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半導体、熊本地震の業績影響出そろう。各社はBCPをさらに検証へ

ニュースイッチ 6月10日(金)8時20分配信

リスクへの備えと効率経営のベストなバランスはどこか

 熊本地震から1カ月半が経過し、被災した半導体関連メーカー各社は、ほぼ正常に工場を稼働し始めた。想定よりも短期間で復旧した影には、東日本大震災で得た教訓が生きた。一方で公表を延期していた業績予想が出そろい、各社は稼働停止の影響で数十億円から1000億円超の損失が生じたことも分かった。震災による影響を最小化するBCP(事業継続計画)のあり方とは何か。

 「予備のパーツや耐震強化などで、90%の部分は補えた」。ルネサスエレクトロニクスの鶴丸哲哉社長は、熊本地震の影響をこう説明する。東日本大震災以降、取り組んできたBCP対策に自信をみせた。

 同社は自動車用マイコンなどを生産するルネサスセミコンダクタマニュファクチュアリング川尻工場(熊本市南区)が被災したが、5月22日にウエハー投入ベースで震災前の生産能力まで回復した。「クリティカルパス(重要な作業経路)が何かを常に見極めて対処した」(鶴丸社長)点が、早期の稼働再開につながった。

 その他の企業も、おおむね正常稼働にめどを付けている。三菱電機は5月31日に震災前の生産能力に復帰。製造装置を手がける東京エレクトロンも6月末までに通常の生産体制にする計画だ。ソニーは8月にウエハー投入ベースで通常状態に復帰し、10月以降には出荷ベースでフル稼働に戻る見通しだ。

 これまでの経験や対策を生かし早期復旧を実現したが、一方で業績へのダメージを回避することは困難だった。

<ルネサス、ソニーは機会損失大きく>

 特にデバイスメーカーへの影響は深刻だ。ルネサスは熊本地震の稼働停止による機会損失が響き、2016年4―6月期は売上高で140億円、営業利益で80億円の減少を見込む。柴田英利常務兼最高財務責任者(CFO)は「7―9月期まで売り上げに影響が出る」との見方を示す。

 ソニーも熊本地震でデジタルカメラの機会損失やデバイスの物的損失などを被り、17年3月期に営業損益ベースで1150億円の損失を見込む。吉田憲一郎副社長兼CFOは「サプライチェーンには影響はない」とし、下期の巻き返しを狙う。

 一方、東京エレクトロンはデバイスメーカーに比べ影響は少なかった。17年3月期の上期に装置や建物の復旧費用などで100億円の特別損失を計上するが「売り上げに大きな影響はない」(広報部)という。17年3月期は売上高7140億円、営業利益1240億円の増収増益を見込む。

 各社は今後、検証チームを立ち上げ、さらなる対策強化につなげる構えだ。東日本大震災を経て早期の生産復旧体制は強化されたが、業績への影響をゼロにするのは至難の業だ。地震リスクが顕在化する中、震災の影響をどこまで織り込みBCPを策定するのか。各社は熊本地震を検証し、よりレベルの高い対策を検討する必要がある。

《解説》
 リスクへの備えをどの程度まで必要経費ととらえ、コストと見なすか。為替環境も含めてリスク分散できる生産拠点のあり方をどうするか。BCPには確実な正解がないからこそ、震災の経験を徹底検証して各社の最適な解を定めなければならないし、それが難しい所でもある。ただ最近は人災や施設の管理不足による工場災害も多い。震災リスクはどうしても避けられない部分があるため、通常業務で防げるリスク要因は最小限に抑える必要があるだろう。

最終更新:6月10日(金)8時20分

ニュースイッチ

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