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電通 菅野薫に聞く、カンヌライオンズとの関わり方

SENSORS 6月16日(木)12時0分配信

カンヌライオンズ2016のオフィシャルメディアサポーターであるSENSORSでは、6月18日開催本番まで今年のカンヌライオンズの見どころについて紹介していく。連載第5弾は過去4年間で、カンヌライオンズの最高賞であるチタニウム部門のグランプリと9つのゴールドを含む24個のライオンを受賞、セミナーのスピーカー、サイバー部門の審査員の経験もある電通クリエーティブ・ディレクターの菅野薫氏に賞と、セミナーとの関わり方についてインタビューした。

クライアントにとってやりたいこと、伝えたいこと、そして世界に貢献したいことを表現

--初めてのカンヌライオンズの経験を教えてください。

菅野: 2012年にカンヌにはじめて出品して、現地にも行きました。それまではずっとマーケティング部門に所属していたのもあって、カンヌをはじめとした広告賞などと自分は直接関係しないと思っていました。もちろん存在は知っていましたし受賞作品も知っていましたが。そういう事情もあって、あまり執着がなくて、深く考えたことはありませんでした。まあ、せっかく広告会社に勤めているから、いつか自分もカンヌには1回くらい行ってみたいなあ、遠いけど。関わっているプロジェクトとかで1度くらい受賞とかしてみたいなあ、無理だろうけど。くらい、思っていましたが。 広告賞は業界内で職人同士が高い技術を讃え合うことで、みんなでより高いところを目指すための道具。でも、広告賞で褒められるのってこの世にある素晴らしい仕事のごく一部だけですよね。あるひとつの視点だったり考え方における評価。その価値観が、決して全てではない。人の能力に対しての学歴や受験の偏差値みたいな感じで捉えていましたし、それは今でもそうです。

--カンヌライオンズをはじめとするグローバルクリエイティブ祭に参加する事になるきっかけは何かあったのでしょうか?

菅野: クリエーターというより、データ解析の専門家というところから関わらせて頂いた、本田技研工業(ホンダ)のカーナビ「インターナビ」の走行データから東日本大震災後の通行実績を可視化した「CONNECTING LIFELINES」プロジェクトに携わったことがきっかけです。このプロジェクトに関する視点は、その瞬間に社会にとって意味があることを実現する、ホンダさんの技術が持つ資産である走行データが震災時にどのように新しい意味を持つのか、その発見をわかりやすくシンプルに可視化して届けるということでした。
なので、広告クリエイティブとして制作したという感じでは全くなく、クライアントにとって相応しく、社会にとって意義がある行動を企業がとるというプロジェクト。それが結果としてクライアントのブランドに貢献したということです。そのプロジェクトがまさかのD&ADでイエローペンシルという形で評価されたのです。

それまでは、正直世界の広告賞については詳しくなかったのですが、本プロジェクトがD&ADで評価されたことをきっかけに存在を知っていたカンヌにも出品してみよう!っとなったわけです。そして、2012年度のチタニウムライオン(当時のチタニウム部門はグランプリと、ゴールドにあたるチタニウムライオンしかなかった)や、サイバー部門のゴールドを受賞しました。感想は、いやあ、いい想い出が出来たなあという感じ。賞という特殊な価値感だったとしても、やはり人から褒められると嬉しくてやる気に繋がるし、受賞によってこの人仕事がそれなりに出来るんではないか?と予感してもらえて、新しい仕事やチャンスがもらえることもあるし。だからといって仕事をするにあたって賞を取ることを目的にしちゃったらそれは本質的ではないので、またいつか受賞出来たら嬉しいなあくらいに思っていましたし、いまもそういう感じで思っています。

--カンヌライオンズ歴が長いのかと、思っていましたがまだ4年生なんですね。 そして、これまでデータが軸になっている作品が多く見られますが、データからのアプローチは意識されているのでしょうか?

菅野: 意識してデータをつかったクリエイティブを作っているわけではなく、結果論ですね。もともとの専門がデータマイニングだったりするので、やはり自分が得意な技から発想しちゃうんだと思います。広告は、コピーやデザイン的な発想などから入るのが通常なのかもしれませんが、僕はたまたま得意だった技術からクリエイティブ企画をしているだけです。これまで、こういう手法で考える方があまり多くなかったから相対的に“独特“に見えたのだと思います。ただ、僕にとってはごく当たり前のアプローチなのですし、自分の言語で表現をイメージしているだけです。

むしろ、僕はそういう表現手法に固執して企画しているわけではなく、広告という仕事に忠実であることに強く固執しています。広告業界のクリエーターは(仕事として制作する以上は)アーティストではないので、表現の主語となるクライアントのために機能する、社会や世の中のために機能する表現をつくるべきであると思っています、当然のことなんですが。仮に強い表現だとしても世の中に出たときに、最初にこれは誰が作ったのだろう?という風に思わせたらそれは本質的ではないと思います。受け手がまず感じるのが、表現の主体者であるクライアントのことを「この企業はすごい!」とか、「このブランド好きだな!」と思ってもらうことが最優先で大事なことであり、むしろその裏側にいるクリエーターを意識させないくらいの方が技術が高い。ブランドとひとを繋げるストーリーを発見して提示することで、クライアント企業とお客様の関係性を少しでも近づけることが広告クリエイティブの仕事だと思っています。だからその視点において、ブランドにまつわるデータを起点にストーリーを語るのが有効だと思って選択したという感じです。

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最終更新:6月16日(木)12時0分

SENSORS