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政府負債残高膨張の長期金利への影響は皆無

ZUU online 6/13(月) 11:00配信

日本の長期金利(国債10年金利)は、マクロのファンダメンタルズ要因と金融政策要因で説明できることを解説してきた。

■前提条件の確認

ファンダメンタルズ要因としては、企業貯蓄率と財政収支の合計で貨幣経済の拡張を左右するネットの資金需要(トータルレバレッジ、GDP対比、マイナスが強い)と、失業率に先行する指標として知られ内需の拡張を左右する日銀短観中小企業金融機関貸出態度DIである。

金融政策要因としては、イールドカーブのアンカーである日銀政策金利と、日銀の資金供給(マネタイズ、買いオペ)の力を示す日銀当座預金残高の変化(前年差、GDP対比)である。

これらに、グローバルな金利水準の代理変数としての米国債10年金利を加えれば、日本の長期金利がうまく推計できることが分かっている(1988年からのデータ、4四半期移動平均、98%程度の動きを説明)。

更に、マイナス金利政策の時の長期金利へのインパクトがプラスの時の何倍(1であれば同じ強さ、5であれば5倍のインパクトの強さを表す)かを表す調整ファクターを政策金利にかけることで、プラス金利下のモデルをマイナス金利下の推計に応用できる。

長期金利 = 0.189+ 0.022 中小企業貸出態度DI + 0.734 (政策金利X調整ファクター)+ 0.892 LN (米国長期金利)- 0.066 (ネットの資金需要+日銀当座預金残高変化)

この推計は、財政赤字を含んだネットの資金需要などのフローの分析である。日本の政府のネットの負債残高のGDP比は1988年の54.4%から2015年末には128.8%まで膨張している。負債残高というストックの膨張が、長期金利を押し上げているのか確かめてみる必要がある。

長期金利 = 0.543+ 0.024 中小企業貸出態度DI + 0.738 (政策金利X調整ファクター)+ 0.763 LN (米国長期金利)- 0.062(ネットの資金需要+日銀当座預金残高変化)- 0.002 (政府のネットの負債残高)

■2002年も2016年も自国通貨建て国債デフォルトは考えられない

結果は、政府のネットの負債残高に掛かる係数はゼロで(統計的に有意ではない、しかもマイナス)、長期金利に影響していることは否定され、これまでのフローの要因の重要性が再確認された。

日本国債の格下げが相次いだ2002年から2003年の間に、財務省は当時の黒田財務官(現在の日銀総裁)を中心に、格付け機関に対して抗議の質問書を出した。その時の財務省の主張である「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」というのは今でも正しい。

自国通貨建て国債であれば、政府負債の増加は、民間資産の増加を意味するため、ストックが長期金利に影響することはほとんどないと考えられる。景気過熱や過剰支出で資金需要が国内貯蓄より強く経常収支が赤字になるなどの影響を含め、金利水準を決めるのはあくまでフローの要因であると言える。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

最終更新:6/13(月) 11:00

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