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リスペクトとせめぎ合い。SUGIZOとINORANがロックの日に“名勝負”

M-ON!Press(エムオンプレス) 6月12日(日)16時42分配信

6月9日、ロックの日。ともにLUNA SEAのギタリストであるSUGIZOとINORANが、それぞれのソロプロジェクトの対バンライブイベント“SUGIZO VS INORAN PRESENTS BEST BOUT~L 2/5~”を開催。Zepp DiverCity(TOKYO)に詰め掛けた2,500人のファンを前に、“名勝負”を意味するタイトルどおり、音と音とでぶつかり合い火花を散らしつつも、それ以上に、互いに寄せる愛情とリスペクトを露わにした。

自然発生した手拍子がフロアに鳴り響くなか、定刻を40分ほど遅れて開演すると、ステージ紗幕越しにスクラッチ音が聞こえ始めた。バイオリンを構え前傾姿勢を取るSUGIZOのシルエットが大きく浮かび上がると、大歓声が沸き起きる。すると、その左手にはアコースティックギターを抱えたINORANのシルエットが背中合わせの形で映し出される。意表を突いたセッションでの幕開けに、大きなどよめきが起きた。

各々、ひと弾きしてはその場で録音、再生してはさらに新しい音を重ねて行く、ループを用いた即興性の高いセッションで、LUNA SEAの25周年ツアーでも会場を沸かせたひと幕を再現した形だ。INORANはボディを叩いてリズムを刻み、ギターが打楽器的な役割も果たす。背後には、揺らめく水面に木の葉が写る映像が映し出され、ふたりのシルエットがそれらと重なり、イメージが増幅していく。幕が振り落とされてふたりの立ち姿が明らかになると、中央には不死鳥と龍を象った存在感抜群のイベントビジュルが出現した。ピッと弓をINORANの方へ向け、端麗にポーズするSUGIZO。ふたりの個性が際立つ音色が絡み合い、どこにもない風景を立ち上げる見事な幕開けに、鳥肌が立った。

短時間でセットチェンジを終えると、アンプやドラムセットにひと繋がりの電飾が巡らされ、白い光を放つなか、INORANバンドが登場。コードを掻き鳴らしたのを合図に、オープニングOのインストセッションに突入した。INORANは大きく脚を開き前後に体重を移動させながら、序盤はゆったりと、やがて頭を激しく振り始め音にのめり込んでいく。

続けて歌い出したのは、昨年発売されたアルバムの表題曲「Beautiful Now」である。機上の窓から覗く雲の海原が映し出されるなか、眩しい光に射られながら、ギターと歌の力と、双方で会場の空気をグイグイと引っ張っていく。続けて、同じくアルバムから「might never see, might never reach」へ雪崩れ込み、疾駆する16ビートに乗せて観客は拳を突き上げて「oi oi!」とシャウト。会場がみるみるうちに一体化していく。

INORANの近年のソロ作はストレートなロックテイストが前面に打ち出されており、例えば、LUNA SEA楽曲においてかねてから担ってきたクリアトーンのアルペジオを爪弾くことは稀である。メロディアスなフレーズはもうひとりのギタリスト、Yukio Murataに任せ、INORANはアグレッシブにコードを掻き鳴らすプレイが目立ち、パフォーマンスもターンしたりダッシュしたりと、ひと所にじっとしていることがない。続く「Rightaway」のイントロに乗せ、「Hey、DiverCity!楽しみに来たんだろ?楽しむ準備はできてるか?」と呼び掛けるINORAN。ダイナミックに緩急を付けた演奏と歌で、観客をその熱いグルーヴのなかに巻き込んでいった。

「ホントにこの日を楽しみに待ってました。そして、後から出て来るにっくきSUGIZOも」と憎々し気な口調を試みるものの、「いや~、仲がいいんで難しい(笑)。でもやっぱり、対バンするからには音で本気でぶつかろう、と」と所信表明。再び最新アルバムから「Awaking in myself」、続けて「2Lime s」を放ち、ダンサブルな曲調に合わせて自身もステップを踏む。重く粘り気のあるグルーヴ、迫り来る音圧、煽情的な鋭いシャウト。ずっしりと骨太な演奏ではあるが土臭くは転ばず、どこかクールで洒脱なムードが漂う温度感が絶妙だ。

「すげぇいい景色だぜ!」と満足気な様子を見せると、「こういうの、4年ぐらい前から企画してたの。もちろん、これまでもRYUICHIとはTourbillonをやってて、Jとか真(矢)ちゃんとかSUGIちゃんとか……」と打ち明け話を始めるINORAN。

「本音言っていい?これは話さないと泣いちゃうんで……(笑)。LUNA SEAというバンドを始めて、俺以外のみんな、昔からテクニックも感性も素晴らしくて。LUNA SEAの初めの頃から、自分にはテクニックもないしセンスもないし性格も悪いし(※会場からは、“えー!?”の声が上がる)(笑)。いろいろ、負けてるな、本当に自分は足らないな、と思ったり」と心情を吐露。「特にSUGIちゃんはうまくてね。同じギタリストとして、テクニックもあるしセンスもいいし、性格もいいし……でも時間は守らない(笑)」と冗談めかしながら(※「でも、俺のほうが本当は時間守らない(笑)」と即座にフォロー)、「彼がいたから頑張れたと思う。LUNA SEAで、“負けるもんか!”と思いながら、目標にして」と、SUGIZOの存在をいかにリスペクトしているかを率直に、熱く語った。

LUNA SEAの活動はありながら、「ソロで別の“ファミリー”を持って、ここで対バンができるというのは本当に、本当にうれしいんですよ。音楽人として繋がっているなかでも、ときにバトルもしないといけないな、と」とこの企画趣旨を明らかにしながら、「俺の兄貴を呼びます、SUGIZO!」とついにコール。互いにファイティングポーズを構えながら、すぐにハグを交わしたふたり。

「with SUGIZOで行かせていきます、“raize”」(INORAN)とのタイトルコールで、セッションがスタートした。SUGIZOは、サビにあらたな旋律を加える形でフレーズを紡ぎ、INORANは喜びに満ちた晴れやかな歌声を響かせる。曲のもともと持っている生き生きとした輝きをさらに発展させるようなフレーズを奏でつつ、SUGIZOはINORANに近づいていき、センターで向かい合う。なんと眩しく幸福な光景だろうか?「Thank you SUGIZO!」とINORANが送り出すと、SUGIZOは後ろからグッとINORANの首に腕を巻き付けるようにして抱きつき、ステージを後にした。

「やっぱさ、愛し合ってるとバトルにならないってことがわかった(笑)」とINORANは感想を漏らし、拍手と笑いに包まれるなか、いよいよラストスパート。ライブではお馴染みの「grace and glory」、そして「Get Laid」では観客を男女に分けたコール&レスポンスを繰り返し、会場中を巻き込んでいく。誰ひとりとして傍観者ではいさせない、そんな気迫に満ちた姿が印象深かった。

「6月9日、ロックの日にこうやって音を出せることがなんて幸せなんだろう、と思いました」と想いを述べたINORANは、「みんなには迷惑を掛けたことがありましたけど……」と、直前の会場変更などによる混乱を詫び、「その代わり、SUGIちゃんと話して“最高の一夜にしよう”と約束を交わし、僕が先に出てきました」と明かした。

「INORANバンドとしては次で最後。最後ひとつになれるように、そしてSUGIZOのためにもっとひとつになれるように、とりあえずひとつになっとこうか?」と、「All We Are」を放った。序盤はシンプルな8ビートに乗せて、センチメンタルな旋律をINORANが爪弾き、心のこもった歌声を重ねていく。最新アルバムを締め括るこの曲も、観客の歌声、メンバー全員のコーラスが合わさって初めて完成するアンセムである。ひとりマイクを通さず、しかし大きく口を動かし、反り返らんばかりにして全身で歌っていたINORAN。最後は明るい光で客席も照らされて、ひとつの乗り物に乗っているような温かい安心感に包まれているのを感じた。メンバー紹介の後、「また逢おうぜ!SUGIちゃんのとき、もっと盛り上がれよ!」と、実に兄貴想いな言葉を残し、1時間強のアクトを終えてステージを去った。

20分ほどの転換時間を経て始まった、SUGIZOのアクト。大きな白い翼と回転するフラワーオブライフの神秘的な文様がスクリーンに映し出されるなか、「お待たせ。今日は本当にありがとう。心から感謝してます。愛すべき、憎むべき後輩INORAN。俺は最後までブッ通しで行くから、そのつもりで」と短く告げるとガガッ!と一音ギターを鳴らし、大きく右手を挙げると、瞬時に空気が張り詰めた。同様のフォルムで手を挙げる観客は、早くもSUGIZOワールドの構成員となっていた。

「TELL ME WHY?(Beginning part)」に始まり、「FINAL OF THE MESSIA」と繋げ、4つ打ちのデジタルビートに律動的なパーカッションとドラムが絡まり、心身に襲い掛かって来る。SUGIZOのギターカッティングは刃物のように鋭くつねに正確で、小気味よくて痛快。大きく脚を開いてセンターで立つ姿は勇ましく、華麗という言葉が似つかわしい。前へ出たり、スッと後ずさったりする動き、それらすべてに意識が行き届いていて、一瞬一瞬のポーズがバレエダンサーのような優雅さ。

規則正しいリズムに身を任せていると、知らず知らずのうちに高揚感のピークへと意識を誘われていく。INORANの見せたストレートなロックの興奮とはまた性質の異なる揺さぶりを掛けて来る。サイケデリックな映像や噴出するスモーク、激しく明滅するライトに幻惑されながら、その音の宇宙に引き込んでいくSUGIZO。

「FATIMA」ではバイオリンを構え、指揮者のように弓をクルクル回す。光を仰ぐように上を向き、大きく弓を振りながら美しい軌跡を描くと、情感のこもったプレイを披露。リズムは刻々と変動して躍動感を増していく一方で、バイオリンの旋律はリフレインする。途中、ピタリと弓を額に載せて長時間直立している姿も印象深い。背後には、ベリーダンサーが妖艶に舞い、海中でマーメイドのように揺らめく姿が映し出され、視覚、聴覚両面を刺激し、異界へと誘った。

続く「THE EDGE」はライブ初披露。「INORAN!」と短く呼んで招き入れると、INORANはこの曲のアグレッシブなギターリフを担い、バイオリンを滑らかに奏でるSUGIZOと向き合って演奏。顔を至近距離まで近付けたり、跪いたり、時には遠ざかったりしながらも互いに向き合い続け、まるでフェンシングの決戦かのような緊迫したバトル感を漲らせる。それはまるで、ふたりの築いて来たこれまでの関係を具現化したかのような場面に思えた。

たびたび訪れるブレイクごとにテンションは高まるばかりだったが、妖しく美しいパープルのライトに照らされるなか、やがて終盤へ。「INORAN!」と再びSUGIZOがコールし、互いにタッチすると、INORANはステージを去った。音が途切れ静寂が訪れると、大拍手と歓声が会場を包んだ。

続いて、暗闇のなか、目まぐるしく駆け回るような、銃撃の音か?と思わせる激しいドラムで始まったのは、新曲「Lux Aeterna」。SUGIZOはくぐもった音色でメランコリックなアルペジオを爪弾く。背後の映像は彩りのない世界。雷鳴のようなライトがその暗闇の世界に差し込み、空を切り裂いた。歌もなく、もちろん歌詞もなく、意味を読み解こうとするには抽象度の高い楽曲。しかし、立ち尽くしたままじっと聴き入っている観客の姿、ピンと張り詰めた会場の空気感は、この曲が宿すパワーを実感させるのに充分。音が途切れた途端、ため息交じりの大拍手が起きた。

「ENOLA GAY RELOADED」では、祈る女性の映像が冒頭で映し出され、赤い煽情的なライトのなか、大きなフラッグで八の字を切りながらステージ中央に立つSUGIZO。空爆の白煙が立ち上る映像を背に、エレクトリックビートが迸る怒りを叩き出し、SUGIZOの凛としたギターのトーンは、何にも屈しない意思のように聞こえた。そこにあるのは、息もつけないほどの切迫感。「NO MORE NUKES PRAY FOR MUSIC」という文字が大きく映し出され、圧巻の幕切れを見せた。

虹色のライトに照らされながら、「DO‐FUNK DANCE」では思い切り快楽的に。惚れ惚れするような切れ味のファンキーな高速カッティングで酔わせながら、4つ打ちのビートでフロアを解き放ち、踊らせていく。ステージの右へ左へと駆け寄って煽るなど、観客へ働きかけるパフォーマンスも華やかに。SUGIZOがパッと天を仰いで音が鳴り止んだ瞬間の快感はすさまじく、逆に、この瞬間のために音を積み重ねてきたのか、と思ってしまうほどだった。「TELL ME WHY?(Ending part)」でアクトを締め括ると、最後はメンバー一列に並んで挨拶。言葉もなく、ほぼ歌声もなく、1時間余りのノンストップで圧倒した。

フィナーレは、INORANがSUGIZOの背に手を回して登場、揃って深く礼をした。1本のマイクを交互に持ちながら、ふたりは改めて観客に感謝を示す。SUGIZOは跪いてINORANを讃えると、INORANもそれに応じた。SUGIZOからは「またやろうか?もしみんなが求めていただけるのであればね」といううれしい言葉も飛び出し、INORANは互いのメンバー、スタッフへの感謝を代表して述べると、「また戻ってくると思うので」とやはり、未来を思わせる言葉を口にして締め括った。バンドメンバー全員が一列に並び長い礼をして、最後、SUGIZOが観客に手を振ってステージを後にした。

INORANは、8月24日には11枚目のソロオリジナルアルバム『Thank you』をリリースすることがすでに発表されており、アルバムを引っ提げてアジアを皮切りにツアーも決定している。また、まもなくTAKA HIROSE(FEEDER)とのバンド、Muddy Apesのツアー「Muddy Apes Japan Tour 2016 “Go Apes Go !!”」も始まろうとしている。

SUGIZOはこの日、8月から3ヵ月連続でニューデジタルシングルをリリースする旨を発表。さらには11月に5年ぶりのソロオリジナルアルバム『音』をリリース、東名阪でツアーを開催することも発表した。

なお、LUNA SEAとしては6月22日にニューシングル「Limit」のリリースを控えているほか、9月に“SLAVE限定GIG2016”を大阪、名古屋で開催、12月23日・24日にはさいたまスーパーアリーナでの公演も決定しているなど、ここに記しただけでも怒涛のスケジュールが待ち受けている。

LUNA SEAには、こうして音楽性もキャラクターもまったく異なる個性を持つギタリストふたりが存在し、それぞれに自己を研鑽し、リスペクトしあいながらせめぎ合って来たからこそ、バンドの織り成す音色はより豊かで輝かしいものになってきた――そう実感するに充分なイベントとなった“BEST BOUT”。また、INORANのMC中の言葉を借りれば、“ファミリー”を増やしても来たソロ活動の場。その場所、そこに集う人々が互いに混ざり合い、大きな多幸感に満たされた夜だった。

TEXT BY 大前多恵
PHOTO BY Keiko Tanabe(SUGIZO)
PHOTO BY Rie Suwaki(MAXPHOTO)(INORAN)

SUGIZO OFFICIAL WEBSITE
http://sugizo.com

INORAN OFFICIAL WEBSITE
http://inoran.org

最終更新:6月12日(日)17時14分

M-ON!Press(エムオンプレス)

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。