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「インドネシア・鉱業法改正の行方」(上)=鉱石禁輸、「完全実施」期限まで半年

鉄鋼新聞 6月15日(水)6時0分配信

 インドネシアの鉱石輸出規制の動向に再び注目が集まっている。同国は2009年に公布・施行した新鉱業法に基づき、14年1月から未加工鉱石の輸出禁止政策を継続している。銅精鉱については17年までの3年間に限り、条件付きで輸出継続を認めていたが、その期限があと半年に迫っている。現在は鉱業法改正に向けた動きを進めているが、同国内でも銅精鉱の輸出継続や現在輸出を禁止している未加工鉱石の輸出再開などでさまざまな意見が錯綜しており、輸出規制政策の行方は不透明なままだ。

 数年前までインドネシアは、日本にとって銅、ニッケルの主要輸入国の一つだった。日本が輸入する鉱石輸入量のうち、インドネシア産の鉱石は銅精鉱が約1割、フェロニッケルの原料となるニッケル鉱石は約4割を占めていた。だが、同国の鉱石輸出禁止政策の開始でニッケルは「ゼロ」、銅の輸入割合も14年は大幅に低下した。ニッケルでは、日本のフェロニッケルメーカーがフィリピンとニューカレドニアからの代替調達を図ることで必要な鉱石量は確保したが、同国の鉱石輸出禁止が鉱石価格の高止まりを招き、コスト面で大きな影響を受けている。
 銅精鉱については、現状はチリからの輸入が多く、インドネシアは「2番手グループ」の一角。全体に占める比率は1割程度とそれほど高くないが、仮に17年から輸出禁止が始まれば「数字以上のインパクトがある」との指摘がある。調達先の多極化(及びリスク分散)という面や、南米など遠方の調達先だけでなく、近隣であるアジアに調達先を持っておくメリットは小さくないという。
 同国の未加工鉱石輸出禁止政策は、09年の新鉱業法に盛り込まれた「鉱物資源の高付加価値化義務」による。同政策は施行期限の14年1月に実施され、鉱石を同国内で製錬する義務を課し、ボーキサイトや低品位ニッケル鉱石などの未加工鉱石の輸出を禁止した。一方で一定の純度に高めた銅などの精鉱類は、輸出税の賦課と許認可の取得を条件に16年末までの輸出を認めた。ただし、銅精鉱の輸出の許認可(6カ月更新)をとるためには製錬所の新設か第三者との共同製錬(もしくは国内製錬所への販売契約)の計画を政府に提出し、更新時に進ちょくを報告することが求められている。
 当然ながら国内外から輸出規制緩和を求める声が上がり続けたが、同国政府は輸出規制の姿勢を堅持。昨秋から始まった今回の鉱業法改正の話し合いでも当初のテーマは09年の新鉱業法で行き過ぎた「地方分権の是正」だった。これは鉱業権付与の権利を地方に渡したことによる鉱業権の乱立と鉱区の重複による訴訟の多発、安全や環境を無視した違法採掘が各地で起きたためで輸出規制緩和は話し合いの俎上に上がっていなかった。
 一方で規制緩和を実行すべきだという意見は根強く残っていた。国内製錬所の新設は政府の目論み通りに進まず、そこに金属価格の下落が追い打ちをかけた。鉱山の採算が急速に悪化するとともに、事業性の悪化と資金不足で製錬所が新設できないという声も上がり始めた。こうした状況を受けて昨年初めごろから鉱業を所管する同国のエネルギー鉱物資源省(MEMR)の局長クラスからは「現実的な路線に回帰すべし」という声が出ていたが、政府や他省庁から賛同を得られず、鉱石輸出規制の緩和を求める意見は立ち消えていた。
 その状況がようやく変わったのは今年に入ってからだ。同省の大臣がその意見を認め、国会に掛けあい、エネルギー鉱物資源や環境などを担当する国会第7委員会もその意見に賛同する姿勢をみせた。そこで議論した結果、政省令の改正では法令間の齟齬が生まれる可能性があるとして輸出規制緩和を鉱業法改正の中に織り込まなければならないという結論に至った。こうした経緯を経て、国会第7委員会で現在策定が進められている改正法案の重点テーマは(1)地方分権の是正(2)鉱石輸出規制の緩和(3)COW(旧鉱業事業契約)の取り扱いの見直しの3点となっている。同国政府では今年の9月末までをめどに改正法案をまとめたい考えだが、14年1月の鉱石輸出禁止の発動も期限日ぎりぎりでの実施となったことなど、これまでの経緯から現地の有識者などからは「9月末までにはまとまらないのではないか」との声が多数上がっている。それでも「年内にまとめないと鉱石輸出禁止の緩和とCOWの取扱いの見直しは間に合わなくなる」との声もあり、年内には何らかの形で政府案が示されるという見方もある。(相楽 孝一)

最終更新:6月15日(水)6時0分

鉄鋼新聞