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藤巻亮太 3年半ぶりのアルバムを引っ提げたツアーが終了。新章の幕開け/ライブレポート・セトリ

エキサイトミュージック 6/14(火) 20:45配信

 
■藤巻亮太/【藤巻亮太 TOUR 2016 ~春祭編~】ライブレポート
2016.05.27(FRI)at Zepp Tokyo
(※画像8点)

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「“遠回りしてるんじゃないかな?”と思っても、いつかそれが役立つ」

3年半ぶりのソロ2ndオリジナル・アルバム『日日是好日』を引っ提げた【藤巻亮太 TOUR 2016~春祭編~】のファイナルが、5月27日(金)、Zepp Tokyoにて成功裏に終わった。まずは2月から弾き語り形態でのツアーを開始し、3ピース編成を経て、大阪、名古屋、東京の3公演のみこの5人のバンド編成で臨むこととなった。過去の自分を受け止め、今を全力で生きること。その先にこそ未来が見えて来るということ――アルバムを貫くそのテーゼを余すことなく体現した、藤巻亮太の新章の幕開けを感じるライブとなった。


2階から見下ろすと、1階フロアには、観客が肩から掛けたツアータオルのブルーが目に飛び込んでくる。19時6分。いよいよ客電が消え、真っ暗なステージにメンバーが登場。一人最後に合流した藤巻は、『日日是好日』から「夏のナディア」を、アコースティック・ギターを爪弾きながら歌い始める。「Yeah!」の掛け声を合図にバンド全員の演奏がスタートし、一気に会場の空気を引き込んでいった。後奏で藤巻は素早くギターをエレキに持ち替えると、右前方で激しくコードをかき鳴らし、「ハロー流星群」へ突入。ムードはソリッドに急変。アンサンブルは熱く絡み合い、今にも走り出しそうな勢いだ。かと思えば、「Weekend Hero」ではピコピコと鳴るユーモラスなシンセサウンドを取り入れて、藤巻はコードをカッティングしながらステップを踏み、軽妙さものぞかせる。熱量は高いが肩の力が入り過ぎてはいない、理想的な滑り出しだ。

MCでは、弾き語りツアーから今回の5人編成に至った変遷を振り返り、「『ONE PIECE』の仲間が増えるように、ゾロゾロと……(笑)」と表現、「楽しい。やっぱりバンドもいいね!」と率直な言葉を漏らした藤巻。「回復魔法」では、手拍子を自ら先導し観客を引き込み、長い歌メロを朗々と一息で歌う様子から、強い生命力を感じた。今思えば、「きっとすごいライブになる」という確信が芽生えたのはこの頃である。藤巻の明るい表情と凛とした立ち姿からは良いバイブレーションが放たれていて、こちらに波及効果をビシビシと及ぼしてくるのだ。そして、河野圭のピアノで幕開けたのはなんと、「太陽の下」。このように、この日のライブはごく自然にレミオロメンの楽曲も盛り込んでいくことになる。優しく、しかしそれだけではなく力強く、すさまじいエネルギーを発する藤巻の歌。悶々と内省していた“モノローグ”から、外へ、人へと向かっていく“ダイアローグ”の季節へ、確実に精神面でのギアチェンジを終えているのは明らかだった。

人を信じる力は父からの、人を愛する心は母からの……と両親への思いを切々と歌う「おくりもの」は、20代では表現しえなかったであろう感慨が痛いほどに伝わってきたし、NIVEAブランドのCMソングとしておな染みの「大切な人」では、伸びやかに響き渡る渾身の歌声を聴かせた。一度は自らの手で終わらせたバンドの曲をソロの場で披露するようになったこと、これまでに歌ったことのないテーマを歌詞で掘り下げてみること。藤巻は数々の変化、挑戦を重ねてきているのだ。


MCでは、「大切な人」の「英語バージョンも頑張ったんだからね!」との自己アピールがやぶへびに。ピアノ・イントロを河野に不意打ちで弾かれ、観客の拍手にも煽られて、「無茶ブリだね!」と抵抗しながらも一節を歌わされる(!?)という事態に陥ってしまう。その様子も含め、ニコニコ生放送で配信されていることに落ち込みながら、「気にしない、気にしない……(笑)」と唱え、ポジティブ思考に切り替える藤巻。「大切な人」は、ずっと自作曲のみを表現してきた藤巻にとっては「初めて“ボーカリストとして”呼んでいただいた曲」(藤巻)。「新しい挑戦をすることで、昨年から笑って心を開くようになりまして。レミオロメンの曲も歌うようになりました!」と心境・行動の変化を語ると、大きな拍手が送られた。これまでも語られて来たことだが、レミオロメンとは違うことをしようとすればするほど悩みに陥った、という心情をあらためて明かしつつ、「(レミオロメンには)いい曲多いですね、ホント!(笑)。自分で言うのもなんですけど……歌えるのは僕しかいないので、歌っていこうと思います!」と完全に吹っ切れた様子を見せた。


レミオロメンとソロとの線引きを無くしたことで曲作りの自由度も増し、その結果『日日是好日』を生み出すことができた、とも振り返る。「そこまで来るにはいっぱい悩んで、自分の中のオオカミと羊がせめぎあって……」と語り繋ぐ言葉に、次なる曲を察知した観客からは、「ああ!」という歓声が飛ぶ。そう、ソロ1stアルバムの表題曲「オオカミ青年」だ。「ザラッというかドロッというか、ギザギザした気持ちも捨てたくない」との決意表明を添えながら、獣の唸り声を思わせるコーラスから始まるこの生々しい曲を歌い始めると、両足でしっかりとステージを、いや、その下にある大地を踏みしめるようにして立ち、ヒリヒリとした魂の雄叫びを放つ藤巻。迫真の素晴らしい歌だったが、今現在、彼がその苦悩の渦中にいないこともまた明白で、胸に迫ったのは“等身大のリアルさ”ゆえではない。過去を乗り越え、しかし忘れ去るのではなく、それを踏まえた上での今という時を生きている……そんな藤巻の覚悟を決めた佇まいこそが、何にも勝るパワーを与えてくれたのだった。ディープな世界はまだ続き、途方もない孤独を思わせる「月食」へ。<受話器を置いてしまった二人>が示す、コミュニケーションへの諦念(ていねん)とその悲しみを、気怠い歌声と荒れ狂うようなシューゲイズ・ギターサウンドが浮き彫りにする。以前に比べ、遥かに伸びの良くなったファルセットには、進化を遂げた藤巻の“今”を感じるわけだが、その表現力の向上が曲がもともと宿していたやるせなさを一層増強させていた。立ち尽くして聴き入っていた観客は、音が途切れると同時に、惜しみない大きな拍手を送った。


心の深淵(しんえん)を覗くシークエンスの後は、思わず体が動き出すような楽曲を連打。まずは、和テイストのメロディーが美しい一方で予測不能な展開を見せる、レミオロメンの「花になる」。後奏で藤巻は左右にピョンピョンと跳ねてリズムに乗っていた。続けて、臨戦態勢のボクサーのようなステップを見せた後、藤巻流ロックの最新進化形「かすみ草」を放つ。やはり歌メロは極めて美しいのだが、スリリングに明滅するライトの中、複雑な5拍子の演奏で観客を幻惑する、一癖も二癖もある曲。「皆の、付いて来られない感じがよかったです(笑)。皆で作っていこうね、ノリ方(笑)」(藤巻)と直後にMCで語ったように、ノるにはリズム的に難易度が高いのだが、カッチリと噛み合ったバンド演奏が生み出すパワー、疾走感は計り知れない。今後、藤巻のライブにおいて重要な役割を担うようになるだろう。「3~4年前のお正月に、家から一歩も出ず、こんな曲を作ってました。初詣にも行かず、おせちも食べず」と「かすみ草」が生まれた当時を振り返った藤巻。「『自分はこれでいいのか?』と考えている時に、(アルピニストの)野口健さんに出会って。検索しても出て来ないような山に登ったり……(笑)。音楽漬けだった僕の人生に山、旅が入ってきて。一見遠回りかもしれないけど、客観視できて、一個一個、自分のことを認められるようになったんです。皆も『遠回りしてるんじゃないかな?』と思っても、いつかそれが役立つかもしれないから」と温かく語り掛けると、「go my way」(アニメ『エンドライド』のエンディングテーマとしてOA中の、最新配信シングル曲)へと繋げた。アコースティック・ギターのアルペジオに合わせ、自分の道を行けばよい、というメッセージを放つこの曲を真っ直ぐに歌い届けていく。


リズムに乗せて頭を気持ちよさそうに振りながら笑顔で歌い終えると、「ここから、さあ、盛り上がっていきましょう!」と次曲「My Revolution」のイントロに乗せてシャウト。「そんなもんじゃないでしょ~?」「日頃のイヤなこと忘れて!」「楽しいことだけ思い浮かべて!」と観客を煽りながら、コール&レスポンスを繰り返し、一体感を強めていく。続くレミオロメンの「スタンドバイミー」はイントロでドッと湧き、頭上での手拍子にノせられながら、藤巻はステージを左、右と端から端まで移動してギターをプレイ。メンバーも一撃ごとに大きなアクションを伴って音を放ち、会場の熱気が高まると同時に、開放感も広がっていく。間髪入れず畳み掛けたのは、「花になれたら」。「行くぜ、東京!」と藤巻は叫び、ノリにノッた様子でギターを演奏。しかし、決して一人で突っ走るのではなく、バンドの音をしっかりと受け止めた上で自由に、伸び伸びと歌っているのも分かる。躍動的なサウンドに身を任せていると、<何度でも僕は甦る>というフレーズがすっと心に入り込み、すんなりと腑に落ちるのを実感した。


「いやぁ~、さすがファイナルですね! ありがとうございます」と、熱気と盛り上がりに感謝を述べると、いよいよライブは終盤へ。禅の言葉である「日日是好日」は、悩んでいた時にピッタリと来た言葉だった、と藤巻は明かし、「過去である“昨日までのレミオロメン”と違うことをしようと思うと、(心が、表現が)痩せていく。一人でソロできるか?と悩むのは、未来。そして、今どうすることもできないのが、過去・未来。そのエネルギーを、今日生きることに注ぎ込む」。そんな意味を持つ“前向きな言葉”にパワーを得たと語り、「日日是好日」を披露。これみよがしに泣かせるような壮大な曲ではないのだが、<今日はいい日だな>という、思わず零れる本音、といった温度感がしみじみと味わい深い。落ち着いたテンションと内なる自信を感じさせる凛とした歌声が胸を打つ。ソロ始動以降の藤巻の悩み多き歩みに想いを馳せると、思わず、深く感情移入してしまうのだった。

ブルーの揃いの法被をおもむろにメンバーと共に羽織ると、「急に商店街の会長さんみたいになりますけど(笑)」と冗談めかしながら、「今日来てくれたみんなの未来が、明日がキラキラするような“春祭”をお届けしたいと思います」と曲紹介。ツアータイトルにも冠されたこの曲は、アルバム制作の最終段階で生まれた、とインタビュー時に藤巻が語っていた実験作。<一度きりの人生だ><やりたい事をやってやれ>という歌詞にもある通り、元来持っていた遊び心が解き放たれ、創作上何の心理的制約もなく藤巻が音楽を生み出してることが感じ取れる、楽しく魔訶不思議なお祭りナンバーで本編を締め括った。


ほどなくしてアンコールで登場すると、レミオロメンの「南風」を披露。続いて、「8分前の僕ら」をスタンドマイクでほぼ直立不動の姿勢で歌唱。真っ直ぐに、聴き手に優しく手を差し伸べるような、包容力のある歌声を届けた。鳴りやまない拍手に応じ、一人再登場した藤巻は、レミオロメンの「3月9日」をアコースティック・ギターの弾き語りで披露し、ところどころ観客にマイクを向け、共に声を合わせた。代表曲に数えられるこの名バラードは決して色褪せることがないし、この曲を素直に歌うことができる今の藤巻の良好なモードを思うと、清々しい気持ちになった。

最新アルバムの収録曲を中心としながらも、ソロ活動におけるターニグポイントとなる曲、そしてレミオロメンの楽曲をもさりげなく配したセットリストは、今の藤巻を形成する“成分表”のように思えてならなかった。新しい曲だけが今の藤巻なのではなく、悩み苦しんでいた過去があるからこそ、今がある……アルバム『日日是好日』誕生の土台となった、その大きな気付きと真実こそがこの日のライブに通底している、と感じたからだ。歌も演奏も、これまでの藤巻のソロ史上屈指のクオリティーであったことは間違いない。過去があり、それを丸ごと受け止めて今を生きているからこそ、新しい未来が自ずと見えて来る――そんな摂理をすんなりと納得できる、深い心の体験を与えてくれた夜だった。
(取材・文/大前多恵)

≪セットリスト≫
1. 夏のナディア
2. ハロー流星群
3. Weekend Hero
4. 回復魔法
5. 太陽の下
6. おくりもの
7. 大切な人
8. オオカミ青年
9. 月食
10. 花になる
11. かすみ草
12. go my way
13. My Revolution
14. スタンドバイミー
15. 花になれたら
16. 日日是好日
17. 春祭
<アンコール>
1. 南風
2. 8分前の僕ら
3. 3月9日

最終更新:6/15(水) 20:30

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