ここから本文です

高速の暫定2車線問題、改善への課題 低い安全、利用価値

乗りものニュース 6月12日(日)9時45分配信

世界的に珍しい「片側1車線の高速」

 国土交通省は2016年6月7日(火)、暫定2車線(片側1車線の対面通行)で建設した東海北陸自動車道など5区間の一部に付加車線を設置し、効果の検証を行うと発表しました。

【高速道路2015渋滞ワーストランキング】

 対象は東海北陸道の飛騨清見IC~小矢部砺波JCT間、岡山道の賀陽IC~北房JCT間、米子道の蒜山IC~米子IC間、徳島道の徳島IC~川之江東JCT間、松山道の松山IC~大洲IC間で、実施時期は未定です。

 暫定2車線区間は日本全国に2537kmもありますが、高速道路は本来、4車線(片側2車線)以上がグローバルスタンダード。片側1車線は世界的にも珍しい存在で、それが高速道路の3割を占める国はほかにありません。そもそもが異常な存在だけに、多くの課題を抱えています。

 ひとつは、反対車線への飛び出しによる正面衝突事故です。中央分離帯のない暫定2車線区間は、4車線区間に比べると死亡事故率が約2倍。近年も繰り返し正面衝突による死亡事故が起きています。

 もうひとつは、利用価値の低さです。暫定2車線区間の制限速度は70km/h。低速車に前をふさがれると、たまに設置されている4車線区間でしか追い越しが行えません。しかも、暫定2車線区間があるのは過疎地域などで、並行する一般道がスイスイ流れていることが多いぶん、時間短縮効果(=利用価値)はさらに小さくなります。地方では「夜に高速を走るのはまったく無意味」とすら言われています。

「付加車線の設置」が正解なのか? そこにある懸念

 にもかかわらず、暫定2車線区間も料金は4車線区間と同じ。危険で利用価値が低いのに値段が高いのですから、交通量が低迷するのは当然です。そして4車線化のための基準(約1万台/日)もクリアできず、暫定2車線のまま固定化が進んでいます。

 そういった現状を少しでも改善しようという方向性は、歓迎すべきものです。

 ただ今回の発表では、まだ具体的な内容が見えません。まず、中央分離帯が設けられるかどうかが不明です。これがなければ、目的のひとつである安全性の向上は望めませんが、設置されるにしても、付加車線新設区間のみになると推測されます。

 今回選定された5区間は、付近の4車線区間と比較し「25%以上の速度低下が見られる延長の割合が高く、渋滞も発生している」とされていますが、暫定2車線区間は制限速度が70km/hですから、速度が25%下がるのは当然のこと。付加車線設置区間の制限速度は上がるのでしょうか。それを引き上げない限り、法を破らなければ追い越しはほぼ不可能なのですが。

 費用対効果も疑問です。付加車線を設置するには拡幅する必要があります。暫定2車線区間も4車線分の用地は確保してあるものの、トンネル部の場合はもう1本トンネルを掘らねばならず、また長い橋の場合は架橋が必要です。そういった部分は付加車線設置の対象外になると思われますが、となると効果は非常に限定的で、逆に費用に見合うのかどうか微妙になるのです。

 どうせ拡幅するなら4車線化がベストなのは当然で、特に今回選定された5区間は、地域の重要な動脈や観光道路です。交通量も1万台/日近くかそれ以上に達していますから、一部に付加車線を設置するより4車線化が適当でしょう。

1/2ページ

最終更新:6月14日(火)10時55分

乗りものニュース