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[寄稿]韓国企業に蔓延る「職場の下請化」という疫病

ハンギョレ新聞 6月12日(日)7時42分配信

 数日前、全国の造船所を巡り、慶尚南道の巨済(コジェ)にあるサムスン重工業の下請け業務を行う配管会社を訪ねた。5月、ここで働く一人の青年が、鉄板を切り裂くグラインダーを引っ張る際に自分の太ももを切り、動脈が切ってしまったという。多量の出血をしていたこの青年は下請け業者の車両で移送されたが、2日後に死亡した。サムスン重工業が救急車(3119)を呼んでいれば応急処置を受け、死ぬことはなかった。事故を表沙汰にさせないため命が失なわれたと、同僚らは悔しがった。この工場で命を失った労働者は、今年だけでも5人。いずれも下請の社員だった。

 5月28日、九宜(クイ)駅9-4番ホームで故障したスクリーンドアを修理していた19歳の青年だけでなく、2013年1月の聖水駅、2015年8月の江南駅で死亡した青年も下請け労働者だった。6月1日には南楊州(ナムヤンジュ)市の地下鉄工事現場が爆発崩壊し、ポスコ建設の下請け労働者4人が死亡した。25年前、全国民主労働組合総連盟の応援の歓声が響き渡っていた時に歌われた労働歌謡の一節「玉浦の造船所からソウルの線路の上に」が、2016年に下請けの悲鳴となって響き渡っている。

 ソウルメトロに対し、雇用形態別人員の現状を示す資料の情報公開を請求した。今年4月末基準で、下請け労働者は4253人。現場はスクリーンドアの修理だけではなかった。電動車を整備して構内運転をする業務も下請会社に要求していた。大田(テジョン)と光州(クァンジュ)は地下鉄の駅職員まで下請化していた。コレイル(韓国鉄道公社)は線路を維持・補修する業務をコレイルテックという子会社に売り渡した。昨年8月基準でコレイルテックの正社員は44人、下請けは911人になり、非正規雇用の割合が95%を超えた。最近5年間で正社員になった下請けの職員は1人もいない。2011年12月、仁川空港鉄道桂陽(ケヤン)駅で線路を修理中に列車にはねられ死亡した5人も、すべてコーレイルテックの下請け労働者だった。

 1997年のアジア通貨危機を前後して造船所で始まった「職場の下請化」という疫病が、全国に蔓延している。生命と労働に代わり、効率とコスト削減が職場の基準となった。疫病は公共の領域をも呑み込み、若い労働者たちが次々と消えていった。

 九宜駅の事故の1次的な責任がホームを映す監視カメラを見落とした駅員にあるとし、警察が業務上過失致死罪を適用するか検討中だとする報道があった。50以上の監視カメラの一つを見落とした駅員が事故の犯人だというのである。市民の生命と安全業務を下請け業者に売り渡したソウル市、公企業の定員を一人も増やせないと直営転換を妨いだ政府の罪は、ここで問われていない。職場の下請け化は19歳の青年だけでなく、事故列車の乗務員、事故があった駅の駅職員にまで悲劇をもたらす。

 ひょっとすると私たちも九宜駅の事故の共犯なのかもしれない。聖水駅と江南駅の事故を無視していなかったなら、現代重工業の下請け労働者が死に、サムスン電子の下請け会社からの派遣労働者がメタノールで失明した時に沈黙していなかったら、少しは変わっていたかもしれない。5日に経済協力開発機構(OECD)が発表した「2016年、より良い暮らしの質指数」で韓国は調査対象38カ国のうち28位だった。週50時間以上働く労働者の比率、仕事と生活のバランス、全般的な健康状態、共同体に対する結束力は、いずれも最下位だった。沈黙がもたらした韓国社会の現実がそこにある。

 九宜駅の事故現場を訪れる市民の足は絶えない。オンラインで語られていた言葉がポストイットとなって運ばれ、9-4番ホームにたどり着いた。SNSに閉じ込められていた鬱憤が、九宜駅への行進へと進化しているのだ。諦めを宿命のように言い聞かせてきた造船所の下請け労働者らが、今は労働組合に目を向けている。「下請け共和国」「死の外注化」という伝染病を防ぐ歩みが、ようやく始まろうとしている。

「非正規雇用のない世界作り」パク・ジョムギュ執行委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:6月12日(日)7時42分

ハンギョレ新聞

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。