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良品計画・松井忠三前会長が明かす 無印良品、絶好調のヒケツ(上)

ニュースソクラ 6/15(水) 12:20配信

【ニュースソクラ編集長インタビュー】「社風」と「仕組み」が 成長の源泉

 雑貨店「無印良品」を展開する良品計画が絶好調だ。躍進の背景に何があるのか。2001年から2015年にかけて同社を率いた、松井忠三前会長に話を聞いた。(聞き手はニュースソクラ編集長・土屋直也)

 ――松井さんは2015年の5月20日の株主総会で、良品計画の会長職を退任されました。現在は名誉顧問という立場ですが、退任から1年が経って、外から古巣をどう見ていますか。

 会社はうまく動いていると思います。社長と会長をそれぞれ7年ずつやりましたが、最後の3~4年はどうやってバトンタッチをするかを考え続けていました。突出した経営者のもとで上手くいってても、引継ぎで失敗する会社を多く見ていましたからね。そうならないための準備はしてきたつもりです。

 ――引継ぎに向けて、どのような施策を講じたのですか。
 
 会社というのは6~7年で世代交代していくものです。良品計画が100年続く企業になるためは、人間の構成を超えたシステムが必要です。つまり、誰がやっても、安定して成長していけるようにしなくてはならない。そのために、私が取り組んだのは、「社風」と「仕組み」をつくることでした。

 ――どちらも経営者にとって大きな課題です。とくに社風は一朝一夕には変えられません。
 
 社風は現場の地道な努力によってのみ出来上がるものです。たとえば、店舗にチリ一つ落ちていない、清潔な社風をどうやって作るのか。掃除係の人だけでなく、すべての社員が下を向いて歩き、常にゴミを拾うことを徹底して、はじめてそれは実現するのです。挨拶ができて、残業のない良品計画のカルチャーも、あくまで一つ一つコツコツと積み上げていった結果です。

 ――地道に社風を構築していく一方で、仕組みづくりにも取り組まれました。
 
 無印良品の店舗売上高が急激に下がっていた時期に、私は社長に就任しました。不良在庫の処分や不採算店舗の閉鎖といったリストラに取り組む一方で、事業が右肩下がりとなった「敗因」を探っていきました。そして、商品開発の仕組みが創業時から進化しておらず、時代に取り残されていったのが最大の原因だという結論に至りました。

 ――モノづくりの構造を変える必要があったのですね。
 
 百貨店のクオリティを七掛けで売る、という80年代の発想が限界に来ていました。元来、「MUJI」は禅や茶道といった日本文化に代表される、ムダのないシンプルさをモチーフとしたブランドです。これを、世界に持っていったら、どうなるのかと考えて、「ワールドムジ」というコンセプトを立ち上げました。

 ――ワールドムジの商品開発はどのような仕組みだったのでしょうか。
 
 イタリアの巨匠と呼ばれる家具職人や、ドイツのトップデザイナーは、優れた強度を持つシンプルな椅子を、コストにハメながら作る方法を良く知っています。彼らとワークショップを一緒にやりながら、商品開発をしました。MUJI本来のコンセプトを大事にしつつ、世界中のデザイナーと協力することで、以前はいまひとつヒットしなかった、キングサイズのベッドやソファが飛ぶように売れていきました。

 ――しかし、衣料品は難しかったのではないですか。無印良品のシャツやパンツは以前、トレンド感に乏しい「西友の衣料品」と揶揄されていました。
 
 確かに苦労はしましたが、2003年にヨウジヤマモトさんと一緒にモノづくりを始めました。すると、潮目が変わりました。ヨウジさんは一年を通して、ミラノやパリ、ニューヨークなどのファッションショーを回っています。来年のカラーやトレンドを熟知しており、それを商品開発に反映してくれるのです。企業のマーケティングでは到達できない領域です。お客様の反応も劇的に変わりましたよ。

 ――有名デザイナーと組むだけではなく、オブザベーションにも力を入れたそうですね。
 
 一般の方の自宅にチームで訪問して、どのようなシーズがあるのか把握します。壁につけられる家具、自立する掃除用品、お風呂場の整理用品などは、お客様のキャッチボールのなかから、生み出された商品です。特許をほとんど持たない無印は、あくまで「使い勝手」で他社の商品と戦っています。そのためには、徹底的にお客様の声に耳を傾ける限ります。

 ――ズレない「直角靴下」は無印良品の人気商品の一つですが、ユニークな商品はどのように開発されるのでしょうか。
 
 もともとはチェコスロバキアのおばあちゃんが家族のために作っていたモノですが、良品計画の海外駐在員の奥様がこれは便利だとアイディアとして提供してくれたのです。こうした世界中の人々の生活のなかで生まれ、なおかつMUJIのコンセプトに合ったものを見つけ出す「ファウンドムジ」も仕組み化されています。香港やシンガポールには拠点があり、各国の「良いモノ」を日々探し出しています。

 ――そうした取り組みの結果、2003年頃から客足が戻り、良品計画の業績は再び伸びていったのですね。
 個々人の力量のみに頼るのではなく、会社として仕組み化することで、商品開発力は格段に向上していきました。ニトリさんやユニクロさんといったライバルとも互角に戦えるようになってきました。もちろん、10~20年が経てば、仕組みの見直しが必要になってきます。「改廃」まで含めた仕組みのなかに入れることが、極めて重要なのです。

構成・河野嘉誠

■松井忠三(まつい・ただみつ) 株式会社良品計画名誉顧問。
1949年静岡県生まれ。73年、東京教育大学(現・筑波大学)体育学部卒業。西友ストアー入社後、92年に良品計画へ。総務人事部長、無印良品事業部長を歴任。2001年には社長に就任し、赤字状態からのV字回復を実現する。08年から会長、15年から名誉顧問。ベストセラーになった『無印良品は、仕組みが9割 仕事はシンプルにやりなさい』(角川書店)など、著書多数。

■土屋直也(つちや・なおや) ニュースソクラ編集長
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設

最終更新:6/15(水) 12:20

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