことでもわかるように、プレイの幅の広さがある。そこで『ディスオナード2』では、さらに自由なプレイを追求してもらえるよう、さらに動きの幅を持たせるだけでなく、高低差があってさらに遠くまで行けるマップを用意したという。「プレイヤーが異なるアプローチで楽しめるレベルデザインを重視し、ステルス、コンバット、リーサル、ノンリーサル……ルートの選択も含めて、プレイヤー自身のペースでプレイできるようになっている」と、ハーヴェイ氏は語る。

 エミリーのアイデアは、2012年に前作をリリースしてからすぐ、続編で何ができるかを考え始めたことから生まれたそうだ。10歳の女の子が成長したら、どのような女性になっているだろうか? そのうち、エミリーをアクションキャラクターとして思い描くようになり、アイデアは固まっていった。ダンウォールでは、エミリーはあくまで女帝であり、汚れた服を着るような女性ではない。マスクにも金の紋章が入っているのが、その証だ。そして、さまざまな場所を縦横無尽に駆け巡って、密かに喉を切るアサシンとなる。そこから、王宮で生まれ育ったエミリーがすべてを失い、追われる身になり、未知の土地で敵対する者たちに立ち向かう。そんなストーリーが生まれていった。15年後のコルヴォは、“アウトサイダー”の印を隠しているが、王家の守護者でありスパイマスターである。追われるエミリーを保護するため、コルヴォは生まれ故郷であるカルナカへと帰還する……。これが導入部分となるようだ。
 すでに明らかとなっている情報だが、ゲーム序盤ではプレイヤーはエミリーでプレイすることになり、その後にエミリーでプレイを続けるか、コルヴォになるかを選択する。エミリーとコルヴォの違いは、プレイすればはっきりと感じられるそうで、同じミッションをこなしていくが、独自のパーソナリティを持っていて、周囲で起きていることに対しても異なる反応を示すという。「本作ではふたりとも声を出すので、パーソナリティの違いはより明確になっている」とのこと。そう、前作では意図的にコルヴォは声を発しなかった。しかし、プレイヤーから「コルヴォが何を考えているのかを知りたい」という意見があったことで、コルヴォにも声を持たせることを決定したそうだ。
 本作の最初と最後のミッションは、ダンウォールが舞台となる。これは、前作のプレイヤーが慣れ親しんだ場所から始めてもらい、より壮大になったダンウォールを感じてほしいという思いがある。本作で採用されたゲームエンジンは、id Techをベースにした新しい“Void Engine”で、「アートディレクションとゲームプレイをさらに良くするために作った独自のもので、以前よりずっとパワフルになったダンウォールが確認できる」とハーヴェイ氏は語った。

●新たな舞台・カルナカの光と闇
 本作の舞台はアイルズ帝国の南端、サーコノス地方にあるカルナカだ。スペイン、イタリア、ギリシャなどの南欧をイメージして作られたカルナカは、“南の宝石”と呼ばれている。主要産業は鯨油ではなく、銀。裕福な貴族たちが住んでおり、ダンウォールとはまったく違う雰囲気を持つこの都市は、公爵の支配下にある。汚職がはびこり、行き当たりばったりの税徴収などで、人々は苦しんでいる。父から仕事を引き継いだ現公爵は父に劣る統治者で、銀山を許容範囲の倍で稼働させ、一部の地域に公害と破壊をもたらしている。そのため、貧富の差は激しく、多くの社会問題を抱えている。それが、カルナカだ。
 前作ではネズミによる伝染病が蔓延していたため、ダンウォールにほとんど人通りはなかった。本作では、伝染病は過去のもの。社会は混沌としているものの、釣人やトランプを楽しむ人々がいる。ダンウォールほど荒廃した場所ではないことがわかる。

 しかし、カルナカには恐るべき生物が存在する。それが、“ブラッド・フライ”だ。死体に卵を生みつけるブラッド・フライは、動きや音、近接するものに反応し、プレイヤーが巣に近づくと興奮する習性を持っている。ステルスでゆっくり動けば巣に近寄ることもできるが、近づき過ぎれば興奮して反応を起こす。死体を放置すればそこに巣を作り、プレイヤーが死体を放置した場所にブラッド・フライがいた場合、ミッションを終えて同じ場所に戻ると状況が一変しているそうだ。これも、本作ならではの、ユニークなゲームデザインと言えるだろう。

●ミッションのテーマは“メカニック”
 ここで、ハーヴェイ氏が、ゲームの中からとあるミッションを見せてくれた。残念ながら、その詳細はまだ明かせない。後日に、インプレッションをお届けする予定だ。
 ちなみに、本作のミッションは、正面突破かステルスか、屋上や細い道のどこを通るか(魚に憑依して水中を泳ぐのも可能)など、複数のアプローチを持つものであることは前作と変わりない。しかし、各ミッションには「メカニック」がテーマとなったさまざまな施策が施されているそうだ。
 その一例を紹介しよう。E3 2015で発表されたトレーラーでは、“クロックワーク・マンション”という場所が登場している。このミッションの目標は“クロックワーク・ソルジャー”を作った男で、ここではスイッチを入れて壁や床を動かすように、仕掛けを使って建物の内部を変化させることで、目標までのアプローチが変わる。たとえば、タイミングを計って壁と壁の間に入り込むといったルートも存在するが、この仕掛けがあるのはこのミッションだけとのこと。それだけ多彩なミッションが用意されており、それぞれのミッションでプレイヤーが自由に行動できるだけの許容を持っていることは間違いなさそうだ。

●なぜ主人公はエミリーなのか? その理由が明らかに!
 スタジオツアー終了後、ハーヴェイ・スミス氏に話を伺うことができた。クリエイティブディレクターが本作に込めた思いから、ファンなら気になる新情報まで飛び出した、貴重な肉声をお届けしよう。

●あらゆる選択がプレイヤーの経験を変えていく
――カルナカという南国を舞台にした理由は?

ハーヴェイ アイルズ帝国には4つの国が存在します。氷に閉ざされた不毛の地であるTyvia、Morley、前作の舞台であるダンウォールがあるGristol。そして、今回の舞台となるカルナカは、南の暖かい地域にあるSerkonosにあります。葉巻やフルーツの産地であり、キューバ、スペイン、イタリア、ギリシャに影響を受けた場所です。音楽にギリシャ・ギターを使用しているので、南欧的なイメージが強いかもしれません。ここはコルヴォの出身地で、前作ではコルヴォは周囲から異邦人と見られていました。イタリア人がロンドンにやってきたという感じですかね(笑)。

――続編の開発はどのタイミングで決めたのですか?

ハーヴェイ 私たちはすべての力を前作につぎ込んだので、続編のことは何も考えていませんでした。前作の完成から数ヵ月して、新しいゲームについて考えるうちに、その後のダンウォールがどうなったか、考えるようになりました。それに前作が大成功をおさめたことも大きい理由のひとつです。まず、女帝となった少女が指導を受けながら、成長した姿を考え続けました。彼女を殺そうとする者もいて、おそらく恐怖心を抱いているだろう。これを知る父は厳しく訓練、指導するに違いない。そんな彼女が王座についたらどのような人物になるだろうか……。いろいろ思考を重ねているうちに、とても興味深いキャラクターになっていったんです。

――『ディスオナード』といえば、誰も殺さずともクリアーできるクリエイティブなプレイですが?

ハーヴェイ 誰も殺さなくても進めるというアイデアは、じつはかなり開発後半で生まれたんです。実際に、超常能力を使って時間を止めたり、誰かに憑依(ポゼス)すれば、ミッションをクリアーできることはわかりました。ただ、殺すことが目的となるキーターゲットについてはどうするか、と。殺さずに、ほかの方法を使って排除する場合、その行為ひとつひとつを作らなくてはならない。これは簡単ではありませんでした。

――作業量だけでも何倍にもなりますね。

ハーヴェイ そうです。しかも、それぞれがユニークなものでなくてはいけない。同じトリックを何度も使うわけにはいきませんから。そこで、独断的な宗教のリーダーによる“異端の焼印”を思いつきました。顔に焼印を施されたら、同じ宗教の人から話しかけられることはありません。社会から追放されるんです。ターゲットである上級監督官に焼印を押せば、町から追放されて除外できます。殺す必要はありません。このアイデアは、とても気に入りました。新作では、最初からこれをフィーチャーしています。

――自分の行動で周囲の反応が変わるカオスシステムは?

ハーヴェイ 前作からは変更されています。前作では殺した人数を記録し、ある人数以下なら低カオスとなって、そのエンディングが見られました。『ディスオナード2』では、すべての人の道徳性を“心臓”を使って測ることができます。思いやりのある人を殺すのがもっとも悪く、ある程度の罪を犯している人がベースラインとなります。殺人者を殺しても、カオス値はあまり上がりません。

――それは独特ですね!

ハーヴェイ はっきりした数はわかりませんが、本作ではインゲームの数を増やしています。インゲームの一部は繋がっており、それぞれにバリエーションがあるだけでなく、高カオス版と低カオス版が存在しますよ。自分たちの仕事量は多くなりますが、インゲームに強い関心を持っている人のために努力しています。

――ブラッドフライは新しい挑戦でユニークです。このアイデアはどうやって生まれたのでしょうか?

ハーヴェイ まず、前作と同じことをやりたくはありませんでした。カルナカの暖かい気候から花を思い浮かべ、虫を思いつきました。そこで、この虫と言う要素を、人を殺せば状況が悪くなるカオスに反映する方法を考えました。死体にブラッドフライが卵を産むというアイデアは、プレイヤーのアクションが世界に反映を与える方法にふさわしいと思ったんです。死体が少なければブラッドフライも少なくなりますから。

――ファーリーチなどの新しい能力も気になります。

ハーヴェイ ファー・リーチについては、エミリーにパワーを与えて、上下に動くだけでなく、ステルスにも使えるようなパワーを与えたかったんですね。でも、単にブリンクを外見上だけ変えたものにはしたくありませんでした。ブリンクは、時間の進行を遅くすることで、プレイヤーが素早く動けるものです。ファー・リーチは、グラップリングフックに近いですね。伸び縮みするものをスリングショットで壁に当てて移動する、人に当てて引きつけて殺す、あるいは引きつけておいて自分が身を引いて後方へ投げることができます。最終的には同じ目的を達成しますが、エミリーをプレイしたとき、プレイヤーにコルヴォの女性版と感じてほしくなくて考えました。

――最後に、本作でもっとも大事にしたことを教えてください。

ハーヴェイ 興味深いことに、パンくずを並べておいてプレイヤーにそれを追いかけさせるゲームが非常に多いと思います。開発側の狙い通りに進めさせるために、しっかりと統制されているんですね。私たちは違います。ゲームを進めるためのメトリクスは提供しますが、選択するのはプレイヤーです。屋上を進むか、横道を行くか、魚に憑依して泳ぐのか。すべての人を殺すか、誰も殺さないか、どのパワーを使うのか。エミリーになるか、コルヴォになるか。どれを選ぶかによって、プレイヤーの経験は変わります。これがもっとも大事なことでしょう。パンくずを追う必要はありません。

 『ディスオナード2』スタジオツアーリポート後編は、アートディレクターのセバスチャン・ミットン氏に聞いた新たな世界・カルナカのコンセプトを、秘蔵のコンセプトアートなどと合わせて紹介していこう。さらに貴重なエピソードが飛び出したので、ぜひチェックしてほしい。



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最終更新:6月10日(金)22時1分

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TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。