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大手AVプロダクション社長逮捕、女優との「雇用関係」の有無がポイントに

弁護士ドットコム 6月13日(月)16時37分配信

アダルトビデオ(AV)の撮影現場に女性を派遣したとして、大手AVプロダクション「マークスジャパン」(東京・渋谷)の社長ら3人が6月11日、労働者派遣法違反の疑いで警視庁に逮捕された。

報道によると、逮捕された3人は2013年9月ごろ、当時、同プロダクション(=マネジメント会社)に所属していた20代の女性をAV撮影の現場に派遣して、公衆道徳上有害な「AV出演」業務に就かせた疑いが持たれている。

女性は2009年ごろ、「モデルの仕事だ」と説明を受けて、同社と契約を結んだが、その後、AVへの出演を迫られた。拒否すると「違約金がかかる」「親に請求書を送る」などと言われ、2014年の契約解除まで多くの作品に出演させられたという。

AV出演をめぐっては、NPO法人ヒューマンライツ・ナウが今年3月、出演強要の被害実態をまとめた報告書を発表して話題になった。若い女性たちが本人の意思に反して、AVへの出演を強要されるケースが相次いでいると指摘する内容だった。

●公衆道徳上「有害な業務」とは?

この報告書では、今回の逮捕容疑となった「労働者派遣法」について、下記のように説明されている。

「プロダクションと女優との関係が雇用契約であれば、プロダクションが女優をメーカー(=制作会社)に派遣する行為は労働者派遣であり、労働者派遣業を行うためには厚生労働大臣の許可が必要である」

「AVへの出演は、職業安定法及び労働者派遣法上の『公衆道徳上有害な業務』に該当するとされ、『募集』(職業安定法第63条第2号)及び『派遣』(労働者派遣法第58条)行為は、処罰の対象となっている」

つまり、雇用契約であれば、労働者派遣法の適用があるということだ。裁判例などによると、この「有害な業務」には、AVやストリップなどが含まれるという。

●プロダクションは「雇用契約」を回避する傾向にある

一方で、AV女優とプロダクションとの間では一般的に、雇用契約ではなく、業務委託契約等が結ばれていることが多い。そして、雇用でなければ、プロダクションからメーカーへ女優を派遣することは原則として「違法」とならない。

こうした現状について、ヒューマンライツ・ナウの報告書は次のように指摘する。

「一連の判例を受けて、プロダクションは、女優との契約にあたり『雇用契約』を締結することを回避し、モデル契約、業務委託契約等の契約とする傾向にある。

実態としては、女優に対して、指揮命令関係を有しているにもかかわらず、職業安定法、労働者派遣法の適用を回避するために、こうした脱法的措置が講じられていると考えられる」

●契約の「実態」がポイントに

今回、プロダクションと女性がどのような契約を結んでいたのか詳細は不明だが、報道によると、「モデルとして契約」(朝日新聞)や「所属契約」(NHK)とされており、おそらく業務委託契約等だと考えられる。

雇用契約も含めて実態はどうなったのか、弁護士ドットコムニュースがマークスジャパンに電話取材を試みたところ、応対した女性は「私にはわかりません」と述べただけだった。

労働問題にくわしい田村優介弁護士は「指揮命令関係があり、女性に指示されたことを断る自由がないなど、形式的に雇用でなくても、雇用関係があったと考えられるケースがある。今回、警察は、プロダクションと女性との間にあった契約の実態から、『雇用契約』があったと判断したのだろう」と話した。

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:7月8日(金)18時46分

弁護士ドットコム