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『ディスオナード2』開発スタジオツアーリポート後編! アートディレクターが語る、新しい世界を生み出すまで

ファミ通.com 6月10日(金)22時1分配信

文・取材:編集部 コンタカオ

●オリジナルの世界を生むアートの源泉に迫る!
 ベセスダ・ソフトワークスが贈る、プレイステーション4・Xbox One向けのステルスアクションシリーズ最新作、『ディスオナード2』。前編では、本作のクリエイティブディレクターを務めるハーヴェイ・スミス氏が、そのゲーム性についてくわしく語ってくれた。続く後編では、アートディレクターを務めるセバスチャン・ミットン氏の“声”をお届けする。スチームパンクとレトロフューチャーが混在する、『ディスオナード』でしか体現できない独特のビジュアルを作り上げた氏による、新たな世界の概要を紹介していこう。

●新しいアプローチ“クロスカルチャー”
 セバスチャン氏は、「本作の開発のために、まずは世界中からベストな人材を集めた」という。ピーク時にはスタジオ内外合わせて17名もの才能溢れるスタッフが参加し、彼らによって膨大なマテリアルが構築され、物語のピースに当てはめていく。これを積み重ねて、徐々に新たな世界が築き上げられていくのだ。その中で、本作ならではの要素がある。それは、2Dのコンセプトアートと3Dのスカルプチャーを使ってゲームのマテリアルを築いていくというアプローチだ。ハーヴェイ氏が“クロスカルチャー”と呼ぶこのスタイルは、実際の開発前に解剖学なども取り入れた細かいディテールを詰めていくことで、見事なリアリティーをもたらしている。


 コスチューム、ジェスチャー、民族性、皮膚、ライティング、都市生活、人類学……数々の視点から分析された成果が、本作の世界に詰まっている。たとえば、カルナカの侯爵が儀式に向かうアートがある。この1枚には、世界観だけでなく、侯爵やそれを取り巻く人々のパーソナリティまで伝わるように意識されているのだ。

 完璧主義者であるというセバスチャン氏は、「アートはグラフィックスではない。ポリゴン、シェイダー、テクノロジーで評価する人たちが多すぎる。エンジンがどんなにパワフルでも、コンソールが何かは関係なく、デザインが弱ければグラフィックスは何も伝えられない。初期段階でビジュアルのコンセプトがしっかりできていれば、その結果がゲームに反映される」と強く語ってくれた。毎日のように“Raising the bar(達するべきレベルを引き上げる)”をキーワードにアートを作り上げた結果、8000を超えるコンセプトアートやイラストレーションが生まれたそうだ。

●カルナカを取り巻く環境とデザイン
 今回の舞台になるカルナカについて、ハーヴェイ氏から「政治腐敗」、「犯罪」、「抑圧」、「疫病」、「マジック(魔術)」、「崩壊」といったキーワードを聞かされたセバスチャン氏は、ただ「クール」とだけ答えたそうだ。しかし、イマジネーションはどんどん膨らんでいったという。
 そして生まれたカルナカは、風光明美な美しい顔と、腐敗と抑圧にまみれた影を持つ、複雑な世界となった。いたる所に大きな木がたくさん生えており、風穴もある自然に恵まれたカルナカは、小さな村がどんどん発展して大きくなったイメージで構成されている。街中にパイプが張り巡らされていて、強い風を活かした風力発電が主となっている。しかし、その風に乗って銀鉱山から吹き込む塵芥が人々を苦しめている。この銀鉱山はランドマークとなっており、どこにいても自分の位置がつかめるように設計されているという。

 デザインの妙は環境だけではない。細かいガジェットにも、すぐれたインダストリアルデザインが施されている。「現実に存在してもおかしくない」=「実際に動く」ことを前提にデザインされており、プレイヤーに不満を与えないためにも、すべて理屈が通るものになっている。「ゲームのためのアートを作るというのはこういうことだ」とセバスチャン氏が言うのもうなずける、徹底的なデザインだ。そこで、本作のために描かれたコンセプトアートやモデリングデータを紹介しつつ、そのディテールのすばらしさを証明していこう。

●有機的につながるキャラクターと世界
 ここからは、話をキャラクターデザインに移そう。今回のデザインで強調したのは、「ボディ・ランゲージにフォーカスすること」と、セバスチャン氏は語る。
 皮膚の状態、衣装のディテールから物語がプレイヤーに伝わることがある。乾いている肌やボロボロの服で、その人物の生活スタイルがわかるように、だ。そのため、衣装のシルエットがいくらクールでも、キャラクターの動きにプレイヤーの焦点が集まらなければ採用しなかったそうだ。キャラクターの動きをもっとも効果的に見せるデザインこそ、ゲームにとってもっとも適したデザインということだ。
 デザインとゲームのシステムを効果的に繋げた例として、胸に小さなメダルを付けた警備員がいる。このメダルはただのお飾りではない。金属製なので、アサシンが放ったクロスボウの矢が当たれば、矢が折れてしまうことがあるのだ。こういった、それぞれのチームがつながって機能していなければ成し得ない事象は、まだまだたくさんあるようだ。
 また、Void Engineのパワーで、ゲーム内の事象をすべて関連付けて表現できるようになっている点にも注目したい。キャラクターは衣装、肌、目それぞれが独自のシェイダーとして機能しているので、状況に合わせてダイナミックに変化するそうだ。背景にいるようなキャラクターでも、たとえば嵐が来たら防塵マスクを着用するように、環境で行動が変わっていく。すべてのキャラクターを“特別”に感じてほしいという開発の思いが、随所にこめられていると言えよう。

 音声に関しても、デザインと同様にこだわりが貫かれている。その例として、“Dreadful Wale”という船のシーンを見せてもらった。この船はコルヴォとエミリーのベースとなる場所で、船上ではさまざまなキャラクターが行き来している。ここで交される会話はプロシージャル技術で自動生成されており、プレイヤーの行動で音声が変化するという。会話以外にも、風や波の音、ウミネコの鳴き声、低いエンジン音も聞こえてくる。何層も重ねられた音声が耳に飛び込んでくる感覚は、形容しがたい高揚感をもたらせてくれた。その音の厚さは、ぜひ自身で体感してほしい。グラフィックだけではリアリティーは生まれないことがわかると思う。

●舞台が南国になった理由は“ハバナ”にあった!?
 ハーヴェイ・スミス氏に続いて、セバスチャン・ミットン氏にも話をうかがう機会を得た。エネルギッシュかつ明朗に語るハーヴェイ氏とは異なり、慎重に選びつつも熱を帯びた言葉で語るミットン氏。『ディスオナード』でしか見ることのできない世界を生み出す氏に、カルナカ、エミリー、そしてコルヴォのコンセプトを聞いた。

●本作のすべてが効率的にフィットしている
――カルナカは美しい都市ですね。

セバスチャン まったく新しい場所です。前作から本作へ旅をするように感じていただきたくて、対比的なビジュアルにしようと考え、南へ行くことにしました。でも、アメリカのロサンゼルスでは太陽と海が広がるだけで、特徴に欠ける。結果、ジャマイカをイメージしてデザインしました。ジャマイカは南国のモダンワールドですから。そこに、ちょっとしたマッドネスを盛り込んだのがカルナカです。まずはストリートを作り、そこに住む人々とそれを取り巻くものを作っていきました。

――南国のイメージと『ディスオナード』の世界観を同居させるのは難しくありませんでしたか?

セバスチャン エリアによっては混在している場所もありますが、カルナカらしさが明確にわかるようにしています。ゲームに入って新しい都市を見たら、「おお!」と思うような発見があるでしょう? 薄暗いイギリスのロンドンをイメージしたダンウォールから、南欧とキューバのハバナをミックスしたようなカルナカにプレイヤーはやってきます。ハバナはゲームのストーリーに合う都市でしたね。神秘的な部分もあって、何が起きてもおかしくない危うさもある。ライティングもすばらしい場所ですよ(笑)。それに、前作ではスチームパンクの印象が強いと思いますが、電気が使われるようになったけれど不安定な時代で、モダンでもなくサイエンス・フィクションでもないという世界を、本作では目指しました。ネオヴィクトリアン(テクノロジーとヴィクトリア朝時代の感覚を混在させたもの)に近いかもしれません。

――エミリーとコルヴォのデザイン・コンセプトは?

セバスチャン 本作の物語は、前作から15年後です。前作でプレイヤーはエミリーと会うことを楽しみ、彼女の状況に同情しました。成長して女帝となったエミリーを主人公にすることは、続編としてはとても自然な流れです。エミリーのコンセプトは、目で感情を表現できるキャラクターです。最初はアクションゲームの主人公らしいキャラクターを考えていたのですが、エミリーがこちらを凝視していて、苦悩しているのかどうかわからないけれど、感情が伝わるアートが完成しました。コルヴォのコンセプトですが、解剖学の教授に前作から引き続いて協力していただき、歳を取ったコルヴォをデザインしていきました。

――コルヴォはより魅力的なキャラクターになりました。

セバスチャン コルヴォは気に入っているキャラクターです。ゲームにおけるヒーローは、作るのにいつも苦労します。いろいろな方向を探りましたが、トム・クルーズっぽくなって「これはダメだ」と修正したこともあります(笑)。そのうち、ボスのような人物でありながら自分から進んで動く、自分自身を明確に持ったキャラクターが構築されました。本作のコルヴォは新しい服を着ていますが、がっちりとしたコスチュームではなく、敏捷に動けるものになっています。ブリンクを使うのにふさわしい姿でしょう? もうひとつ、重要なものにマスクがあります。前作のマスクもすばらしいデザインでしたが、本作では顔にフィットするデザインにしたかった。金属を繋げてできたもので、骨で作った大きなマスクとは違います。大き過ぎるマスクを着けていたのではカッコ悪いし、フードを被らずにごま塩の髪の毛を見せながらマスクを着けたら、クールな“バッドアス”になる(笑)。ほかのオブジェクトもそうですが、ただの小道具ではなく、存在感がきちんと感じられないといけません。

――対応ハードがプレイステーション4とXbox Oneになりましたが、アートディレクションに影響はありましたか?

セバスチャン 本作では、自分たちで作った新しいゲームエンジン“Void Engine”を採用しています。モーションキャプチャーひとつとっても、多くのポリゴンやシェイダーが必要となりますが、霧や風なども表現したい。プログラマーも無理と言うかと思って依頼したら、「大丈夫だよ」と言われました。新しいハードになって初めての作品となりましたが、いいゲームエンジンがあったおかげで、最初からすばらしい作品が作れる環境でしたね。

――本作でもっとも大事にしたことは?

セバスチャン まずはマップですね。上から地図を見て、ズームすれば地理が理解できる、そんなマップを作ることが大切なんです。続いてはキャラクター。上海やニューヨークなど、違う都市に行けば違うキャラクターがいますよね? それと同じで、その場にいる人たちが世界の雰囲気を作っていきます。こうして枠を決めていき、細かい地区を構成していくという流れでデザインしました。さらに、それぞれのレベル(階層)にある事象、たとえば家の中にあるものなどは現実にあっておかしくないように作られており、作動します。現実に則ったメカニズムを持ち合わせているので、ニセモノではありません。本作の世界にあるものはすべてフィットしていて、効率的に作られているのです。

――最後に余談ですが、アイデアの源となるような日本のカルチャーはありますか?

セバスチャン 宮崎駿さんの作品です。彼の作品で描かれる背景は、とくにすばらしい。たとえば、赤いレンガの壁を表現するとします。彼の作品では、レンガをひとつだけ描いて、あとは壁を赤くするだけでも、それがレンガの壁とわかるんです。すべてをレンガで埋める必要はありません。この手法を活かして、同じように描いている部分もありますよ。

 この独特な世界がいかに生まれていったか、少しでも伝わっただろうか。優れたアートやデザインだけでは、いいゲームにはならない。それを理解しているからこそ、『ディスオナード』は唯一無二の作品になり、多くのプレイヤーから支持されたのだ。『ディスオナード2』では、さらに斬新で刺激的な世界を見せてくれることは間違いない。
 E3 2016に先駆けて、2016年6月12日(現地時間)よりアメリカ・ロサンゼルスでカンファレンス“Bethesda E3 Showcase + BE3 Plus ”が開催される。ここでは、いよいよ『ディスオナード2』の新たな情報が公開される予定だ。この模様は、ニコニコ生放送にて2016年6月13日(月)の午前11時より、日本語同時通訳付きで生中継される。新たなステルスアクションの革新を、世界中のファンとともに目撃しよう。



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最終更新:6月10日(金)22時1分

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