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採取場でイチゴ栽培!地下水活用で生まれ変わる「大谷ブランド」

ニュースイッチ 6月16日(木)8時20分配信

“負の遺産”イメージ払拭へ。スマート地域に弾み

 自然の力で「大谷(おおや)ブランド」を再び輝かせる―。宇都宮市は建材や装飾向けの「大谷石」の産地で知られる。ただ、出荷額は年間約3億円と最盛期の30分の1程度に衰退し、新たな産業振興が課題だ。そこで宇都宮市が目を付けたのが大谷石採取場跡地の地下水。冷却・保冷性を生かし、夏秋イチゴ栽培と保冷倉庫の整備を支援する。“スマートコミュニティー大谷”を売り込み、地域活性化につなげていく。

 かつては旧帝国ホテルなどにも使われていた大谷石。宇都宮市大谷地区の石材産業はコンクリートの普及や建築ニーズの多様化などで需要が低迷。労働力不足などもあり、従業員数は最盛期の1973年頃と比べ18分の1程度と斜陽の一途をたどる。

 大谷石は軟らかく軽量で、耐火・耐震・防湿性を備える。冷却・保冷という特徴を持ち、ゼオライトを50%以上含有しているため消臭・腐食防止にも優れる。大谷石採取場跡地は約250カ所、延べ床面積で約56ヘクタールに上る。その9割にたまる地下水の平均温度は7―10度C。宇都宮市はその地下水を冷熱エネルギーに転換し活用すべく支援体制を強めている。

 その一つがイチゴ栽培で、冷熱エネルギーで株元の温度を15―25度C程度に保つことで、夏秋イチゴの生産を促している。13、14年度に実証実験し、15年度に地元のファーマーズ・フォレスト(宇都宮市)が試験栽培に乗り出した。16年は5月からCDPフロンティア(宇都宮市)を加えた2社が本格生産をはじめ、7月から収穫できる見通しだ。

 一方の保冷倉庫は、農家や企業の農産物を保管して月内にも実証実験を始める。今後3年をめどに、東北や北関東の農産物をいったん保冷し、付随するカット工程や物流機能などを一体で運用できるよう、カット野菜加工場や物流施設などを誘致する。

 ただ、地域住民は現在も同採取場跡地にネガティブなイメージを抱く。大谷地域で89年に相次いだ陥没事故は“負の遺産”として語り継がれてきた。事故以降、大谷地域整備公社(宇都宮市)が約100カ所に地震計を設置して常時監視するなど、安全面を徹底している。

 負のイメージを払拭(ふっしょく)するには常時監視に万全を期し、自然エネルギーを最大限生かす新産業の確立が欠かせない。「冷熱活用を軌道に乗せて地域を元気にし、雇用の創出や地域振興につなげる」と宇都宮市の矢古宇克経済部長は熱く語る。

“大谷いちご”のブランド化へ

 宇都宮市は15年度に産学官組織「大谷エリア創再生エネルギー研究会」(清木隆文座長=宇都宮大学准教授)を組織した。同研究会で、大谷地区の冷熱活用の有効性や課題の抽出、企業誘致の場所選定などを進めていく。

 東京圏へのアクセスの良さを訴え、“大谷いちご”のブランド化や県内外の企業誘致が成功すれば、スマートコミュニティー(次世代社会インフラ)を核とする一大産業エリア実現に弾みがつく。「大谷でのエネルギー地産地消は、全国で地方創生が叫ばれる中でも魅力的だ。多分野での活用に取り組みたい」と宇都宮商工会議所の刑部郁夫常務理事は意気込む。

日刊工業新聞栃木支局・前田健斗

最終更新:6月16日(木)8時20分

ニュースイッチ