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『DEATH STRANDING』小島秀夫監督インタビュー 物語もゲーム性も“つながる”ことがテーマ【E3 2016】

ファミ通.com 6月16日(木)16時31分配信

文・取材:週刊ファミ通 編集長:林克彦(Twitter:@Famitsu_Hayashi)

●『DEATH STRANDING』が、新たなジャンルを切り拓く!
 E3 2016開催に先駆け、現地時間2016年6月13日に開催されたPlayStationカンファレンスに登壇して、新作『DEATH STRANDING』(読み方はデス・ストランディング)』のティザートレーラーを公開。2年ぶりにE3に帰ってきた小島秀夫監督(コジマプロダクション)は、会場全体を包み込むほどの大歓声と、温かい大きな拍手で迎えられた。公開されたティザートレーラーには“謎かけ”がふんだんに盛り込まれていて、何回も何回もくり返し再生し、あれこれ想像してしまうような、じつに監督らしい内容だった。僕は完全に惹き込まれた。もし、まだ視聴していない人がいるなら、いますぐに観てほしい。

 というわけで、2年ぶりにE3に帰ってきた小島監督に、日本国内のゲームメディア合同という形式ながら、お話をお伺いすることができた。ここでは、その模様をなるべく忠実に、若干の編集を加えながら掲載したい。インタビューラッシュで疲れているにもかかわらず、監督はうれしそうに『DEATH STRANDING』について話してくださった。野暮な答え合わせは当然なし。むしろ想像力がもっともっとふくらみ、ゲームファンがワクワクするようなお話がたくさんあった。ぜひ、読んでほしい。

――久しぶりにE3に帰ってきて、大歓声と大きな拍手で迎えられました。まず、いまの率直な感想をお聞かせください。
小島 去年は来られなかったので、正確には2年ぶりなんです。確か1997年……アトランタで開催されているころから来ている、大好きなショウなんですよね。プレゼンテーションを何回もして、皆さんと交流してきた……本当に僕にとって大切なイベントです。今回は2年ぶりなんですけど、気持ち的には10年ぶりくらいの感覚でした。ターミネーターのように「 I'll be back」とは言えないので、「I'm back」と事後報告させていただいたのですが(笑)。非常に大きな歓声と拍手をいただいて、「ああ、帰ってきたんだな」と実感しました。

※カンファレンスに登壇した小島監督の第一声が「I'm back」だった。その瞬間、大きな歓声と拍手が沸き起こった。

――本当に、温かい歓声でした。
小島 僕はいま53歳なんです。一般的には定年も近くなってくる年齢で、家族には「まだやるのか」とあまり賛成してもらえなかったのですが(笑)、やっぱり僕は死ぬまでゲームを作りたいと思っていて。今回2ヵ月半でティザートレーラーを作って、発表して、皆さんに賛同してもらうことができました。僕の選択は間違っていなかった。おっさんでもまだがんばるぞ、と決意新たにしました。まだ死ねないです(笑)。

――もちろんです(笑)。いま、2ヵ月半でティザートレーラーを制作したとおっしゃいましたが……。
小島 新しく会社を立ち上げるにあたっては、場所と人と技術が必要なんですが、僕らには何もなかったんですよね。僕はいましたけれど(笑)。とはいえ、テクノロジーは世界中にいっぱいあるので、自分たちが採用するエンジンやサービスやツールを探すために、1月末から海外を回りました。それと並行して、人材募集や場所探しだったりをしながら、3月末にノーマン(ノーマン・リーダス)と再会して、キャプチャーをして、それからティザートレーラーを制作してデータを納品して。もちろんタイトルを決め、ロゴも作りました。

――まさに、100パーセント、コジマプロダクション制作なのですね。
小島 そうです。僕らはインディーズですけど、いまはインディーズでも、昔と違ってテクノロジーを使えるんです。PCさえあれば編集もできてしまう。だから、インディーズでも、世界に向けたハイエンドなゲームを作れるぞ、と証明したかったんです。まだゲームは作っていませんが、少なくともこのティザートレーラーはそうやって作りました。

――いま、何人体制なのでしょう?
小島 いま、集めているところです。今回の発表を受けて、たくさん来てくれると思います。

――わかりました。つぎに『DEATH STRANDING』というタイトルについて教えてください。
小島 イルカ、クジラ、アシカといった生物が大量に座礁することを“マス・ストランディング”、その死んだ状態を“デス・ストランディング”、生きた状態を“ライブ・ストランディング”と言うんです。以前にニュースで話題になった“タマちゃん”も、ある種の“ライブ・ストランディング”ですよね。

――ティザートレーラーで、赤ちゃんが描かれていますが、あれは“ライブ・ストランディング”を表している、ということでしょうか?
小島 それはちょっと違うんです。タイトルの意味について、その先を言いますと、ある世界から何かが何回も座礁してくる。それを『DEATH STRANDING』というタイトルが暗示しています。それから“STRAND”という言葉には、心理学用語で“より糸”という意味があるんです。絆とか鎖とか、そういう意味なんですよね。

――絆、鎖……。
小島 今回のタイトルのロゴもカイル・クーパーさんにお願いしたのですが、文字から下に血が流れているわけではないんです。これは、つながっているんです。ティザートレーラーでは、蟹とかクジラからコードが出ていたり、ノーマンも赤ちゃんと臍帯でつながっていましたが、世界観も物語もゲーム性も含めて、つながるということが今回のテーマなんです。

――テーマは、つながる。
小島 はい。僕は安倍公房のファンなんですけれど……皆さん、日本人でよかったですね(笑)。海外の記者はここわからないですから(笑)。で、安倍公房の作品に『なわ』という短編小説があってですね、これを高校のときに読んだんですけど、そこで定義がされているんです。人類が最初に発明した道具は棒である。棒は、悪しきもの、敵対する者を遠ざけるために発明されたものである。それをもってして進化した。『2001年宇宙の旅』でも、猿が骨を持っていますよね。あれは棒じゃないですか。武器なんです。それで、つぎに人類が発明したのが縄である。縄は、逆の発想で、自分がつなぎとめたいものを引きつけて、縛る、括り付けるという道具なんです。いまも棒と縄という道具を人類は使っている、という定義がなされているんです。それで、よくよく考えてみると、いまのゲームって、オンラインもマルチプレイもCO-OPもありますが、棒なんです、使っているのは。銃とかナイフとか。人を殴ったりすることでのコミュニケーションがなされている。このゲームはそのつぎに行こうとしている。当然、棒も出てきますよ! 勘違いされると困るので、そこは言っておかないと。「ということは、マルチプレイで縄を使うのか」なんて言われたら困りますから(笑)。そんなゲーム、誰もやってくれない(笑)。棒も使いますけど、縄的な思考でつながる話なんです。それはストーリーも世界観も、ユーザーどうしもそうです。あるいは実況者だったり。全部“STRAND”する。いま、そのあたりの実験をしています。

――主演にノーマン・リーダスさんを起用した理由は?
小島 『P.T.』のときに仲よくなって、いっしょにやっていたのですが、ああいう結果で終わってしまい、彼も悲しんでいましたし、ファンも悲しんでいましたし、僕も辛いときがありました。ノーマンはいろいろと相談に乗ってくれていたこともあり、これ(『DEATH STRANDING』)を作るときに――ノーマンとはその後も連絡を取り合っていたのですが、今年の2月くらいに話をしたら、「やりたい」と言ってくれて。それで2月末にシューティングです、すぐ。順調に制作を進めたいということもあって、知らない人ではなく、よく知っているノーマンにお願いしたというのもあります。カイル・クーパーさんは17年いっしょにやっていますし、マークさん(マーク・サーニー氏)も15~16年いっしょにやっていますし、SIEさんとは20年以上お付き合いがあるので、もう信頼関係はある。開発もSTRANDしている、ということですね。

――そうしてゲームのプレイ体験でも、STRANDを追求していくと。
小島 それがテーマです。すべてがそこに集約します。

――いろいろともっとお聞きしたいのですが、時間もありますので……。
小島 突っ込んでください。発売日とか聞かないんですか? 散々聞かれたんです(笑)。

――発売日は首を長くして待ちますので(笑)。ジェフ・キーリーさんとのお話の中で、アクションだとおっしゃっていましたが、ジャンルはアクション?
小島 いま、ジャンルを問うべきではないと思うんですよ。マーケティング的には、たとえば映画なら、「こういう映画です」と言わなければならないので、ホラーかサイファイかというのはあるでしょうけど。ノーマンを動かすわけですよ。キーを押すとノーマンが飛んだりするということは、アクションです。ゲームのインタラクティビティがいちばん発揮できるのはアクションなので、そういう意味ではアクションです。アクションは基本です。アクションなんですけど……いま、トリプルエーのハイエンドのゲームはいっぱい出ていますけど、シューターとかFPSとかいろいろな名前がありますが、全部アクションです。ゲームを、たとえばクルマだとします。クルマ好きがアクション好きということにすると、いろいろなタイトルのクルマって、だいたい作りはいっしょです。乗れるようになってます。扉を開けて、乗り込んで、イスに座って。エンジンのカギがどこにあるかもわかるし、アクセル踏んでハンドル曲げれば動くし、ブレーキ踏んだら止まるし。これは教える必要もなくて。いろいろなクルマに乗っている人が僕らのターゲットなので、その人たちにクルマを提供するんです。そこでヘンなクルマだと乗ってもらえない。三角形のハンドルだったりとか。そういう意味で、尖ったゲームじゃないんです、これは。ユーザーが「おもしろいゲームないかな」とクルマを探していて、ちょっと目を引く……どう目を引くかはまだ言えませんけど、クルマが置いてあって、そこから乗り込んで、エンジンをかけて発進するまでは何の説明もない。だからアクションなんです。ノーマンを動かしながらずっとやっていると、見える風景がちょっと違うんです。もうちょっと進んでいくと、縄的な喜びが待っている。

――それが、つながり。
小島 つながりと言いますか、ゲーム性がちょっと違うんです。たとえば『メタルギア』というゲームがあって、あれはスネークをコントロールするアクションじゃないですか。当時は撃ちまくるゲームしかなかったのですが、『メタルギア』は隠れて進むゲームだった。そこでステルスというジャンルができた。そのように、『DEATH STRANDING』はノーマンを動かすアクションなんですけど、その先にはいまだ名前のないジャンルがあって。その名前は皆さんに書いていただければ。

――新しいジャンルを作ろうとしているのですね。
小島 ジャンルというか、新しいゲーム性を追求しようとしています。


――『DEATH STRANDING』については、以前から監督の中にアイデアがあったのですか?
小島 チャレンジしたいものはいっぱいあるんです。12月に(コジマプロダクションを)立ち上げて、何をしようかなーって。そのころ4人しか(スタッフは)いなかったのですが。何畳くらいですっけ? 6畳もないくらいの仮事務所を借りて、自分のPCでGoogleしているしかない(笑)。いろいろな候補がありましたが、皆さんが期待していること……ストーリーもあってゲームプレイもすごくて、願わくば前のゲームを超えてほしい……という期待がある中で、どれが作れるかな、何を作りたいかなと考えて選んだのが『DEATH STRANDING』です。作りたいゲームはいっぱいあって、毎日生まれてくるので。

――いま作るべきは『DEATH STRANDING』だと決めた、ということですね。
小島 そうですね。これを作ったらみんな驚いてくれるかな、と。

――以前、ゲームというものは、壮大な大作ばかりではなくて、海外ドラマのように、短いスパンで何作も作っていくものも出てくるのではないか、とおっしゃっていましたが、本作も短いスパンで何作も作る形に?
小島 これはそうではないです。1本のみの予定です。選択肢としては、すぐに作れるゲームを作る、という手もあったのですが、僕らがインディーズでも、ボリュームもクオリティーもあるゲームを作れるということを証明すれば、日本の若いクリエイターもがんばってくれるかなと思い、あえてハイエンドのゲームをやろうと思いました。「ゼロからのスタートで大丈夫ですか」と言われますが、テクノロジーは世界中にあって、それは自分たちが作らなくてもいいわけですし、協力してくれる人もいますし、何よりも、30年間ゲームを作ってきたんですよ。毎回ハードも、チームも、使うテクノロジーも違って、その都度選択して精査してきましたので、今回もまったく不安はないです。これまでと同じことをやるだけなので。もっと言うと、同じことだけやるのは面白くないので、チャレンジも入れています。フレンチレストランのシェフになってくれとか、店を任せると言われたら恐怖ですが、(ゲーム作りは)30年間やってきたことなので。いっしょにやりたいと思ってくれる人がいたら、いっしょに戦いましょう。

――いまの段階での開発スタッフ数は?
小島 いま、増やしている途中です。100人以上にはしたくないんですよ。200人くらいにもなると、スタッフの顔と名前が一致しなくなったりするので……。少数精鋭でクオリティーの高いものにしたいです。キャプチャースタジオなどはSIEさんにご用意いただいたり。12月にウェブでスタッフを募集して、面接を毎日のようにしてきたのですが、来たいと言ってくれる人に、何を作っているかもそのときは言えなかったんです。それでも「来たい、お金もいらない」なんて言う人が多かったんですけど(笑)。

――皆さん、監督と仕事がしたいんですよ(笑)。
小島 ようやく今回発表できたので、「ああ、ちゃんとハイエンドのゲームを作っているな」ということがわかると、これまで家族の反対にあって応募できなかった人も、「まともなスタジオのようだ」と応募してきてくれるかなと思うので(笑)。ちょっとずつ増やしていきたいですね。いまは実験をしているところなので。ゲームエンジンをどれにしようか考えているところです。エンジンにも特性があって、できることとできないことがあるので。エンジンの候補はふたつあって、そのうちのひとつのエンジンで今回のティザーを作ってます。僕らが表現したいビジュアルを作るためのエンジン。もうひとつは、新しいゲーム性を精査するためのエンジン。新しいものなので、作ったらおもしろくないかもしれないので、その実験をやって。もうすぐ結果が出ますので、そうしたらエンジンを決めて、いよいよ開発スタートかなと。

――では、最後に日本のファンへメッセージを。
小島 メッセージは……僕、まだがんばってますよ(笑)。

――ゲーム作りを続けるモチベーションはどこに?
小島 E3とかで、皆さんが声をかけてくれて……そこでトイレに行くまでにも、いろいろ声をかけられたのですが、そういう皆さんが待っているというのは、すごくうれしいですよ。自分が作っているものを楽しみに待っている人がいる限り、死ねないですし、自分を犠牲にしてでも作りたいですし。もの作りって体力とエネルギーを使いますが、それが僕の使命だと思うので。

――自分が作ることで、間接的に若い人を育てようという意図もあるのですか?
小島 育てようという、そんな大仰なことは思っていないですよ。僕は、映画世代じゃないですか。映画を観て、行ったこともない世界のことを知って、「おもしろい話だな、こんな考えかたもあるんだな」と知って。そして、その先があったんですね。こんなすごいものを作った人ってどんな人だろう? と、作った人に興味を持って、「もの作りをしてみたい」と思うようになりました。それで映画を作ろうとしたのですが、夢破れてゲーム業界なんですけども。ユーザーに、おもしろいと感じてもらうのはもちろん、その先で「ゲームを作る仕事があるんだ」、「自分もチャレンジしてみたい」と思ってもらえたらいいなと。最近、そういうつながりのようなものがなくなってきているので、ほかの人がやらないなら僕がやろうと。育てようというより、「若者たち、かかってこい!」ですね。

最終更新:6月16日(木)16時31分

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TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。