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工藤阿須加「職業を愛し楽しむ」 父・工藤公康から学んだ俳優としての覚悟

クランクイン! 6月12日(日)5時50分配信

 「自分の弱点がはっきりと浮き彫りになった撮影。悔しさが残りました」と映画『夏美のホタル』の現場を振り返った工藤阿須加。2012年の俳優デビュー以来、ドラマや映画への出演を続けてきた工藤だったが、本作では、廣木隆一監督のもと、主演の有村架純をはじめ、光石研、小林薫、吉行和子ら実力派俳優たちと濃厚な人間物語を展開し、多くの課題が見つかった。それでも「一つ一つ壁を乗り越えていくことが本当に楽しい」と語った工藤。こう思えるのは、俳優を志したときに父(ソフトバンクホークス監督・工藤公康氏)と交わした言葉が大きく影響しているという。

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 本作で工藤は、夢と現実の狭間で、将来に思い悩む青年を演じている。俳優の持ち味をうまく引き出すことに定評のある廣木監督の現場を経験した工藤は「すごく優しい方でした。何度も同じシーンを撮ることがあったので、はたからみたら厳しく見えたかもしれませんが、僕自身はすごく愛を感じました。ただ答えを提示するのではなく、自分で考える大切さを教えてくださいました。『映画というのはこういうものだ』というスタートラインに立たせてもらえた」と当時を振り返る。

 一方で、悔いが残ることも多かった。「『自分にはこういうものがあります』と提示し、監督の求めるものを高めていければよかったのですが、柔軟に対応できなかったんです。また自分が心に思った感情と、実際出ている表現が違うということに気づきました。技術的にももちろんですが、気持ちの向き合い方も、まだまだ足りないんだなって実感しました。頭で考えすぎるよりも、その場で感じたことを、素直に出せばよかった」と弱点や課題が多く見つかったという。

 しかし、こう語る工藤の顔は笑顔だ。「廣木監督の現場で得られたことを次にいかす……。いま目の前にある壁をどう超えていくか、すごく楽しみなんです」と前向きだ。俳優という仕事に対しても「好きでこの仕事をさせていただいているので、こういう現場を経験できたことにより、自分が変われるかもしれないと感じられることが、楽しくてしょうがないんです」と目を輝かせる。

 思い通りにならないことも多いというが、俳優業に対して非常にポジティブだ。「学生時代はテニス選手になりたかったのですが、高校1年生の時に肩を壊して挫折したんです。その時、映画が好きということもあり、自分で何かを伝える立場の人間になりたいと思ったのが、俳優を漠然と目指したきっかけです」と語り出した工藤。


 「その後、役者のオーディションを受けたら、あともう少しというところまで残ることができて。親に内緒で受けていたので、話をしたら、父親からすごく怒られて、辞退させられたんです。父には俳優の知り合いもいましたし『華やかに見えるけれど生半可な覚悟で務まる世界じゃない』って。その時は、『しっかりした思いがないままやってはいけない世界だ』と思いとどまったんです」。

 工藤は自分なりに俳優という仕事に向き合った。スポーツで挫折を経験したことにより、別の世界でもどこかで大きなブレーキをかけて逃げ道を作ってしまうのでは……という不安もあったという。それでも「小さい頃より、父がストイックに野球に取り組む姿をみていて、自分が好きでやろうと思っている職業を愛し、楽しむことができなければ、第一線では活躍できない、先にはいけないって自分の中で感じるようになったんです」と考えを改めた。すべての経験を前向きに楽しめるようになった。

 本作は「夢を持つこと」「父と子」というテーマが内在している。工藤にとっては、自分とリンクすることが多い作品だと感じているようだ。「完成した作品を観たとき、家族の顔が浮かびました。人が一番身近にあって大切にしなければいけないけれど、一番そのことに気づきにくいのが家族。人それぞれ家族の距離感って違うと思うのですが、家族の大切さを皆さんに伝えられる映画に出られたことは、かけがえのない貴重な経験でした」と作品に込めたメッセージを語ってくれた。(取材・文・写真:磯部正和)

 『夏美のホタル』は全国公開中。

最終更新:6月12日(日)5時50分

クランクイン!