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乳がん診断技術に新しい可能性

ニュースイッチ 6月10日(金)8時20分配信

医療機器メーカーの研究開発進むも、社会全体で早期の対策必要

 乳がんが日本の女性を苦しめている。欧米では乳がんの罹患(りかん)率・死亡率が減少傾向にあるが、日本は依然として上昇が続く。いまや12人に1人が乳がんにかかり、年間死亡数は1万3000人を超えた。従来の乳房X線検査装置(マンモグラフィー)を使った検査や検診だけでは乳がんの早期発見に限界がある。乳がん対策の見直しが急務であり、医療機器メーカーにとっても乳がん診断技術は今後の大きな研究開発テーマだ。

 雪山で白ウサギやゴルフボールを探すようなものだ―。マンモグラフィーで高濃度乳腺(デンスブレスト)の乳房の病変を判別する難しさは、しばしばこう例えられる。マンモグラフィーは病変部を白く描出することで画像診断するが、乳腺組織の密度が高いデンスブレストは乳房領域も真っ白に撮ってしまう。これがマンモグラフィーによる乳がん早期発見の障壁になっている。

 欧米に比べ日本を含むアジアの女性はデンスブレストの割合が高い。50歳以下で80%近い女性がデンスブレストだというデータもある。乳がん発症リスクが高いデンスブレストの女性に対し、米国では乳腺濃度を知らせる法律がある。米国50州のうち、既に半数の州が同法を制定。マンモグラフィーで乳がんが発見しづらいことが分かれば他の診断方法を選べる。

 一方、日本はデンスブレストが多いにもかかわらずマンモグラフィーによる検査・検診がメーンだった。そのため検査・検診を続けても病変が見つからず、がんが進行するということが起こりがちだった。

<マンモグラフィーだけ「限界」>

 マンモグラフィーだけの検査・検診に限界が見えている。東北大学大学院医学系研究科の研究グループは超音波検査による乳がん検診のランダム化比較試験の結果を11月に公表した。

 40代の女性7万6196人を対象にした世界最大規模の臨床試験であり、マンモグラフィーに超音波検査を加えることで「早期乳がんの発見率が約1・5倍になる結果が得られた」(大内憲明教授)。

 日本乳癌(がん)学会も「乳癌診療ガイドライン」を今年改定し、マンモグラフィー検診の推奨グレードを最高のAからBに引き下げている。今後は日本でも超音波画像診断装置や磁気共鳴断層撮影装置(MRI)を使った併用検査・検診が必要になる。

「超音波」、医師のスキルに左右

 超音波検査の有用性は今後検証されていくが、医療機器メーカーが果たす役割も大きい。超音波画像診断装置は日立アロカメディカル、東芝メディカルシステムズ、富士フイルム、コニカミノルタなど国内各社がしのぎを削る領域。自治体の地域検診や企業の職域検診といった対策型検診に取り入れられ、

 また検診の対象年齢が下がるようであれば超音波画像診断装置の利用頻度は一層高まる。ただ超音波検査での画像描出はプローブを扱う医師のスキルに左右されるため再現性が低いという課題もある。検診向けに検査の標準化や検査時間を短縮できるような機能開発が求められる。既に海外大手のGEヘルスケア・ジャパンは検査の標準化につながる乳房専用機器を日本に投入し、新たな検査方法の提案を始めている。

 市場は国内だけではない。ある医療機器メーカー幹部は「中国でも若い世代の乳がんが増え、マンモグラフィーの需要が伸びている」という。デンスブレストはアジアの女性に多いため、日本発の超音波検査アプリケーションは海外でも需要が伸びそうだ。

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最終更新:6月10日(金)8時20分

ニュースイッチ