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【6月米FOMC】予想通り、政策金利据え置き。7月追加利上げの可能性は大幅に後退

ZUU online 6/16(木) 20:00配信

■金融政策の概要:予想通り、政策金利を据え置き。

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が6月14-15日(現地時間)に開催された。市場の予想通り、FRBは政策金利を据え置いた。

今回発表された声明文では、景気の現状認識について、成長率や家計消費の評価を上方修正する一方、労働市場については回復ペースの鈍化を指摘した。

景気見通しについては、大きな変更が見られなかった。ガイダンス部分では、次回利上げ時期を示唆する表現が盛り込まれなかったほか、会合後の記者会見でも時期を示唆する発言はなかった。今回の金融政策は全会一致で決定された。

一方、FOMC参加者の見通しは、前回(3月)から成長率が下方修正される一方、物価見通しが上方修正された。また、政策金利は16年の政策金利引き上げ幅(中央値)が前回の0.50%から変更はなかったものの、中央値より低い0.25%に留まるとの回答者は前回の1名から6名に増加した。

■金融政策の評価:EU離脱リスクも高まっており、7月追加利上げの可能性は後退

政策金利の据え置きは当研究所の予想通り。もっとも、6月23日実施予定のBREXITに関する英国の国民投票について、ここに来てEU離脱派が優位になっていることもあり、声明文や会合後のイエレン議長の記者会見では、次回(7月)会合での追加利上げを市場に織込ませることが出来なかった。

当研究所では、16年の金融政策についてこれまで7月と12月の年2回の利上げを予想していた。7月の利上げを実施する場合には、今回の会合で次回利上げをほぼ宣言する形で市場に織込ませた後、来月発表の雇用統計や4-6月期の成長率の再加速を確認して追加利上げを実施すると想定していた。

しかしながら、当初想定していなかったBREXITリスク高まっていることに加え、記者会見からは、足元の労働市場の回復鈍化について、来月以降の統計で慎重に見極める姿勢が示されたほか、完全雇用と整合的なFF金利である中立金利が低水準となっているため、政策金利の引き上げ幅やペースが当初想定していたより緩やかに済むとの見通しが示された。このため、FRBは以前に比べて追加利上げを急いでいないとみられる。

もっとも、BREXITが回避され、来月発表の雇用統計で過去の統計が大幅に上方修正された上、20万人近い雇用増加ペースに再加速する場合には7月に追加利上げが実施される可能性はあるが、かなり低下したと言わざるを得ない。このため、当研究所は16年の金融政策見通しを9月に0.25%に1度だけ引上げるとの見方に変更する。

■声明の概要

◆金融政策の方針

・FF金利の誘導目標を0.25-0.50%の水準に維持(変更なし)
・政府機関債、MBSの償還分はMBSへ再投資(変更なし)
・米国債の償還分は米国債へ再投資(変更なし)
・FF金利の正常化が十分に進展するまでこの方針を続けることを見込む(変更なし)
・長期債を高水準で保有し続けることで緩和的な金融環境を維持する(変更なし)

◆フォワードガイダンス、今後の金融政策見通し

・金融政策スタンスは依然として緩和的であるため、更なる労働市場の改善や物価の2%への上昇を下支えする(変更なし)
・FF金利の目標レンジに対する将来の調整時期や水準の決定に際して、委員会は経済の現状と見通しを雇用の最大化と2%物価目標に照らして判断する(変更なし)
・これらの判断に際しては、雇用情勢、インフレ圧力、期待インフレ、金融、海外情勢など幅広い情報を勘案する(変更なし)
・現状でインフレ率が2%を下回っている状況に照らして、委員会は実績と物価目標に向けた見通しを注意深くモニターする(変更なし)
・委員会は、FF金利の緩やかな上昇のみを正当化するような経済状況の進展を予想しており、暫くの間、中長期的に有効となる水準を下回るとみられる(変更なし)
・しかしながら、実際のFF金利の経路は、今後入手可能なデータに基く経済見通しによる(変更なし)

◆景気判断

・経済活動は加速したとみられるものの、労働市場の改善ペースは鈍化した(前回から経済活動に関する評価を上方修正する一方、労働市場の評価を下方修正)
・失業率は低下したものの、雇用の増加は鈍化した(今回追加)
・家計消費の伸びは強まった(家計消費の伸びを"moderated"から"strengthened"に上方修正)
・住宅市場は改善が継続(表現の小幅修正)
・設備投資は軟調となっている(変更なし)
・純輸出からの足かせは弱まった("soft"から"drag~ have lessened"に上方修正)
・インフレ率は、これまでのエネルギー価格や、エネルギー以外の輸入品の価格下落を反映して、2%の長期的な目標を下回り続けている(変更なし)
・市場が織り込むインフレ率は低下した("remain low"から"declined"に下方修正)
・ほとんどの調査に基く長期物価見通しは、最近数ヶ月は全般的に変化に乏しい(小幅な変更)

◆景気見通し

・委員会は、金融政策スタンスの漸進的な調整により、経済活動は緩やかに拡大し、労働市場の指標が強くなると、現状で予想している(足元で労働市場の回復ペースが鈍化していることを反映して、労働市場の指標に関しての表現を“continue to strengthen"から"strengthen"に変更)
・インフレ率は、エネルギー価格のこれまでの下落もあって、短期的に低水準に留まるとみられる(変更なし)
・エネルギーや輸入価格のこれまでの下落といった一時的な要因が解消することや労働市場の更に強くなることによって、(インフレ率は)中期的には2%に向けて緩やかに上昇すると予測する(小幅な変更)
・委員会は、引き続きインフレ動向と世界経済および金融情勢を注視する(変更なし)

■会見の主なポイント

記者会見の主な内容は以下の通り。

◆政策金利維持の理由

・労働市場や経済に強弱材料が存在する上、物価が目標水準を下回っている状況において、金融政策に対して慎重なアプローチをすべきと判断した。
・世界経済に脆弱性は残っている。世界経済が低調で、インフレ率が低く、先進国の多くの国で非常に緩和的な金融政策を採用している状況では、投資家の認識やリスク選好が急激に変化する可能性。
・英国がEUから離脱する可能性について議論した。この件が、本日の意思決定における要因のひとつであったと言っても良いだろう。

◆今後の金融政策

・次回以降の全ての会合で利上げをする可能性がある。しかしながら、統計をみる必要があり、事前に時期を特定することはできない。このため、次回や次々回と特定するのはあまり心地が良くない。
・しかしながら、過去の懸念を払拭し、完全に良好な軌道に乗っていることを確認するような統計が7月までに発表される可能性も否定できない。
・(大統領選挙が金融政策に影響するかとの質問に対して)政治を考慮に入れることはなく、経済見通しに基いて金融政策の意思決定を行う。
・今年や来年に何回利上げを行うかFOMC会合で議論することはない。毎回の会合でその都度利上げ可否を決定している。
・中立金利の水準が政策金利の水準に影響する。中立金利の水準を絶えず評価しているが、これまでみられたのは中立金利が下振れしてきたことである。下振れした要因が直ぐに解消しない可能性があり、それが新常態かも知れない。

◆労働市場

・労働市場は依然として健全であるものの、なにがしかの勢いを失った可能性がある。今年の第一四半期にみられた月間20万人近い雇用増加ペースはここ数ヶ月に鈍化した。鈍化の理由は良く分からない。しかしながら、他の労働関連指標が好調なときに、単月のデータに過度に評価すべきではない。
・委員会は、労働市場の回復がこのまま止まるとは感じていないし、予想もしていない。

◆その他

・海外経済の状況、成長見通しや金融政策スタンスは、米経済や金融政策スタンスに影響を及ぼす要因だが、米金融政策の制約となるとまでは言えない。

■FOMC参加者の見通し

FOMC参加者(FRBメンバーと地区連銀総裁の17名 )の経済見通しは(図表1)の通りである。前回(3月16日)公表されたものと比較すると、16年および17年の成長率見通しが下方修正されたほか、18年の失業率も下方修正(失業率は上昇)された。一方、16年の物価見通しは上方修正された。

最後に政策金利の見通し(中央値)は、16年(0.875%)に変更はなかったものの、17年(1.875%→1.625%)、18年(3.0%→2.375%)が下方修正された。もっとも、16年は結果として中央値に変更はなく、年間0.50%ポイントの利上げ幅が予想されているものの、前述のように0.25%ポイントを予想している人数が大幅に増加しており、18年にかけての利上げ幅は全体的に下方修正されたとみて良いだろう。

さらに、今回は長期見通しについても3.25%から3.0%に引き下げられたことが注目される。イエレン議長の記者会見でも言及されたようにFRBは、生産性の伸びが低下していることなどを踏まえて中立金利の長期見通しを下方修正してきており、最終的な政策金利の引き上げ幅は以前に比べて縮小していることが見込まれる。

窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

最終更新:6/16(木) 20:00

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