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バイエルによるモンサント買収、難題が山積

ニュースソクラ 6/14(火) 16:00配信

除草剤の安全性に疑問の声、米独禁法に引っかかる可能性も

 ドイツの医薬・農薬大手のバイエルは、5月10日、遺伝子組み換え種子の世界最大手、米国のモンサント買収の意向を公表した。さらに同月23日に買収提示額は、総額620億ドル(約6兆8200億円)と発表した。

 バイエルのヴェルナー・バウマン最高経営責任者(CEO)は、害虫雑草除草剤などの化学技術で、欧州・アジアの市場をリードするバイエルと、遺伝子工学種子で南北アメリカ大陸市場を独占するモンサントのシナジー効果を見込んでいる。農作物収穫を安定させ、異常気象などによる予期できない食糧危機に対抗できるとも語る。

 5月23日に行われた投資家、記者向け説明会では、バウマンCEOは、デジタル農業を普及させると述べた。具体的には、3年後に、年間、15億ドル(約1670億円)のライフ・サイエンス部門での追加純益をあげられると言及している。

 バイエルの買収提案の発表前、ドイツ大手化学会社BASFでも、一時、モンサントを買収する動きもあったもよう。欧州連合・米国包括的貿易投資協定(TTIP)締結交渉を前に、欧州の企業グループが、米国に世界経済の覇権を渡さないよう牽制する動きともとれる。

 しかし、モンサントの欧州での一般受けは必ずしもよくない。遺伝子組み換え技術により自然循環に手をいれ、ダメージをあたえているとの悪いイメージがあるからだ。環境保護団体グリーンピースの調査によると、遺伝子工学技術を応用した農作物(GMO)、例えば、綿、大豆、とうもろこし、菜種、果物、野菜等には、何らかの形で、モンサントが技術を提供、あるいは取引でかかわっている。農作物用種子業界での市場シェアは、26%とトップだ。

 しかも、発がん性リスクを疑われている除草剤グリホサートの拡販問題もある。欧州、特にドイツは、モンサントの経営方針を非常に懐疑的に見ている。展開する工業型農業の実態をみると、長期的環境連鎖反応および健康への思わぬ悪影響が指摘されている。買収提案の発表直後、バイエル株は、10%程度下落。その後、回復の兆しはあるが、それまでの株価レベルを下回っている。

 モンサント 側は、受け入れを拒否。ブレット・ベーゲマンCEOは、ごく少数の投資家とロイターのレポーターを前にして、「バイエルによる買収にのっても、何もいい点はない」と語っている。

 バイエル側内部からも、今回の買収オファーの仕方、特に金額提示をもっと慎重にすべきだったのではとの意見もでてきている。実際、ニューヨークにあるグローバルM&A(合併・買収)に関するコンサルタントのフライド・フランク・ハリス・シュライバー&ヤコブソン 社のスティーヴン・シャインフェルド氏も、買収オファーをするのであれば、もう少し、バイエルは、慎重な準備過程が必要だったのではないかとのコメントをしている。

 両者の株価詳細を見ると、モンサントは、買収提案の発表前は97ドルだったのが、発表後は、110ドルで推移、バイエルにとっては、有利な状況ではある。バイエルの株主、ロイヤル・ロンドン・アセットマネジメントは、モンサントが今回の提案に前向きになるようなら、相乗効果が見込めるので130~135ドルまで上昇する可能性もあるとみている。

 両者の買収劇での隠れた争点は、欧米当局の動きだ。まず気になるのは、欧州でのモンサント製の除草剤グリホサートの安全性調査結果のなりゆきだ。5月下旬、ドイツ連邦の食料品安全調査庁とEUの食料品安全委員会が、90,000ページ353のチェック項目リポートをあげ、特に人体に有害ではないとの結果を出してはいる。しかし、環境保護団体、一般市民らが、このレポートに対し、政治工作がはいっているとし、不信感を表明している。

 一方、バイエルは、米国の環境保護庁から、すでに導入している米国市場でのバイエル製の除草殺虫剤を引き上げよとの、指導をうけている。が、それには、従わず、欧州の基準にしたがい、安全であるとの強いスタンスをとっている。今後、欧米間での除草剤安全性についての摩擦が、十分に予想される。

 また、米国の大規模農家、一般市民が、モンサントからのスポーツをふくむさまざまなスポンサーシップが削除されると危機感をもち始めている。過熱する大統領選で、候補者が言及するようなら、買収劇への影響もあるだろう。

 さらに、見逃してならないのは、アメリカ合衆国司法省 が、独禁法を適応し、今回の買収案を崩す可能性だ。2007年にモンサントが、その傘下にあった綿の子会社をバイエルに売却しようとして司法省に阻止された前例もある。

 このような過去の経緯、関係者からの反響を考慮すると、バイエルによるモンサント買収はかなりの時間がかかると見るべきだろう。

■シュヴァルツアー節子(在ミュンヘン・ジャーナリスト)
慶応大経済卒、外務省専門職として在英国大使館勤務、オックスフォード大学留学。ドイツでの日系企業勤務を経て、大手新聞の助手など務める

最終更新:6/14(火) 16:00

ニュースソクラ

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核融合こそ未来のエネルギー問題への答えであり、子どもにだって世界は変えられる、テイラー・ウィルソンはそう信じています。そして彼はそのどちらにも取り組んでいます。14歳の時に家のガレージで核融合炉を作り、17歳となった今、直前の依頼に応えてTEDのステージで自分の物語を(手短に)語っています。