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まるでアートのように新しい価値をつくり出す「成城石井」

ニュースイッチ 6月13日(月)8時20分配信

<「読学」のススメ>あらゆる面で「究極の一流」をめざす店づくり

  東京・成城といえば、関西の芦屋と並ぶ富裕層が暮らす高級住宅街として知られる。さらに成城はもともとこの地に開設された成城学園に地名の由来があり、学園都市としてアカデミックで文化的な雰囲気を特徴とする。成城学園には現在、幼稚園から大学までが同じキャンパスに設置されており、昔から「良家の子女」が通う学園として知られる。

 そんな成城という街のパブリックイメージをそのまま受け継いでいるのが、スーパーマーケットチェーン「成城石井」だ。現在はローソンの傘下に入っているが、そのブランドやコンセプトはそのままに、関東・中部・近畿に142店舗(2016年6月1日現在。フランチャイズ含む)を展開している。その独特な書体のロゴを表紙に配した『成城石井の創業』(日本経済新聞出版社)では、同チェーンの創業者である石井良明さんが、立ち上げの経緯、経営者として何をしてきたか、スーパー業界についての自身の考えなどを語り尽くしている。

 成城石井の前身は、小田急線「成城学園前駅」近くにあった石井食料品店。石井良明さんの両親が1927年に創業した果物や酒、グロサリー、菓子などを扱う個人商店だったが、良明さんが家業を継ぎ、1976年にスーパーマーケットに業態変更。その時に成城の住民をターゲットに明確なコンセプトを掲げたことが、他に類を見ない強固なブランドを築き上げることにつながった。

 成城石井のコンセプトを一言で表すとすれば、「究極の一流をめざす」となるだろうか。石井さんは、売り場の各部門の担当者に「一番良いものを売れ」と指示していた。それを受けて担当者は、「最高の品質」を求め、日本中、場合によっては海外まで自ら足を運び、五感すべてを動員して仕入れる商品を選ぶのだという。

 あのワインカラーのロゴマークは、当時多方面で活躍し評価されていた画家・グラフィックデザイナーの澤田重隆さんによるもの。店内レイアウトは、著名な建築家である橋本邦雄が手がけた。ワインをはじめとする酒類の品質は、日本の酒造業界の権威である戸塚昭さんにアドバイスを受けた。

 さらに成城石井は、レジにまで“一流”を求めている。日本セルフ・サービス協会(現・新日本スーパーマーケット協会)の顧問をしていた井上林平さんがレジ担当者の技術やマナー指導にあたり、同協会のチェッカー技能検定1級の取得者を複数出している。

<「そこまでやるか」という「驚き」を与える>

 以前から抱いていたイメージに加えて本書で成城石井の一貫したコンセプトや戦略、具体的な取り組み等を知るにつれ、成城石井は一種のアート(芸術)作品ともいえるのではないか、という思いを強くした。もちろん商業施設である以上、顧客のニーズを踏まえた店づくりをするのは基本であり、アーティストのように自らの感性を最優先に打ち出しているわけではない。しかし、顧客のニーズは前提とした上で、ニーズを新たにつくり出し、社会に新しい価値を提供する姿勢が、アーティストに似ていると思うのだ。

 たとえば私たちは、パブロ・ピカソのキュビズムと呼ばれる抽象画を初めて見た時に、新鮮な「驚き」を感じるだろう。「そこまでやるか」「こんなこともできるんだな」と、それまで自分の中になかった価値を作品に見出し、感動する。同様のことは、ガウディの建築、ビートルズの音楽など、それぞれの分野で新たな時代を切り拓く“一流”たちに共通する。それまで一般的だった様式にしばられず、不可能と思われていたことを可能にする。

 最初の出会いにおける「驚き」は、やがてそのスタイルへの「信頼」に変わる。そうしてファンが増えてゆき、“一流”のアート、アーティストとして認められることになる。

 成城石井がいかに高品質の商品を提供しているか、またそのためにどれだけのコストや手間をかけているかを知ったときにも、おそらく誰もが「驚き」を感じるに違いない。たとえば成城石井は、高品質のワインをいち早く販売したスーパーとして知られるが、ある時から「飲み頃ワイン」を売り出している。すなわち、仕入れたワインを数年から十数年間熟成させ、もっとも美味しくなった時に店頭に出す、という売り方だ。そのために成城石井は自前の倉庫で、十数年の間温度や湿度、品質を管理する体制を整えた。倉庫では独自の方式を取り入れ、フランスの専門家から「フランスにもこんな方式の倉庫はない」と驚かれたという。まさに「そこまでやるか」である。

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最終更新:6月13日(月)8時20分

ニュースイッチ

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