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社説[宮古陸自配備計画]住民の不安に向き合え

沖縄タイムス 6月16日(木)5時0分配信

 宮古島への陸上自衛隊配備を巡って、下地敏彦市長を支える与党市議10人が、旧大福牧場周辺で計画されている駐屯地建設に反対する考えを表明した。
 予定地近くに島内最大の湧出量を誇る「白川田水源」があり、地下水への影響を懸念する声が強く、市民の理解を得ることが困難だからだ。
 直接口に含み、入浴にも利用する水の安全性への関心は高い。飲料水のすべてを地下水に頼る宮古島ではなおさら。地域利益を行政に反映させる役割を担う議員が、住民の声を代弁し、将来にわたって安心できる水の確保を求めるのは当然である。
 宮古島では旧大福牧場と千代田カントリークラブの2カ所に、自衛隊の地対空・地対艦ミサイル部隊、警備部隊など約700~800人を配備する計画が進んでいる。うち旧大福牧場地区には、拳銃、小銃、機関銃などの射撃訓練に使う覆道射撃場、火薬類を保管する貯蔵庫、車両整備場などが建設される予定だ。
 地下水汚染の懸念を指摘したのは、配備による水源への影響を審議していた市地下水審議会学術部会である。
 学術部会は3月にまとめた報告書で「油脂・薬物などの漏出がまったくないとは判断しがたい」「設置は予防原則的に不適切」「有事の際、攻撃による水質汚染などが発生しうる」とし、施設の建設・運用は「認められない」と警鐘を鳴らした。
 「命の水」を守るため、地質学などの専門家が出した判断である。懸念を置き去りにしたまま、配備が進むようなことがあってはならない。
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 学術部会の報告書案を巡っては、市政に多様かつ専門的な意見を反映させる目的で設置された第三者機関の独立性を脅かす問題も明らかになっている。
 下地市長の指示を受けた長濱政治副市長が、施設の建設・運用は「認められない」とする結論を削除し全体的に表現のトーンを弱めた文言に書き換えるよう求めたのである。
 出てきた意見が市の方針と異なっていたため削除を求めたのだろう。結論部分に手を加えるにいたっては、隠ぺいや改ざんととられても仕方がない。それ自体重大な問題だ。
 自衛隊配備ありきの強引な行政運営に、市民から疑問や怒りの声が相次いでいる。計画見直しの声の広がりは、この住民の不信感を背景にしている。
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 学術部会の報告書がまとまった後、沖縄防衛局は施設の配置を修正した図面を市に提出した。事前協議がいらないよう水道水源保全地域からわずかにずらした案である。しかし水源の近くにあることに変わりはなく、地下水への影響を心配する声は残る。
 一連の問題で市は、審議会や学術部会の議事録公表を拒み続けるなど、情報開示にも後ろ向きだった。
 説明責任や情報公開をないがしろにして、一方的に計画を進めるようなことがあってはならない。計画受け入れをいったん拒否し、住民の声に真摯(しんし)に向き合うべきだ。

最終更新:6月16日(木)5時0分

沖縄タイムス