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『Mighty No. 9』稲船敬二氏インタビュー――日本代表のゲームだと思って応援してほしい【前編】

ファミ通.com 6月14日(火)12時2分配信

●ゲームをよくするにはファンのアツい意見が必要
 スパイク・チュンソフトから2016年6月21日配信予定(※)のニンテンドー3DS、プレイステーション Vita、Wii U、プレイステーション4、プレイステーション3、Xbox One、Xbox 360用ソフト『Mighty No. 9』。本作は、稲船敬二氏率いるcomceptとインティ・クリエイツが手掛ける横スクロールアクションゲーム。クラウドファンディングサービス“Kickstarter(キックスターター)”、“Makuake(マクアケ)”で4億円以上もの資金調達に成功し、注目を集めた。

 今回、ファミ通.comでは、『Mighty No. 9』について稲船敬二氏にインタビューを実施。クラウドファンディングの導入に至った経緯や、本作へ懸ける想いなどをうかがった。
※ニンテンドー3DS版、プレイステーション Vita版の配信日は後日発表。

――まず、『Mighty No. 9』のプロジェクトがスタートした経緯を教えてください。

稲船 comceptという会社を立ち上げた目的のひとつが、“自分たちのゲームを作りたい”からでした。これまでも自分たちのゲームを作ることはできましたが、その作品は会社のものになってしまうし、自分がこうしたい、ファンの意見をこう取り入れたいと思っても、会社の意向や販売戦略に合わなければできません。自分が作りたいものと、ファンが僕に望むものを考えたときに、選択肢のひとつとして“昔ながらの横スクロールアクションゲーム”がありました。

――『Mighty No. 9』は、クラウドファンディングサービス“Kickstarter”や“Makuake”で出資者を募集されましたが、なぜクラウドファンディングを利用されようと思われたのでしょうか?

稲船 大手のゲーム会社に資金を出してもらうと、その会社に作品が帰属し、自分たちのゲームではなくなってしまいます。それでは意味がないので、ほかの方法を模索したときに、最初に頭に浮かんだのがクラウドファンディングでした。よく「稲船さんに『ロックマン』を作ってほしい」というファンの声を耳にするのですが、『ロックマン』そのものは作れませんし、ファンが本当にそれを望んでいるのか確認することもできません。それなら、僕が培ってきたノウハウを活かした横スクロールアクションゲームで、それを本当にファンたちが望んでいるのか確かめたい気持ちもあり、成功するかはわかりませんが、一か八かチャレンジする価値はあるだろうというのが経緯です。

――なるほど。クラウドファンディングによるゲーム開発は、これまで取り組まれてきたゲーム開発とどこが違うのでしょうか?

稲船 支援者に対してよりケアしなくてはならない、というのがクラウドファンディングの特徴のひとつだと思います。プロジェクトと応援してくれる人が直結しているので、支援者の意見や要望にしっかり対応するなど、応援し続けてらえるような取り組みが重要だと考えています。

――どのような取り組みをされたのか、具体的に教えていただけますか?

稲船 クラウドファンディングの欠点として、資金は集まったのにその後のフォローができず、プロジェクトそのものがなくなってしまったり、発売に至らないというケースが多々あります。僕はファンの意見の取り入れ方が今回のゲームづくりの本質だと思っているので、支援者たちとのコミュニケーションがしっかり取れるように、開発チーム内にコミュニティーチームを設けたり、内部スタッフをコミュニティーマネージャーに配するなど、相当の労力を費やしました。

――コミュニティーでは、デザインコンテストやアンケートといった企画が用意されていて盛り上がっていましたね。

稲船 自分の作りたいものを作ると言いつつも、迷ってしまう部分もあるので、そういうところはアンケートを取ったり、ゲーム内に入れるキャラクターのデザインを募集したりしています。支援者は特典としてコミュニティーに参加できるので、本当にファンといっしょに作っているゲームになっていますね。

――ファンにとって自分の意見やキャラクターを取り入れてもらえるのはうれしいことですね。

稲船 本音を言うと作業の手間としてはたいへんなんですが、いいゲームにしたいと思うならファンの意見を取り入れることが必須なんですよ。リスクを負ってお金まで出してくれて応援してくれる人の意見って相当アツいものじゃないですか。ゲームをよくするためには、そういう人たちの意見が必要なのだと思っています。

――ファンからのアツい意見や要望をゲームに反映するのは、かなりたいへんな作業だと思うのですが。

稲船 コミュニティーから情報を吸い上げてまとめるのに手間は掛かりますが、それほどたいへんではありません。いちおう僕らはゲーム作りのプロですので、基本的にファンが寄せてくれる意見の大半は、ほぼ想定内の内容なんです。もちろん、ファンの中にはゲーム会社に勤めている人もいると思いますが、僕らの考え以上の意見が挙がることは少ないですね。ですが、「こっちもいいけど、あっちもいいよね」と選択肢が複数あるときに皆へ意見を聞いて、8割から9割の人が「こっちがいい」と選んだものはすごく心強い後押しになりますし、深く考えすぎて「これはふつうすぎるから、あっちがいいんじゃないかな?」と思っていても、ほとんどの意見が「いいやこれがいいんだよ」と選んだ場合は、この手のゲームが好きなファンは、「やっぱりこっちが好きなんだな」と確認できます。いいゲームを作るためにファンの意見は欠かせない情報ですね。

――ファンとのやり取りで印象に残っているエピソードはありますか?

稲船 本作では、“Unreal Engine3(アンリアルエンジン3)”というゲームエンジンを使用しているのですが、支援者の中にアメリカのゲームスタジオで働いている一流のエフェクトアーティストがいて、リポート用紙10枚に渡って“Unreal Engine3”のクセがびっしり書かれたメッセージをもらったことがあります。

――それはすごいですね。

稲船 ほかにも、キャラクターデザインを募集したときに、ほとんどの作品はそのまま使うことができず、プロがちゃんとしたデザインに直さなくてはならないのですが、「これは、『Mighty No. 9』のデザインをわかっているな」と感心するほど、完成度の高い作品が送られてきたこともありました。直すところがほぼなくて、このままでいいんじゃないのっていうくらい(笑)。

――ファンの熱意が伝わってきました。では、クラウドファンディングを実施してみて、苦労したことや驚いたことなどを教えてください。

稲船 コミュニティーの運営や支援者へ贈る特典のグッズ作成など、ゲーム作りだけに専念できないところですね。グッズを作ってくれる会社や工場の選定から、デザインチェック、コスト管理まで、すべて行わなくてはならないので思いのほかたいへんでした。

――ゲーム開発だけではないんですね。

稲船 よく、「4億円も使えるなんてすごいですね」と言われるのですが、そんなに使えることは、まずあり得ません。ゲーム開発に使用できるのは多くて60%。残りの40%は特典など、ゲーム以外のところに飛んでいくので、コストの管理がたいへんでした。会社として考えたときに、ほかのプロジェクトの売り上げでこれらのコストを補うことができるので、僕らもそれでなんとか乗り切っていますが、ひとつのプロジェクトしか取り組んでいなかったら、補う部分がなくて失敗してしまいます。会社と個人でクラウドファンディングの難しさの違いはあると思います。

――日本での発売がスパイク・チュンソフトさんに決まった経緯を教えてください。

稲船 選択肢はいろいろあったのですが、いちばん簡単な方法は自社で発売すること。ですが、それではほとんどのファンが発売されたことを知らず、口コミで広がっていくというレベルに留まってしまいます。インディーズゲームならそれでもいいのかもしれませんが、『Mighty No. 9』は大手のゲーム会社から発売されるタイトルに対抗できる作品だと思っていたので、パブリッシングのプロにお願いすることにしました。

 今回のインタビューはここまで! 後編は、ソフトの配信日となる2016年6月21日公開予定なので、そちらもお楽しみに!

Mighty No. 9
メーカー:スパイク・チュンソフト
対応機種:ニンテンドー3DS / PlayStation Vita / プレイステーション4 / プレイステーション3 / Wii U / Xbox One / Xbox 360
発売日:2016年6月21日配信予定(※)
価格:各2500円[税抜](各2700円[税込])(※)
ジャンル:アクション

最終更新:6月14日(火)12時2分

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