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特捜は疑惑政治家の弁護人か?

ニュースソクラ 6月13日(月)12時20分配信

起訴できる事件を見送るようでは、検察審査会に頼るしかない

 舛添騒動にまぎれるように、甘利明前経済再生担当相が政治活動とやらの再開を表明した。「睡眠障害」を理由に4ヶ月も休んだ国会が閉じてすぐ、それも舛添要一都知事の釈明会見と同じ日に。野党が閉会中審査での甘利氏の証人喚問を求めたのは当然だ。

 「あっせん利得処罰法違反」で告発されていた甘利氏と2人の元秘書を、国会会期末ギリギリに「嫌疑不十分」で不起訴にした東京地検の処分も、大きな疑問符がつく。告発した大学教授が検察審査会に、処分は不当と申し立てた。これまた当然だ。

 週刊文春が暴いた疑惑は、千葉県の建設会社が都市再生機構(UR)との補償交渉を有利に運ぼうと甘利事務所に口利きを依頼、計600万円を本人や秘書に渡したとされる。甘利氏は金銭授受を認め閣僚を辞任、秘書らを解任した。筆者を含め検察取材経験者なら誰も、東京地検特捜部の腕の見せ所、と思ったはずだ。

 カネの授受があり、URも秘書らとの接触を認め、建設会社総務担当者と甘利氏の2ショット写真も。甘利氏に伸びるかは証拠固め次第だが、元公設秘書は確実にアウト、が常識だろう。

 立件しないとは。安倍首相の盟友の甘利氏への遠慮と、国会や選挙の日程への配慮が、透けて見える。

 かつて検察には、長く特捜部に在籍し検事総長に上り詰めた伊藤栄樹、吉永祐介(ともに故人)ら、志(こころざし)も、能力も高いお手本がいた。伊藤は「巨悪を眠らせない」と公言し、ロッキード事件の主任検事だった吉永は“首相の犯罪”を立件した。

 いまの特捜に欠けるのは志か、能力か、両方か。先輩に顔向けできまい。舛添会見には元特捜のヤメ検弁護士が同席した。OBはともかく、現役も疑惑政治家の弁護人まがい、と見なされては、検察の信用は失墜する。

 特捜検察は黒星続きだ。6年前には大阪地検特捜部の検事が証拠を改ざん、かばった部長、副部長も有罪になった。東電・福島第一原発のメルトダウンでは捜査を早々とギブアップし、検察審査会の決定で元会長ら東電3幹部が強制起訴された。本件の究明も検察審査会をわずらわせるしかあるまい。

 折しもTBS系列で、嵐の松本潤主演ドラマ「99.9―刑事専門弁護士」が高視聴率をあげる。刑事裁判の高い有罪率99.9は、検察の有能さの証しではない。本来は裁判所の仕事の有罪、無罪の判断を検察が代行している日本の刑事司法の異常さ、と解すべきだ。

 権力者にまつわる疑惑や、原発事故のように社会に広範・甚大な被害を与えた事案では、極言すれば51%の勝ち目があれば立件し、裁判所の裁きに委ねるべきではないか。

 「噛みつかない番犬」のような特捜部を税金で維持する意味があるのだろうか。いっそ特捜部を解散し、検察審査会の補助捜査機関を設ける。志と能力のある検事を募り、検察組織の指示系統から離れて事案の捜査、立件に専念してもらうのはどうだろう。

■土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)

土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)

最終更新:6月13日(月)12時20分

ニュースソクラ